第二十三章 副官マルガリート「屈辱的な配属」
マルガリート・ガリウス(伯爵家嫡男)にとって、下級貴族の指揮下に入ることは屈辱だった。
“運”だけで成り上がった男──
それが上官になったレオナルドに対する評価だ。
先の戦い。
“囮”であるレオナルド部隊に対する欺瞞行動が効きすぎた。
結果、敵軍は“あえて”レオナルドを避けた。
そして──
マルガリートが配属されていた主力部隊は、敵の背後を突くはずだった。
しかし、不意を突かれ、その場を一歩も動けなかった。
───
その隙を突いた。
“囮”であるはずのレオナルドの部隊が目標都市を攻撃し、落とした。
敵主力が反転し戻った時には、すでに街壁には我軍の軍旗が掲げられていた。
歩兵混成部隊の進軍速度とは考えられない速度だった。
───
両軍共に二つの計算を間違えていた。
一つ目──
“囮”は動かないと思っていた。
敵を引きつける役目ゆえ、全滅するまで敵を足止めするはずだった。
だが、敵軍はこれを無視した。
損失を抑えるためか。
はたまた、攻撃力のないただの“囮”だと気づいたのか。
その結果、レオナルド部隊は、戦場において唯一“自由”に動ける部隊となった。
───
二つ目──
移動速度を侮っていた。
主力部隊は足並みを揃えるために速度が遅い。
逆に、レオナルドのような寡兵は速度が早い。
だが、火力不足で足止めされれば──物量で押し潰される。
──はずだった。
潰されるはずだったのだ。
しかし、奴らは生き残った。想定以上の速さで進軍し、一度も止まらず。
反撃を受けるたび、さらに加速する。
戦場での定石に逆らう愚かな行為を繰り返し──戦果と共に生き残った。
───
結果。
我々主力部隊が“囮”となり、“囮”であったはずのレオナルド部隊が主役になった。
敗戦を覚悟した瞬間──
敵軍が都市陥落を知った。
退却路を塞がれると判断した敵軍司令官は、撤退を決断した。
我々は──敵に命を救われたのだ。
───
そして、軍上層部の判断。
「レオナルドが都市を落とした功績が、多くの味方の命を救った」
その結果が──
レオナルド配下の副官就任だ。
本来なら、主力軍として都市制圧し、その功績で昇格するはずだったのに──
屈辱だった。




