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死ねないでいたら英雄になっていた──けど、それ僕じゃありません!!  作者: 青空のら


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第二十章 ファンブラム少将「確信」

 戦略会議終了後。

 軍上層部が退出した会議室で、ファンブラムはジャニエフ少将に話しかけた。


「ジャニエフ少将、今回の作戦はくれぐれも慎重に動いてくれ。伏兵の可能性がある」


「ああ、ファンブラム少将か」


 ジャニエフの態度がいつもと違う。


「相変わらず、貴官は心配性だな。先の活躍は聞き及んでいるよ。この調子だと、いずれ抜かされそうだな」


 先任将校としてのプライドからか、常につっけんどんな態度を見せていたが──今日は違った。


「そんなことはないさ。運が良かっただけだ」


 一呼吸おくと、ファンブラムは言葉を探した。


「それに、今回の作戦の要は貴官の部隊になると考えている」


「ほう、それは光栄だな」


 ジャニエフ少将はニヤリと笑う。


「一躍、英雄になれそうだな」



 一転、残念そうに肩をすくめるジャニエフ少将は言葉を続けた。


「しかし、現実は残酷だ。俺たちの前に現れるのは敵軍の囮部隊。ハリボテゆえにろくな攻撃力も持たず、こちらに攻撃してくることもないだろうさ」


 眉しかめて大袈裟に悲しそうな顔をみせた。


「囮だと、罠だと判断したのなら貴官の思うようにするがいい。ただ──」


 ファンブラムは一度言葉を切ると、噛み砕くようにゆっくりと発言した。


「君の判断に部下の命がかかっていることを忘れないでくれ」


 しかし、ジャニエフはすかさず言い返す。


「雑兵の一人や二人、千人、二千人が死んだところで帝国は揺るがぬ。そもそも、失敗などするはずがない。今回の計画は完璧だよ」


『そうだろ?』


というように、ジャニエフは壁にかけられた戦略地図を指差した。


「だったら、最後に一つだけ忠告を──」


 ファンブラムは口を開いた。

 どこまで伝わるかは不明だが、かといって伝えておかないと後悔するのは確かだ。


「捨石の“囮”だとしても、相手を侮ることだけはしてはいけない。南方の砦を守備していた部隊が姿を消した。配置転換されて今回の“囮”をしている可能性は捨てきれない」


「そんな不確定な要素に振り回されるのは、愚であり、無駄だよ。

 貴官の忠告はしかと聞いた。

 これでいいだろ?

 貴官は、せいぜい派手に敵の主力部隊を叩いてくれたまえ」


 ファンブラムの肩をポンと叩くとジャニエフ少将は部屋を出ていく。

 ファンブラムはその後ろ姿をただ見送るしかできなかった。


───


 止まない砲撃の中。

 思わずジャニエフ少将が叫ぶ。


「なぜだ!?」


 信じられないという顔で戦況を眺める。


「──囮部隊で間違いないはず。どうして互角以上の戦いができる?」


 眼下に広がる状況はシルヴァネア帝国が一方的に押している。


「団長! 撤退を! ここにも直ぐ敵軍が──」


 ドガっ!!

 言い終わるより前に、兵士は銃撃を受けて倒れた。

 ジャニエフの怒りが頂点に達する。


「貴様ら! よくも──

この私を誰だと思っ──」


 斉射される銃撃。

 その声はかき消された。


「なぜ、こんなことに? ファンブラムの忠告を──」


 鳴り止まない銃撃。


「無視したから?」


 ジャニエフは膝から崩れ落ちた。


「そんな馬鹿な──」


───


 防衛拠点を失い、後退を余儀なくされた。

 その夜。

 ファンブラムは机の上に地図を広げていた。


「やはり、こちらに奴がいたのか」


 噛み締めるように呟いた言葉が、灯の届かぬ夜の闇に溶けていく。


「もっと強く諌めるべきだったな」


 ファンブラムは頭を振った。


「いや、言ったところで聞かなかっただろう」


 じっと地図を見つめる。


「大勢死んだ」


 きつく握られた右の拳からは血が滲み出ていた。


「──すまない」


 地図を畳み、部屋の灯りを消す。

 部屋が闇に包まれ、ファンブラムの呟きも静かに消えていった。


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