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死ねないでいたら英雄になっていた──けど、それ僕じゃありません!!  作者: 青空のら


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第十七話 レオナルド「英雄の墓場」

「ここを落とさない限りは先に進めぬ。何かいい案はないか?」


「はっ、閣下! ここが要となるポイントだと進言いたします」


 将校が地図の一箇所を指し示すと、司令官の目が細まった。


「ふむ……続けてくれ」


「はっ。両軍ともに主力は突撃騎兵隊──これは従来通りです。しかし、近年は大砲の配備が進みこの存在は無視できません。

 敵・味方とも大砲の有効射程はおよそ五百メーター」


 司令官の表情がわずかに変わる。


「この要塞は四隅に張り出した稜堡により死角はありません。

 特に防御が硬いのが正面です。左右正面の三方から一斉射撃が可能ーー」


「なるほど、あえてそこに囮を配備し、敵が狙いを定めている間に、敵の両サイドから攻撃するということか」


「その通りです!」


 図面を前に、熱弁を振るう将校の言葉に熱が籠る。


「一度照準を定めて、攻撃体制に入った後では簡単に旋回、反転はできません。

 正面に配置した囮が攻撃されているうちにこちらの玉が着弾すれば、勝機は十分にあります。いえ、絶対に勝てます」


 右手を握りしめて力を込めている様子を見て、レオナルドは呆れていた。


(理論で語らずに願望で語る時点で、軍人としては失格ではないだろうか?)


 しかし、それを咎める者はいないようだった。


「十分、実現可能な計画だと判断する。

 こちらの大砲が敵の要塞に届いた後は、崩壊した瓦礫の隙間から騎兵隊と歩兵部隊が突撃することとする。あとは配置決めだな」


「そうですな、ぜひとも今をときめく、英雄殿に一番目立った役をやってもらいたいものですな」


「さよう、死神すら震えて逃げ出すという、その実力を今回も発揮してもらえれば、我が国も安泰ですな」


「さよう、さよう」


 出来レースのように外堀が埋められていく。辞退するという選択肢はないのだろう。


「質問してもよろしいでしょうか?」


 あえて、場の空気を読まずにレオナルドが手を挙げた。


「喜んで、その一番槍を拝命したいと思います。しかし、戦場です。何が起こるかわからない。

 敵が相手にしてくれなかった場合は、そのまま大砲にて攻撃、その後に突撃、占領活動をしてもいいのでしょうか?

 敵が大砲を撃ってこないという可能性もあると思うのですが?」


「そんな馬鹿なことはなかろう? 目の前に敵がいて、撃たないなんて馬鹿な話は聞いたことがないわ。その時は好きにしたまえ」


「了解しました」


 レオナルドは長官に向かってうやうやしく敬礼をすると、部屋を出ていった。



──15日前

「開戦は半月後だ。まず準備を始める。

 今から言う物を2時間以内に用意しろ!

 2時間後に出発する」


 いつもの事とはいえ、レオナルドの要求は唐突すぎる。

 しかし、文句を言って痛い目に遭うより、素直に従って5体満足に戻ってきたいのは誰しも同じ。

 レオナルドが言い終わるより先に全員、準備に取りかかった。



──12日前

「こんなハリボテと、ガラクタ。敵さん、本当に撃ってきますかね──」


ドガーン! ガゴーン!!

言い終わるより前に、大砲の着弾に地面が揺れた。かなり近くに落ちたようだ。


「霧が晴れる前に撤退するぞ。はぐれたら承知しないぞ、死ぬ気で走れ!! そら、そら、そら! 走れ!!」



──7日前

「懲りない奴らですね」


「まあね。飽きられたら、それはそれで困るな」


「霧で視認出来ないのに撃ってくるって、頭おかしいんですかね?」


「戦時下でまともな頭の奴がいると思うか?」


「確かに、確かに。野暮な質問でした。はははは」



──2日前

「今日もするんですか? 

今日は霧は出てないから向こうから、丸見えですぜ。狙い撃ちされるから危ないですってば──」


「持ってきた“我々の武器”はちゃんと配置したな」


「もちろんですよ。指示通り完璧な配置。見てくださいよ」


(ガラクタじゃなくて、本物の武器なら、もっとやる気も出んだが──)


「それじゃあ、怪我する前に帰るぞ。撤退! 総員全力で撤退!!」



──前日

「今日は砲撃で見分けがつかなくなった“ガラクタ”を調査に来る客を追い返すだけでいいって? 久しぶりに楽な任務ですね」


「たまにはな。ただし、誰も殺すなよ。下手に刺激するのは藪蛇になる。全力で迎撃して、ガラクタに近づけさせるな。ただし、当てるなよ」


「まあ、訳のわからない無茶な指示ばかり出して。実践するこっちの身にもなってくださいよ」


「ああ、すまん──」


「本当ですよ。無茶もいい加減に──」


「いや、やって欲しい本命が別にあるんだ。わざと1、2名、ガラクタにたどり着けるように、相手にわからないように加減してやってくれ。手加減してるとバレたら作戦が台無しになる──」


「鬼畜ですね。人の心持ってますか? それ実践するのどれだけ大変か、わかってて言ってます?」


「出来ない奴に頼む訳ないだろ? 信頼してるから頼んでるんだ。しっかり頼むぞ!!」



──当日

「こんなに堂々と真っ昼間から姿見せてるのに、あちらさんの動きありませんね。どうしてですか?」


「そりゃあ、無駄玉撃たされてる事に気がついたからじゃないか?」


「へぇ、狙ってやってたんですね!」


「何だと思ってたんだ?」


「自棄っぱちになってるのかと──いや、他の連中が言ってるだけで、俺は信じていましたよ」


「ふーん? そういうことにしておいてやるよ。そろそろ始まる時間だな」


 レオナルドは腕時計を見る。

 作戦開始時間は正午丁度だ。

 あと1分──

 残り30秒──

 5、4、3、2、1──


「今だ! 全力で声を張り上げろ!!」

「「「「うぉ──!!」」」」


 レオナルドの指揮のもとに、連隊3000人が一斉にときのこえを上げる。

 だが、敵の大砲は微動だにしない。


「信じられねぇ! いや、ロバ、レオナルドの旦那を信じていなかった訳じゃないけれど、信じられない。夢でも見てるのか?」


「今まで、俺が嘘をついたことがあったか?」


「確かに──荒唐無稽なことしか言わないけれど、嘘は言ったことは──ないな。しかし、どうしてです? 種明かしはしてくれるんですよね?」


「後でな。今はそんな時間はない」


 レオナルドの部隊のときのこえに反応して、左右に友軍の姿が現れた。

 予定であれば、ここでレオナルドの部隊が攻撃されてる隙を突いて攻撃するはずだが──

 敵軍、要塞にて待機している大砲群は今しがた現れた右軍と左軍に向かって別々に旋回を開始し始めている。


「では、こちらも準備開始、距離500メーター。

仰角45度、弾装填開始。

撃てー!!」


数秒後に轟音が響き渡る。正面に見事着弾した。


「次弾装填!

撃てー!!」


再び轟音が響き渡った。


「騎兵隊抜刀!!

突撃!!

私に続けー!!」


 愛馬に跨ったレオナルドは一目散に瓦礫の隙間を目指して駆け出した。

 後には遅れまいと追走する騎兵の一団がいた。

そして、友軍を囮とした作戦は成功し、あっけなく要塞はレオナルドの手に落ちた。

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