第十四話 マクガルド曹長「安定のロバートさん」
演説台に立つ姿は、どう見てもロバート曹長にしか見えない。
戸惑うマクガルド曹長たちを前に、部隊長就任のあいさつが始まった。
「“初めまして“私が諸君らの上官になったレオナルド・フォン・サテン大佐である。
新設の部隊といえば聞こえはいいが、実質は寄せ集め部隊だ!
使い物になるように、今日からビシビシしごくので覚悟するように!!」
何か言いたげな様子の隊員が何人かいたが、レオナルドは意に介さず話を続けた。
「諸君らには奇妙な親近感を感じている。諸君たちも同様だろう?
だがそれは、こんなところに飛ばされた“落ちこぼれ同士”のシンパシーでしかない!
今この瞬間に忘れたまえ。諸君はこれから生まれ変わる!
地獄のような訓練を経て、優秀な隊員へと再生するのだ!!
以上だ。質問はあるかね?」
レオナルドは、わざとらしいほどゆっくりと、右手中指で銀縁眼鏡をクイクイっと持ち上げた。
(質問はあるかと聞きながら、質問するなと眼光で威圧してくる……
相変わらずの意味のわからなさ。安定のロバートさんだな)
マクガルド曹長が呆れたその時、隣の新兵コルネットが小声で囁いた。
「あの、先輩。質問したいんですけど…」
「やめとけ」
「えっ?でも、『質問は?』って…」
「今のは『質問するな』って意味だ」
「は? 意味わかりません」
「分からなくていい。そのうち慣れる」
「…はあ」
「生きて家に帰りたかったら、理解しなくていい──察しろ。鈍感なやつから戦場では死んでいくんだぞ」
「いや、余計意味がわかりません」
「現場からのたたき上げで将軍になるやつがいるか?」
「いません! 憧れではありますが」
「なら大佐は?」
「可能性はあるかもしれませんが、現実には──」
「なら、お前も奇跡を目撃できるさ」
古参兵の言葉につられ、新兵も彼の視線の先を見つめた──




