第十二話 オルカ「作戦完了!」
翌朝。
オルカが目覚めた時に目に飛び込んできたのは、見知らぬ天井、見知らぬ寝室だった。
「昨日は確か──?」
ゆっくりと記憶を呼び覚まそうとしている最中に気がつく。
脱ぎ捨てられた軍服が椅子の背もたれに雑にかけられていた。
「──どうして下着姿なのかしら?」
お酒を飲んで、前後不覚になったことがない。それがオルカの自慢だった。
(もしかして──)
か細い記憶の糸を辿っていく。酒臭い洋服のまま寝るわけにはいかない。自ら脱いだ記憶はある。だが、見知らぬ寝室で下着姿となると、話が別だ。
その瞬間に部屋の扉が開けられた。
ガチャ。
「失礼するよ。起きたようだね」
「あ、レオナルド大佐! おはようございます」
状況はいまいち掴めていないが、オルカは渾身の笑顔でレオナルドに応じる。
「昨晩はたいへん素晴らしかった。まさに非の打ち所がないとはあのことだよ」
レオナルドは自分の言葉が誤解を招く可能性を露ほども思わず、感じたままを口にしていた。
しかし、オルカは違った。
“自分で脱いだとしても”ほぼ裸に近い状態で独身男性の寝室で眼を覚ます。
すなわち、“記憶にないけれど”二人は結ばれたと解釈した。
「そんな──あらためて言われると照れます──」
すっかり身体のことを褒められていると勘違いしたまま返事する。
「いや、なかなかああはいかない。一種の才能と言ってもいいくらいだろう」
「もう──本気にしちゃいますよ!!」
この瞬間、オルカの頭の中から完全にロバートの存在が消えていた。
「謙遜するようなことじゃない。大いに自慢したまえ──」
「そんな、恥ずかしいです」
「何も恥ずかしがることじゃない。そうだろ?」
(確かに、これで名実ともに──レオナルド様の横に立つのは私だと、彼を狙う有象無象の身の程知らずの女たちに、堂々と知らしめる事ができる──!!)
「そうですね!!」
「じゃあ、まずは司令部に報告にいくぞ」
「はい! えっ? はい!」
オルカの頬が紅色に染まったのを先に部屋を出たレオナルドは見ていなかった。
ロバートの失恋は確定したようだ。
そして、後に自分の勘違いに気づいたオルカが盛大に大撃沈するのは時間の問題だった。




