第十話 レオナルド「専守防衛」
コンコン。
ノックの音がした。扉の外の気配を確認してから扉を開く。
「!? オルカ、こんな時間にどうしたの?」
制服姿のオルカが立っていた。
(夜に弱いから、この時間帯は寝ているはずなのに──)
「少し相談に乗って欲しいことがあって──ダメですか?」
(相談ならロバートでもいいはずだろ?)
思わず口から出そうになるが、何とか止めることができた。
(暗殺者が動くなら、転属直後の今が一番危険だ。
今もどこかから見ているかもしれない。
追い返すのは危険すぎる。鍵を閉めれば、この部屋は頑丈な牢獄になる。彼女を守れるのはここしかない)
一通り周囲を見渡し、安全を確認後にオルカを部屋に迎え入れる。
「駄目じゃないさ。夜は冷える。さあ、入りたまえ」
「それでは、お邪魔します。もう、寝るところだったんですか?」
「いや、寝れなくてね──」
(ロバートとしても、レオナルドとしても考えることが多すぎる。オルカのことにしても──)
「じゃあ、ちょうど良かったです。私、お酒持ってきてますので一緒に飲みましょうよ」
オルカが楽しそうにお酒を注いでくれた。
「お酒は強いんですか?」
「人並みはね。君の方は大丈夫なのかい?」
「ええ、少しなら」
(水のようにワインを飲んでいるのを知ってるだけに、どう反応していいのかわからないよ。そもそも、このお酒、アルコール度数80度超えてるしね──)
そんなところも可愛いと思ってしまうのは、惚れた弱みか、歳の差のせいなのか──
仕掛けたネズミ取り(レオナルドの部屋)にネズミが侵入する。それは問題ない。
一つ計算外だったのはオルカの存在だった。
極秘任務中だからといって、恋人との逢瀬を中断させる訳にはいかない。それこそ秘密を暴露するようなものだ。
深夜の廊下を偶然通りかかるという案も浮かんだが、警戒して逢瀬している恋人に対して、さすがにありえないと却下される。
関係者が静かに見守る中、知らぬ間に命をかけた密室での攻防が始まっていた。
やるかやられるか、落とすか落とされるか、その結末は神のみぞ知る──
そしてただ一人、この部屋がすでに戦場であることをまだ知らない男がいた。




