第六話 「魔剣の青年」
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のどかなお昼時。光り輝く王都で突如警報が鳴った。
「緊急速報!緊急速報!光輪の街、西方の門付近で魔族の襲撃を確認!敵推定、137体 平均D!兵士たちは直ちに門に集合し、隊列を組め!繰り返す、緊急速報!……」
その警報に呼応して、速やかに美しく陣形ができていく。
そんな様子を遠くから眺めている、一人の帽子を被った青年と重厚な雰囲気に体を包んだ一体のロボットがいた。彼らは呟く。
「137か…。今回は結構多いな」
「平均Dだし負けることはなさそうだけどね。今回は僕は出ないでいいかな?」
「そうだな。あまり俺とお前が一緒にいるところを見られたらまずいしな。それじゃあ行ってくるぞ」
「がんばってねー」
そう言い残すとその青年は戦場へ向かって飛び出した。そしてそこには一体のロボが残される。
「今日で二週間か、だいぶ戦ったねぇ〜。帽子のいろいろな使い方も発見したし、毎日が楽しいよ♪そろそろ”カボチャ“の存在が話題になっててもいいんだけどな〜」
今日はすがすがしいほどの晴天。だけどその空気はどこか重く感じた。
◆
カボチャは風のように魔族の部隊の裏に回り込む。その背後から一瞬の隙もなく ”大規模暴風魔法 エアストリーム"を放つ。その影響で大地はめくれ、空は吹き飛んでいった。それをくらった魔族は反応すら許さずに半数を肉塊に変えた。
何名かの魔族が”ルーン“を構築し、”中位火炎魔法 フレアスチーム"を放ち迎撃するも、帽子が広がり吸収されたように防がれていった。
お返しすると言わんばかりの様子でカボチャは帽子を掴み、拳に力を込めて魔族の巨体に突き出した。
「死ね。”魔力転用“ 火災拳!」
拳で焼き貫かれた魔族は、体の原型をもはやとどめていなかった。そして余波だけで大地はえぐれ、空気を焼き尽くす。
明らかに前よりも”強く"なっていた。その秘密は”帽子"に隠されている。
−− 1週間前 −−
魔族との戦闘が終わり、廃工房でカボチャは睡眠とっていたときだった。深夜、彼はふと目が覚める。そのとき大事なものが無くなっていることに気がついた。そう父の形見の”帽子"である。
そのとき奥から機械音が聞こえた。そっと覗くとそこには帽子に光を当てるレイクランドの姿があった。
「おい!なにしてんだ!」
カボチャは血相を変えて叫んだ。
「あれ?起こしちゃった?ごめんね」
「そうじゃない。帽子になにをしてるんだ!」
「あぁ帽子か。勝手に触ってごめんね。でもいろんなことが分かったんだ、聞くかい?」
その言葉でカボチャは怒りをなくし、興味を持つ。
「分かったこと…?」
彼はそうして語りだした。
「そう。この帽子はすごいよ。まさに万能な武器だね。複雑に刻まれたルーン」を解析するのは大変だったよ。この帽子の一番の特徴は保存だね」
「保存?」
「あぁ例えばルーンなんかもいくらでも保存、つまり重ねることができるよ」
「ルーンは最大10重までしかできないはずだろ?そもそも10重も重ねること自体ほぼ不可能じゃないか」
「それを可能にするのがこの帽子の力だよ。代々受け継がれてたのかな?何個か大昔にしか使われていないような構築の仕方のルーンもあったよ」
「俺はいまいちその帽子はわかんないんだ。どんなものが保存されてるか教えてくれ」
「いいよ、っていってもほとんど既存の魔法がいっぱい刻まれてるだけだからね。説明するとしたら…この保存を活かした能力「魔力転用」についてだね」
「この帽子は受けたエネルギー(攻撃)すらも保存できるよ。そのエネルギーを魔力に変換して、自身の体に流して増強させるたり、それを使って魔法を放ったりすることができることだね」
「攻撃を吸収して消耗ゼロでカウンターができる、なかなか強力な力だよ」
「どんな攻撃でも吸収したら勝ちじゃないか」
「実際そうだね。でもしっかり防げるのは魔法系だけだよ。物理攻撃も吸収できるけど防ぎきれずに貫通するだろうね。でも刀身化すればいけるし防御は基本、最強かな」
「あと能力の説明ではないけど、この帽子に元から保存されてる魔法をルーンの構築なしで撃てるよ。これも活かせば、どんな大規模魔法も、欠点の膨大な魔力消費と長い詠唱をカバーできるね」
「これ攻撃も防御もそんなにすごかったのかよ」……
――――――――――
場面は戻り戦場。前で戦ってた魔族たちは防衛軍に撃破され、後続はカボチャによって全滅しようとしていた。そんな戦場を白璧の上で防衛軍の指揮官たちが観察していた。
「デレル中隊長。またあの魔族が同じ魔族たちを殲滅しております。」
一人の補佐官らしき女性が言った。そして中隊長と呼ばれた髭を生やした貫禄のある男が返す。
「またか、一体あいつの目的はなんなんだ。我が軍を襲う気配はまったく無く、同族たちを狂ったように惨殺する。恨みでもあるみたいだ」
男はカボチャの表情などで感情を、推測ながら見抜いていた。だがしかし、その真意は見抜けない。
「味方と見ていいのか難しいですね。魔族の仲間割れなんて聞いたことがありません。魔族とは交渉が成立した記録など無いらしいですし、対話を模索するのも難しいのでは」
そう、こんなことなど前代未聞なのだ。魔族の社会を観測した記録によると、魔族は上位の者には絶対服従をすることが分かっている。魔族に関して情報が少ないのでこれが正解だと信じられてきた。しかし今の状況だと、これまでのことがほとんど覆されたといってもいい。なのでここは、少しでも情報を入手したいのだ。
「でもここまでくると少しは情報が欲しいな。魔族にもし敵対してるなら、上手く利用できる可能性もある」
「しかしこの戦力であれを調査は…」
「だから”副団長”を呼んである。もうそろそろ来ると思うんだが、戦闘が先に終わってしまいそうだな」
そう言ったとき彼らの後ろから声がする。
「すまない。ジェガ森林でAランクの魔獣が出現してしまってな。あれが例の魔族か?」
振り返るとそこには黒髪でさわやかな好青年がいた。彼が「副団長 リク・アーシェ」である。
「リク副団長、ちょうど良かった。そうですあれが例の魔族を殺す魔族です。どうしますか?捕えますか?」
「いや、まずは話かけてみよう」
「本当ですか?逃げられるかもしれませんし、危険ですよ?
リクは自信を持って言った。
「大丈夫さ。やっぱりお互い信用してこそ本音が聞けると思うんだ。最悪でも負けることはないさ」
そうして彼は魔剣をいつでも抜ける準備をして、その魔族の方へ向かった。
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