第一話 「粛清の夜」
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魔界の夜空は血のように赤かった。
広場に築かれた火刑台の上で、男が鎖に縛られている。
――カボチャの父だった。
「父さん……やめて……」
十五歳の喉から、声は震えて漏れた。
だが兵士たちに押さえつけられ、彼はただ焼かれる運命を待つしかない。
処刑人が声を張り上げる。
「深淵の契約を拒み、禁忌の研究を行った裏切り者『元六牙 グリム・カブル』に――粛清を!」
火が投げ込まれる。瞬間、炎が父の体を舐めるように広がった。
肉が焼ける匂いが辺りに満ち、群衆が歓声と罵声を上げる。
カボチャの胸は締めつけられ、息ができない。
涙で世界と父の形見の帽子がぐしゃぐしゃに歪む。
――どうして。なぜ父さんが。
だが悪夢はそれで終わらなかった。
壇上に立つ将校が、氷のような声で告げる。
「血を絶て。家族も殺せ」
一斉に兵士たちの視線が群衆の中の少年を射抜く。
黒い鎧がざわめき、刃が抜かれる音が響く。
母の手が、強くカボチャの手を握りしめた。
「……走って」
兵士たちが雪崩れ込んでくる。群衆を押しのけ、無力な子を殺そうと迫る。
剣が振り下ろされる寸前、母が全身で庇った。
刃が頬をかすめ、血が散る。
「はやく!」
母の叫びに、少年の足はようやく動いた。
恐怖で心臓が裂けそうになる。
追い詰められ、全てを失い、世界が崩れ落ちる。
それでも――走るしかなかった。
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