猫のフウワの夜は、こうして終わっていくのである。
ウニャ~~ン。
日向ぼっこをしたまま、ずっと寝ていたフウワは、ご主人様が帰って来たのに気づいて、背中を反らし大きな伸びをして起きた。
「ただいま」と声が聞こえたら、長いシッポを立て、ゆっくりと玄関に向かい、帰ってきたんだから撫でろと足元にスリスリしながら催促するのが日課だ。
こうすると、ご主人様は屈んでフウワの頭から背中まで撫であげてくる。
ご主人様は、25歳の独身。ホノカという女である。なんでも、東北ってとこから、東京ってとこに引っ越してきたんだってさ。今はフウワと一緒に暮らしている。実家にも猫がいるんだとか。
「フウワは可愛いね〜。ご飯にしようね」
そう言って荷物を置いた後、まずフウワのカリカリと飲み物を用意しだす。ここでひと鳴きするのがポイントだ。
ニャ~~。
「はいはい。待っててね」
よしよし。足元にスリスリしておこう。少し位多めに入れてもいいんだぞ〜。
「ほら。フウワ。ちょっとどいて〜」
いいから早く〜。待ち切れないだよ〜。
「はい。どうぞ」
いつもの定位置に器を置くと同時にフウワは顔を突っ込んだ。うまうま〜。
「私も着替えてご飯にするかなぁ…」
フウワのご飯と猫砂の処理が終わると、ご主人様は自分の世話を始める。
人間は決められた時間に会社に行って、嫌なことや、理不尽なことを経験するとお金が貰える仕組みなんだとさ〜。毎日、毎日、大変そうだ。
ご主人様も、会社に行く時と家に居るときの洋服は別だ。今夜はグレーの上下のスエットだ。このスエットを着ると、膝の上でゴロゴロさせてくれる。
フウワはご飯を食べ終えて、毛繕いをして身だしなみを整えたあと、段々眠気がやってきて、良い感じだ。
しかし大体このタイミングで、ご主人様の夕飯の準備が終わって、フウワに喋りかけてくる。
人間のご飯は、お湯を注いで待つとご飯が出来る。カリカリより美味しいのだろうか。
いや、何より最強に美味なチュールには絶対勝てないだろう。チュールは危険なほど旨い。
味を想像したら食べたくなってきた。
ご主人様!チュール!!チュールくれ!!
ニャ〜ニャ〜!!
「フウワ〜。ねぇ〜。聞いてよ〜。今日ね〜、オツボネのヤツがさ〜……」
……ダメだ……オツボネって単語が出てくると、話が毎回長くなるんだよね。だからフウワもオツボネが嫌いだ。…そしてチュールは貰えそうにない。
観念して、ご主人様の膝の上に乗って、ゴロゴロする位置を決め、丸くなった。
たまにはご主人様も、猫のように、自由気ままに生きればいいのに、と言いたい。
ファ~~。
大きな欠伸が出てしまう。話が長くなるが、その分
エンドレスに撫でてくれるので、まぁ許してやろう。
………おい!手が停まってるぞ!!どうした?
上を見上げると、ご主人様は食べてる途中で寝てしまっていた。猫は食事中に寝るなんてないのに。人間ってやつは不思議な生き物だ。まずは食事は食える時に、ちゃんと食わないと!!
フウワは膝の上から抜け出すと、大きく伸びをして、毛繕いしたあと、自分の寝床に向かった。
寝る時もちゃんと、こだわって場所を決めて寝るべし。テーブルで寝てしまっているご主人様にも、今度ちゃんと寝方を教えてやろう。
気持ちいい所をちゃんと見つけて確保しなきゃ。
色々ぬけてるからな〜うちのご主人様は。フウワが教えてやらないと出来ないことが多い。世話がかかるやつである。
教えてるかわりにチュールをねだってみよう。
ファ~~。眠いな……。今夜はご主人様の布団で寝てもいいよな。誰も使わないんじゃ勿体無いもんな〜。フウワが使っておいてあげよう。
おやすみニャ〜
こうして、猫のフウワの夜が終わっていくのである。
にゃんにゃんにゃんの日に因んで。お読み頂きありがとうございます。
実家のキジトラのフウちゃん(13才)におくる作品。