表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/6

「じゃあお先に、お疲れ様っす」

「……」


リン、とベルが鳴ると同時に思わず溜息をついた。

また言っちゃった……やれやれ。


「はぁ」

「海さんも、もうちょっと素直になればいいのにー。亮也くん、鈍感そうだから嫌われてるとか思っちゃうかもしれませんよ?」

「……知衣さん、着替えてきたらどうですか、てか着替えてきてください」

「はいはーい」


知衣さんは多分気づいてるだろうな。

不本意ながら、わたしがちょっと新野くんに気があるって。

誰が楽しくてあんなロリコ――おっと。

……だって新野くん、小さい子が来る度にニコニコしちゃって、凄い笑顔なんだもん。

まぁ純粋に子供が好きなんだってのは分かるんだけどね。

多分、将来の仕事は保育士とか、小学校の先生とかだろうなぁ。

うわ、なんかリアルに想像できる……。



5時半まで知衣さんの質問の嵐に必死に耐えた後、慌てて着替えてコンビニを出た。

結構雪が降ってきてて、近くに止まってる車にはうっすらと積もり始めてる。

通りを歩いていた高校生くらいの子が転びそうになっていて、「ちょ、音歌大丈夫?」と、隣の子が声を掛けていた。


「……もしもし?」

『あ、姉貴、バイト終わったの?』

「うん、今から帰るから」

『分かった』


弟の返事の向こうで、聞き覚えのある声と音楽が聞こえた。

これは……


「……梨衣夜来てる?」

『うん、あ、けどもう帰るって。チャットするってさ』


陸の奴、チャットに負けてやんの。

この子もなかなかややこしい関係の只中にいるらしい。

まぁ、わたしにアドバイス出来ることなんか皆無だけど。


「そか、じゃあよろしく伝えて」

『オッケー。んじゃ』


電話を切って目を上げると、見慣れたような見慣れていないような背中が視界に入った。

…………。


「……可愛いなぁ、天使だ天使!」


うわ。

えーっと、これはどう反応すれば……。


「新野くん、あなた変態にしか見えないわよ」

「……木之下さん?」


あ、焦ってる。

多分わたしも焦ってる。

だってほんとに、一人で笑ってあの台詞って、変態に見え――うん。

一体何見てたんだろう、と不思議に思っていたら、新野くんの膝の上に白い塊が乗っかってるのに気づいた。


「それ、何?」

「あ、さっき会ったんですよ! 可愛いでしょ?」


嬉しそうに両手で抱き上げられたのは、ちっちゃい子犬だった。

……確かにこれは可愛い。新野くんじゃなくてもあの反応できるかも。

思わずしゃがんで頭を撫でたら、ペロっと舐められた……可愛い、可愛すぎる。


「会ったってどういうこと? もしかして……」

「捨てられちゃった、みたいです」


突然オクターブくらい声が低くなって、思わず目を瞬いた。

なんか、一瞬で雰囲気変わったけど……もしかしなくても怒ってる?


「信じられます!? こんなに可愛いのに! こんな寒い中に捨てるなんて……僕には信じられません!」

「……家庭の事情って奴じゃない? まぁ許しがたい話だけど、分からないわけじゃない」


新野くんが、そっと子犬の頭を撫でた。

……優しいんだな、新野くん。


「……どうするの?」

「僕が飼ってあげようかなって思って」

「名前は?」

「まだですけど……あ、木之下さんがつけてくださいよ!」


いつの間にか口調が元に戻っていた。

って……え、新野くん今なんて言った!?


「え、わ、わたしが!?」

「……駄目ですか?」


ねぇ、その目は反則。

まるで子犬二匹に見つめられてるみたいで、思わず頷いちゃったけど……どうしよう?

……あ、そうだ。


「ソラ、とか」

「あ、もしかしてお名前の(かい)から、(うみ)と空ですか?」

「まぁ……弟の陸も入れてね。後は……この子が綺麗な空を見れるように、かな」


こんな寒い日に捨てられるなんて、もしかしたら分からないけど、この子も辛い思いをしてるかもしれない。

けど、新野くんなら大丈夫かな、きっとこの子は幸せに暮らせると思う。

わたしの中の幸せな生活って、綺麗な空があるイメージなんだよね。


「……いいですね! ね、キミの名前はソラだよ!」


新野くんが嬉しそうに子犬――ソラに話しかけると、ソラはワンとほえると、新野くんの頬をペロペロと舐める。

雪が降っていてて寒かったけど、心の中は暖かかった。

今年は……いいクリスマスだな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ