歌音
『そっか……彼女さん、いたんだぁ』
一学年下のチャット仲間の梨衣夜ちゃんが、今日告白するっていうから、いい報告を楽しみにしてたんだけど……。
どうやらお相手は彼女持ちだったらしい。
話を聞く限りだと、OKもらえそうな気がしたんだけどなぁ。
『でね、なんか知らないけど幼馴染みが泣いてた』
『ぇえ!?』
ちょ、幼馴染みって男の子だったよね確か?
それってさぁ……、
「脈あり、だよね」
「え、何が?」
「歌音も好きな子出来たの?」
「うわっ、音歌にカズくん! いつの間に!?」
うわぁ、帰ってきたの気づかなかったよ……。
あ、音歌はうちの双子の姉で、カズくんは音歌の彼氏ね!
とりあえず『家族が帰ってきた』とだけ伝えて、梨衣夜ちゃんと次の約束をしたら、チャットの画面を消してパソコンの電源を落とした。
「で、歌音、誰が脈ありだって?」
「あのね、梨衣夜ちゃんの幼馴染みなんだけど――」
「え、梨衣夜ちゃん!?」
名前を出した途端に、カズくんが驚いたように目を見開く。
あれ? もしかして……知り合い?
「梨衣夜ちゃん、知ってるんですか?」
「後輩に梨衣夜ちゃんって子がいて……」
そこで少し言いよどんで、かわりに音歌が言葉を続けた。
「今日のコンサートの後、その後輩に告白されたんですって」
「……それってやっぱり梨衣夜ちゃんだ、行動パターンがまるで同じ」
まさか……応援していた友達のお相手が、自分の姉の彼氏とは……世間は狭いね。
てか梨衣夜ちゃんってカズくんと同じ高校だったんだ!
カズくん頭いいから、うちと音歌の一ランクくらい上の学校に行ってるんだ。
「じゃあ、あんまり話さない方がいいか」
「……そうだな」
ちょっと申し訳なさそうな顔をするカズくん。
もしかしたら、クズくん、梨衣夜ちゃんのことを妹みたいに思ってに可愛がってたのかな?
それだったら今まで話に聞いてた行動なんかも、納得がいく。
けどなぁ……こうなったら、梨衣夜ちゃんの幼馴染みに頑張ってもらうしかないな、これは。
「で、音歌たちはもうデートはいいの? お邪魔だったら出て行くけど」
「違う違う! 三人で晩御飯でも食べに行こうかと思って」
……それって明らかにうちお邪魔だよね?
本当にいいのって何回も確認した後、ようやく三人で家を出た。
ご飯食べ終わったら……さっさと退散しよう。
家を出たら結構雪もつもってきてて、いきなり音歌が転びそうになってた。
気をつけないと。
予想していたとおり、音歌とカズくんが並んで、その後ろをうちが歩く。
……分かってたけどさ、わかってるけどさぁ、ちょっと寂しいよこれ。
*
晩御飯は、近くのファミレスに行った。
クリスマスやけど、まぁ所詮高校生だしね。
うちが頼んだのはトマトのスパゲッティ――イタリア行きたいなぁ、なんて。
音歌はドリアで、カズくんはグラタン。
サラダは三人で二種類頼んだ。
料理は美味しかったよ、料理は……話には入れなかったけど。
しょうがないから一人で黙々と食べてたら、梨衣夜ちゃんのことがちょっと気になった。
なんだかんだいって、梨衣夜ちゃんも幼馴染みの子のこと結構好きみたいだし。
あーけどなぁ……うちが言うのもどうかと思うけど、あの子も結構……まぁ、あれだし?
あの子、絶対声優になったら凄く売れるだろうな。
声も結構可愛いし――まぁ低いめの声は苦手らしいけど。
そういえば、本人も『声優になりたい』みたいなこと言ってたっけ。
……次のイベントはバレンタインかな?
また一緒になんかやろうか。
オリジナルの原稿にするんなら、知衣さんに頼むまなきゃ。
明日一緒に話そうっと。




