亮也
「はいっ、熱いから気をつけてね」
「ありがとお兄ちゃん!」
にっこり笑って手を振るのと同時に、リン、とベルの音と一緒に冷たい風が吹き込んできた。
ガラス扉の向こうで、小学生くらいの女の子が、あんまんを三つ抱えて走っている。
「可愛い、なぁ」
「……ロリコン」
思わず呟けば、隣にいた木之下さんがボソリと呟く。
いや……別に恋愛対象として見てる訳じゃないし、単に小さい子が好きなだけだって……。
そうそう、loveじゃなくてlikeみたいな?
だから僕は別にロリコンじゃない……はずだ。
もう一回リン、とベルが鳴ると、今度は見知った顔が現れた。
「亮也くん、海さん、こんにちわー、遅れてませんよね?」
「あ、こんにちわ! えぇ、まだ余裕ありますよ」
「よかったぁ! 今日ちょっと家出るのが遅かったから……」
次のシフトの人だ。
お客さんもいなかったら、ちょっと雑談してたら、奥から先輩が顔を出した。
「あら中田さん、こんにちわ。じゃあちょっと早いけど、新野くんもあがっていいわよ」
まだ5時前だけど、ご好意に甘えさせてもらうことにする。
ロッカールームに向かうと、自分の服に着替えて鞄を肩に引っ掛ける。
「じゃあお先に、お疲れ様っす」
挨拶をして外に出ると、予想外に風が冷たくってちょっと肩をすくめた。
コンビニの中あったかかったしな……あぁ、こういうとき猫とか犬とかいたらあったかいのになぁ。
マジでペット飼おうかな、どうせ一人暮らしだし。
家に帰った時誰も待ってないってのは寂しいもんだ、いくら慣れたとはいえ。
くだらないことをつらつら考えながら、一人寂しく家路に着く。
コンビニから少し離れたところの大きなツリーの近くで、思わず足を止めた。
来る時には見かけなかったダンボールの箱を見つけたからだ。
――それだけじゃなくて、その箱の中からちいさな鳴き声が聞こえてたんだ。
思わず近寄って、そっとふたを開けると、白い塊が飛び出してきた。
飛びつかれてきた勢いで、バランスを崩してその場でしりもちをつく。
「うわぁっ! え、わ、ちょっ……!」
顔舐めんなよ、くすぐったいから!
……白い塊はどうやら犬だったらしい。
パッと見た感じ、まだ子犬みたいだ。
丸くて黒い、きらきらした眼でこっちを見てくる様子があんまり可愛かったから、思わずぎゅっと抱きしめた。
「……可愛いーっ!」
なんなんだこいつは!
クリスマスの贈り物か!? そうだよな!
ふわふわの子犬はあったかくて、頬が緩むのを抑えられなかった。
あぁ、周りから見たら、俺、変な人にしか見えないのかな……よし、とりあえず移動しようか。
少しだけコンビニの方向へ戻ったところにある公園のベンチに座った。
子犬を膝の上に置くと、きょとんとした感じの顔で見上げてきたのが可愛くて、思わずまた抱きしめた。
うわあ……可愛いなぁ、天使だ天使!
嬉しくってニコニコ笑ってたら、いきなり後ろから声を掛けられた。
「新野くん、あなた変態にしか見えないわよ」
「……木之下さん?」
後ろにいたのは、呆れた顔をした、私服姿の木之下さんだった。
…………風が冷たいね、うん。




