小屋へ行こう
「おいしいっすねー!」
「…おいしいのは分かるが、お前は食い過ぎだ。」
「おいしい…!」
肉串が焼け、俺はルナに一本を渡したのだが。それをうらやましそうにエルフェナが見るので、仕方なく自分の分で焼いた肉串を渡し、もう一本焼いた。
「それで、明日のことなんだが。」
「んも?そうっすね。」
「なるほど。」
「まだ何も言ってないよ!?」
えーと。明日はここ、"最下層"から"中層"へ一気に行く。だけど中層は地上にあるから、中層は夜になったら行く。そこで、この"世界"からの脱出の手がかりを探す。
「明日は、おもに下層で過ごすって事っすね。」
「ああ。そういうこと。で、分散はさすがに無理だから固まっていく。それで。もし、人間に見つかったらなんだが…。私が持ってる転移魔法で一応、国の近くに転移することが出来るんだが。それを使ってしまったら、また一からリスタートなので、極力使いたくない。だからほかに見つかった時の対処法が欲しいんだけど、私には他に打てる手段を持ち合わせてなくて。そうすると正面突破しか…。」
だんだんと俺の声が小さくなっていく姿を見ていたエルフェナが
「はい!それなんすが。」
話している途中、エルフェナが手を挙げた。そして。挙げた手をドンと胸にあてた。
「うちに任せてくださいっす!」
「なにかてがあるの?」
「ふっふっふ。あるんすよ!ルナさん!」
ルナが聞くとエルフェナは手を組んでそう言った。
あ。そういえば。
「…ほうほう。……ん?あぁ…。そういうことか」
まだエルフェナのステータス見てなかったので、スキル:鑑定を使ってエルフェナのステータスを見た。そこで自信満々に言っていた"案"というのが何か、分かった。
むふー。とした顔でエルフェナが見つめていた。
「じゃあ、人間に見つかったときはエルフェナの案を使うということで。」
「了解っす!」
ここで、一度一息つき、いい感じに焼けた肉串を地面から抜き、思い切りかぶりついた。うまい。
「ふう…あ、あともう一つ。」
口に入れていた肉を飲み込んだ後、さっき手を挙げていたエルフェナよりかは低いが手を挙げて言った。
「服が、欲しいです。」
「「……。」」
ルナとエルフェナは俺の、転生してからずっと肌身離さず着ていた(脱いだら裸だから)ぼろぼろの布のマント姿を見た。
「何か月もずっと裸に近い格好で過ごしてるから、そろそろ服を着たいです。」
「…そうっ、すね。というか、服を探すことが第一に明日やることっすね。」
「わたしも、そうおもう。」
ルナとエルフェナはそう言ってくれた。ありがとうございます。
「下層で見つからないかな…。」
とまあ。こんな感じで。
焚火を眺めながら串にささっている最後の肉を食べた。
「…はっ!!」
「どうしたのろぜ?」
「どうしたっすか?」
食べきった瞬間、俺。もとい私は気づいた。気づいてしまった。
「明日のことより、今日のことについて。由々しき問題が一つあります。とても、とても大きい問題。大問題がありました。」
「な…なに?」
「なんすか?」
正座をして、目を閉じた。
そして、目をぐわっと見開き、こう叫んだ。
「布団代わりの布切れに全員が入りきらない!!」
"森"中に声が響き、小さな鳥が何匹かばさばさと飛んで行った。
「お…おお。それは大問題っすね。」
「そうなのだよ。私とルナの二人でもけっこうぎりぎりだったのに、そこに私よりも…。いろいろと少し大きいエルフェナが入るとすると、確実に入りきらない!」
「いろいろってなんすか、いろいろって。」
俺がエルフェナを見ながら言うと、エルフェナは俺を怪訝そうに見ながらそう言った。
「どうしよう。どうすればあぁ…。」
頭を抱え、悶えている俺の姿を見ていたエルフェナが、こう言った。
「なら、うちの作った小屋に行くっすか?」
「……え?小屋があるのか?」
「ほんとに?」
へへん。と言いそうな顔で自慢げに言った。
「うちが建てたっす。少し遠いっすがそこならうちが使ってる布団もあって、三人でも使えるっす。最初から案内しようと思ってたんすが、どうするっすか。行くっすか?」
「よし行こう。」
「すぐにいこう。」
「判断が速い人は好きっす!」
ではではー行くっすよー!ということで、食後の散歩のような感じでエルフェナの小屋に向かうことにした。
「小さいころからここにいるってことは、やっぱりここの地形も理解してるんだよね?」
「そうっすね。ここは、私の庭みたいなもんす。」
「じゃあ、さっきは自分の庭で追いかけられてたってことになるんだけど…」
「だからそれとこれは別っす!!あんなにいるなんて思ってなかったんす!!」
エルフェナが道案内役なので、一番前に。俺とルナはその後ろをついていった。ルナは、今のやり取りを聞いてくすくすと笑っていた。かわいい。
ここは、この"森"の中でもぬかるんだ場所。さっき『この辺りは少しぬかるんでるっす。はまらないように注意して進んでくださいっすね。』
と言われたので、言われた通り気を付けて進んでいった。
「…それにしても。ここは最下層の"居住地域"として作られていた場所じゃんか。住むとしても位が低い人、身分が低い人だから、ここまで広いのはおかしいと思うんだよ。」
「そうっすよね。うちも気になりましたっす。」
「どういうこと?」
ルナが俺とルフェナに聞いてきた。そして二人で声を合わせて言った。
「「つまり、この場所は大きすぎるということだ!」っす!」
「広すぎるからこそ、さっきのエルフェナみたいにずっと住んでいても知らなかったことがあったりした。」
俺が言う。
「そうっす。そして、国にとって身分が低い人たちの居住場所にお金をかける意味がないっす。」
エルフェナが言う。
「だからこそここは、別の"何か"のために作られた場所と考えた方がいい。」
俺が言う。
「だけどその何かってのがまだわからないのだ!」
「は…はぁ。」
顔をルナに寄せながら話していたので、圧というものが強くルナは少し引いた感じで言った。
「あ、でも一つだけ理由かもしれないことがあるっす。」
エルフェナがそう言うので「あるのか?」と聞いた。
「はいっす。」
そして、あとに続けて言った。
「この居住地域には、巨大な卵があるっす。予想よりも何倍もでかいと思うっすよ。それが関係しているのかもしれないっす。」
「なるほど、それは怪しいな。」
「しかも、その卵なんすが。多分ドラゴンの卵なんす。」
「「どらごん!?」」
俺とルナは声を揃えて驚いた。
「何か、上層でその卵の手がかりがつかめたらいいんだが。」
手を組み、言った。
「まあ、今はまだ真相は分からない。とりあえず今わかっていることは寝たいということだ!あと出来れば体も洗いたいです!」
「なんか注文が一つ増えたっすね。でも大丈夫っす。」
歩きながら、人差し指を立てて俺とルナに顔を見せながら言った。
「川が小屋の近くにあるっす。うちもたまに、そこで体洗ってるっすから大丈夫っすよ。」
「やったー!」
俺は手をぐーにして高く上げた。
(間)
「ここがうちの住んでる小屋っす。」
手のひらを向けた先に、俺達三人が入っても大丈夫な大きさの小屋があった。
「おおー、あれが小屋か。丈夫に建てられてるな!」
「そうでしょー。そうっすよね!」
エルフェナが満足そうに頷いた。
小屋へそそくさと移動し、中へ入った。
「中もばっちり。これなら三人でも寝られる。」
「おおーひさしぶりのへや!!」
「喜んでもらってうれしいっす。」
微笑みながらエルフェナが言った。
小屋の中には、正面から見て左の壁の端に石造りの暖炉と真ん中にテーブルが一つと、布団が一枚。生きていくうえで、必要最低限のものが置いてあった。
右の壁の側面には弓と矢が入った筒が飾られており、弓は今、エルフェナが使っているのが壊れた時の予備らしい。
小屋の大きさも大きすぎず、小さすぎずでテーブルを少し動かせば、三人で横になって寝られるだろう。これを全部作ったっていうのは、本当に大したものだ。
「こっちの、裏口を出ると、川があるっす。」
部屋の奥にもう一つ扉があり。扉を出ると、そこに川が流れていた。
「うんうん、完璧完璧!」
俺はこんなにも完璧な小屋を造ったエルフェナに感心した。
エルフェナは、小屋の外にある木の束を一つ暖炉の中に入れ、持っていた火打石で木に火をつけた。
火は一気に木に燃え広がり、ぱちぱちといい音を鳴らした。
「暖炉に火をつけたっすよ、これで夜もあったかいっす。」
「お、ありがとう!じゃ私は体洗ってくるんで!!」
服を脱ぎ、ダッシュで川へ向かった。
「わっ!はやっ…」
その姿を見たエルフェナは思わず、口から声が漏れました。
「ろぜは、いつもあんなかんじ。」
エルフェナの横にいたルナがいつも通りの顔で言いました。
「そ…そうなんすね。」
「わたしたちもいく?」
ルナはエルフェナに聞きます。「んー…そっすね。」とエルフェナが言うと
「おーい!ルナもエルフェナも来いよー!」
と、遠くからロゼが言いました。…この人、元々は男だったよね?
「ほら、ろぜもそういってるよ。」
すると
「…ふ。あはははは」
エルフェナが突然、笑い始めました。
「ど、どうしたの?」
ルナはエルフェナにまた聞きました。
「いやー…。なんか、楽しいなって思っただけっす。」
「…そっか。」
ルナはその言葉を聞いて微笑んで言いました。
「じゃあ、わたしたちもいこっか。」
「そっすね、ルナさん!」
ルナとエルフェナはそう言い、ロゼのいる方へ向かいました。
「はあー気持ちい…!」
俺は久しぶりに体を洗い、ぷかぷかと川の上に浮かんだ。川の水はひんやりとしていて、川の深さも流れもそこまでで、鳥のさえずりが聞こえとても雰囲気が良い。
こう、なんていうか俺が夜に溶けていく感じがした。
「ルナとエルフェナまだかなー………まてよ。」
ロゼは気づきました。今、やっと気づきました。
「俺、元々は男だった。」
勢いよく体を起こした。
「やばいやばい、なんでさっき『ルナとエルフェナも来いよ!』なんて言っちゃったんだ!!そんな…エルフェナの…エルフェナの…は、はだ…はだはだはだ」
「ロゼさーん!」
「ひゃばッ!!!」
背後からエルフェナの声が聞こえた。
おそるおそる俺は声が聞こえる方を向いた。
「ッ!!」
一それはそれはとても、とてーも大きかった。
彼女に纏っていた衣服は剥がれ、彼女のつややかな肌があらわになっていた。
「あわっ、あわわわわわわわ!!」
焦りだす俺。
「ど…どうしたんすか?」
エルフェナが膝に手をつけ、かがんで俺のことを見た。
「ひゃああああああ!!!」
一それはそれはとても、とてーも揺れていた。
その瞬間。ロゼの鼻から大量の血が噴き出した。その反動でロゼは倒れ、川に、大きな水しぶきが上がった。
そして、ロゼの視界が真っ暗になった。
「えっえっ、ロゼさん!?どうしたんすか!?しっかりしてくださいっす!!」
「(返事がないただの屍のようだ。▼)」
「ろぜえ!?」
ルナとエルフェナは必死にロゼを呼びました。
「ロゼさん!ちょっと待っててくださいっす!」
「っ!えるふぇな!」
エルフェナがすぐに服を着てロゼを担ぎ、小屋へ運びました。
ルナはその間にロゼが持っていた袋の中にあった布を持って来てました。それでロゼについた水滴を拭い、体を乾かしました。すぐに服も着させてあげました。なんという息の合ったチームプレイなのでしょう。
そして、ロゼを横にさせ、少し経った後。
「………ップハァッ!!!」
「ろぜ!!」「ロゼさん!!」
「はっはっはっ…はぁ。」
上がっていた呼吸をゆっくりと抑え、あたりを見渡し、ここが小屋の中なのが分かった。
「だ、だいじょうぶろぜ?」
「大丈夫っすか?いきなり倒れたっすよ」
「あ…ああ。ごめんごめん。なんでもないよ。」
「ならよかったっす。」
ルナとエルフェナの二人は上がっていた肩をようやくおろし、ため息をついた。
「今日はもうこのまま寝るっす。明日に備えるっすよ。」
「そ、そうだな。」
俺は言われるがままそのまま横になり、目をつぶった。
「…じゃ。うちたちも寝ますっすか。」
「そうだね。」
ルナとエルフェナも俺が入ってる布団の中に入り、一緒に寝た。
「おやすみっす。ロゼさん」
「おやすみ。ろぜ。」
「ん。おやすみ」
二人はすぐに眠りについた。
二人が寝息を立てる中、俺だけは寝付けなかった。
なぜなら。
(やばい、女子二人に囲まれてる…全然寝られない……!)
元々男だったことに、今さっき気づいたからだ。
俺は当分、この問題に悩まされるのであった。
続きを書けた。
最近は執筆速度が遅くなっているから、がんばらないといけないぜ。俺。




