表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/46

異世界といえば中世欧州風

春花(はるか)夏海(なつみ)秋月(あきつき)冬雪(ふゆき)●ライブ


「寒くなってきましたが季節はまだ秋! 秋は月が綺麗ですね! ニュースピリチュアル所属、春花(はるか)夏海(なつみ)秋月(あきつき)冬雪(ふゆき)です」


 コメントが流れる。

 『秋月~』

 『秋月~』

 『秋月』


「今度の冬コミで、『たにくしょくぶつ』さんのサークルに、ゲスト寄稿することになりました」


 『おお』

 『おめでとう』

 『早く見たい』


「いつもはBLなんですけど」


 『いつも?』

 『いつもは?』

 『いつも???』


「え? いつもなんて言ってませんよ。今回は時間がないので、カットを数枚、描こうと思ってます」」


 『今回?』

 『今回は?』

 『今回???」


「今回なんて言ってませんよ。みなさん楽しみにしててね」




 とげ蔵は、サークルのメンバーに、VTuberの春花(はるか)夏海(なつみ)秋月(あきつき)冬雪(ふゆき)に原稿を依頼した旨、話した。なにか、反対意見がでるかと思ったが、『ssaw(サワ)ね』『ssawでしょ』と、既にsswaであることが既成事実として浸透していた。




たこさんウィンナー●ライブ


「今日は皆さんに、異世界へ転生してもらいます」


 『どうせたこのハーレムモノになるんだろ』

 『たこ以外女しかいないしな』

 『うらやま』

 『その触手でエッチなことするんでしょ!』

 『エロ同人みたいに!』


「おまえら落ち着け。メンバーから、転生するなら中世風異世界でしょう! と力説され、ステージを造りました」


 『力説w』

 『誰だ』


「さあ! 冒険へ旅立とう!」




 石畳の道を、中世の服を着た人々が行き交い、馬車が走り抜け、子供たちが駆ける。土壁の家には煙突があって、夕餉の準備に煙を空へなびかせている。空は西の地平から赤く染まりだした。


 かの空へ向かって街の目抜き通りを歩く、とんがり帽子をかぶった小さな魔法使いの少女がひとり。ギルドのドアを開けると、小さな冒険者に怪訝な顔をする輩が。てくてくとギルドのカウンターへ向かって歩いていると、すね毛が生え、土汚れでくすんだ野太い足がすっと、少女の足元に伸びる。ニヤリとする足の主。しかし、少女は足に目を向けることもなく、ひょいっと跳び避け、何事もなかったかのように、カウンターの前に立った。


 それを見ていたギルドのメンバーから失笑が湧き起こった。恥をかかされた男は、少女の肩を掴んだ。

「おい! ちょっと待て」

 顔を上げるピュアウイッチ・ピンク。

「なんでしょう?」

「俺に恥をかかせておいて、ただじゃすまさねぇ」

「あたしは丸太を跳び越しただけですが?」


 周りからまた、失笑が湧く。


 男が右腕を振りかざした。その腕をがっしりと握った女騎士・水色あさがお。

「止めときなさい。あなたの敵う相手じゃないわ」

「こんなガキ、一発で倒してやるぜ」

「言っておくけど、あたしはあなたを助たのよ」

「なんだと」

「殴りかかる前に、丸焼けにされてたわ」


 少女の持っていた杖に、炎の魔法が蓄積されている。その魔法がどれほどの威力を持っているか、瞬時に悟った男は、忸怩たる思い出その場を離れた。


「助けてくれてありがとう」

「さっきも言ったけど、私が助けたのは、あっちの男」

「名前を教えてください」

「水色あさがお。剣士よ」

「ピュアウイッチ・ピンク。魔法使いです」

「ピュアウイッチさんは、ソロ?」

「いいえ」

「仲間がいるの?」

「はい」

 ギルドのドアが開くと、ピュアウイッチ・ピンクと同じくらいの少女が、賢者の衣を身にまとって入ってきた。


 ふたりの前で立ち止まる。

「なにかあったの?」

「ちょっと」

「こちらの剣士は?」

「初めまして賢者様。あたしは、水色あさがお」

「私たちの仲間になりたいの?」

「是非とも」

「私たちのパーティは魔法中心だから、剣士が仲間になってくれるのはありがたい」

「それじゃ決まりね。よろしくお願いします。賢者様」

「ピュアウイッチ・ブルーよ。よろしく」

「今夜はこのギルドに泊まるんでしょう。一緒に夕食でもどうですか」

「よろこんで」




 翌朝。


 三人はギルドを出て、街道歩いていた。そこへ、昨夜、ピュアウイッチ・ピンクに因縁を吹っかけてきた男と、その仲間が立ちふさがった。

「昨日はよくも俺様に恥をかかせてくれたな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ