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現世とのつながり

「小林優さんはじめまして」

「あたしの名前、わかるんですか?」

「だって、これはあたしのアカウントだよ」

「じゃあ、水色あさがおさんは、あたしの知ってるあの娘ってこと?」

「そうだよ」

「信じられないなぁ。アカウント、ハッキングしたんじゃない?」

「山田君には告白した?」

「してないよ~」

「早くしないと、妹の良ちゃんに盗られちゃうぞ~」

「良はまだ中学生だよ」

「わかんないよ。良ちゃんの方が頭良いし、可愛いし。バレンタインにチョコ、あげてたしね」

「よく知ってるね、あたしたちのこと…」



 しばらく、沈黙がある。



「生きてたんだね」

「違うよ。死んだよ」

「じゃあ、今、話しているあなたは誰?」

「VTuberに転生した、水色あさがおです」

「転生なんて、そんなの、ラノベやアニメの世界だけだよ」

「こればかりは、信じてもらうしかないんだよねぇ」

「死ぬ前の記憶は残ってるんだね」

「そうだね」

「会うことできる?」

「それが、このサイバー空間から出ることはできないんだよ」

「会って話したかったな」

「ビデオ通話ならできるよ」

「ホント!?」


 さっそく、ビデオ通話する。


「顔がアバターのママ」

「この姿で転生したので」

「あっはっはっは! おかしい」

「笑わないでよ」

「でも、前より美人になったよ」

「そりゃねぇ」

「あたし、応援してる」

「ありがとう」

「またこうして会ってくれる?」

「もちろん」

「他の人には、言わない方がいいよね」

「説明するのがめんどくさいし、そうしてくれると助かる」

「わかった」




 通話を終える。ふたりとも、心が温かく嬉しさと喜びに満ちて、涙の粒を落とした。




 水色あさがお推しになった、小林優は、件の山田君を、仲間に抱き込もうと、一緒に、配信を見るように仕向けた。彼はあたし達と仲が良かった。なにか気がつくかも。


 見始めて、早速、彼は言う。

「VTuberって、彼女に似てるね」

「どういったところが?」

「声質とか、口調とか、仕草とか」

「やっぱりそう思う?」

「だから勧めてきたんだ」

「そうだよ」

「ちょっと話し方が大げさじゃないか?」

「VTuberだから、芸能人みたいに大げさに話さなきゃ」

「そっか」




 優の部屋のドアで聞き耳を立てている女の子がいた。妹の良だ。

「VTuber? 話し相手、山田君だよね?」


 自室に戻って、さっそく、水色あさがおの配信を見る。

「ホントだ。お姉ちゃんの友達にそっくり。でも、あの人、亡くなったはずだけど…。なにか企んでるな。ふたりで秘密を共有なんて、させないよ」




 もう時期冬コミがやって来る。


 とげ蔵はあることを思い付いた。春花こと、ssawを今度発売する新刊に描いてもらうことだ。ssawも、自分の正体がバレていることに気が付いているはず。とげ蔵は、停止していないssawのSNSにメッセージを送った。


 『初めまして

 あなたの絵に感激しました

 つきましては

 今度発売する同人誌『たにくしょくぶつ』に寄稿くださいませんでしょうか』




 生前に使っていたSNSに新着があった。とげ蔵から原稿の以来だった。あたしの正体を知っていて、わざと送ってきたんだな。それなら、乗らざるを得まい。


 『初めまして

 『たにくしょくぶつ』さんの同人誌はよく読んでいました。その同人誌に寄稿できるのは、とても名誉なことです。謹んでお受けします』


 とげ蔵。ありがとう。

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