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この世界ってセックスできるの?

 ピュアウイッチ・ピンクは、夢を見る。


 ママがご飯を作ってくれた。ママは、ニコニコ笑顔でご飯をあたしの前に置いてくれた。まだ慣れない箸使いで、すくって食べる。美味しい。ママは、あたしの目を見て、微笑んだ。


 二口目。箸ですくったとき、ご飯をテーブルに落としてしまった。とたん、ママは鬼の形相になって、あたしの顔をひっぱたいた。何度も、何度も、来り返し殴りつけた。


 そこで目が覚めた。


 怖くて、悲しくて、涙がポロポロと流れ落ちる。さくまどろっぷが、何も言わずにギュッと抱きしめてくれた。今のママはこの人。あたしの大切な人。




 さくまどろっぷは、夢を見る。


 病院のベッドで寝ていると、娘が孫の顔を見せてくれた。懸命に手を伸ばそうとするが、手が上がらない。娘は、一所懸命、孫の顔を見せようと、私に近づけてくれるが、顔をあげることすらできない。


 そこで目が覚めた。


 転生したばかりの頃は、よくみた夢だ。ひさしぶりにみた。横で寝ている、ピンクちゃんがなにかうなされている。やがて、飛び跳ねる様に起きると、ポロポロと泣き出した。私は優しく抱きしめた。



 ピンクちゃんには親がいて、おそらく親に殺された。証拠はない。確かめることもできない。私は、ピンクちゃんを、孫の代わりにしているのではないか。時々、そう思う。


 実の孫は、首のすわる頃だろうか。顔を見ようと思えば、できないことはない。サイバー空間から、娘のパソコンをハッキングするだけ。でも、止めておく。今はピンクちゃんを抱きしめる。この子の心に平穏を取り戻すのが、私の生きがいだ。




 朝食を作って、テーブルに並べ、ふたり向かい合って言う。


「「ただきます」」


 歳の割に、箸使いがおぼつかない。これも、親のせいなのかも知れない。彼女に、正しい箸の使い方を教えて来て、だいぶ上手になった。それでも時々、米粒を落とす。その瞬間、怯えた表情で私の顔を見るのは、彼女の心に残ってしまった、深い傷の証なのかも知れない。私はだまって米粒を拾い、ニコっと彼女に微笑む。


 学校の教材を取り寄せて、勉強を教えている。身体の成長は止まっていても、心や頭は成長し続けるから。




 たこさんウィンナーは、夢をみない。


 最近では息をするのも止めた。タコが人間の様に呼吸をしていたらおかしい。残念ながら、エラ呼吸のしかたはわからない。




 今は、ニュースピリチュアルのメンバーからのリクエストで『異世界』を創っている。やっていることは、プログラマーだった頃とあまり変わらない。大きな違いは、ソースコードをキーボードで叩き入力しなくてすむこと。嫌な上司がいないこと。締め切りが特に設定されていないことなどだ。しかし、これが精神衛生上、非常によろしい。


 生まれ変わってもプログラマーにだけは絶対にならないと、生前に誓ったが、今はむしろ、おもしろく感じている。やればやっただけ、メンバーの反応がダイレクトに返って来るし、そうなると、もっと細かいところまで作り込みたくなる。これは、転生前からの、職業病かも知れない。


 今、創っている『異世界』は、いわゆる中世ヨーロッパ風だ。ネットで資料を集めて、中世風を紡ぎだしている。しかし、全てを史実に寄せると、一気に人臭くなる。排泄物を道に投げ捨てていたなんて、どんなフィクションでも描かないだろう。俺的には、そういう部分を描きたいんだけどな。




 ラリィ=ル・レロは、夢を見る。


 アイドルグループに所属していた頃。メンバーと馴染めず、ひとりボッチでいた時、春花やたこさんウィンナーなどの、ニュースピリチュアルのメンバーに出会って、VTuberをやりはじめた。メンバーはみんな優しく、リスナーは配信を楽しんだり、盛り上げたりしてくれる。


 目が覚めて、生きていた頃には感じなかった、生きる喜びを、今、感じている。転生して良かった。ただ、ひとつ気がかりなことがある。


 この世界ってセックスできるの?

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