黄砂を蹴ってバギーレース始まる
砂漠を遥か彼方、地平の果てに目を向け、ふたり乗りバギーが、砂煙をあげながら疾走している。いつか辿り着くであろうオアシスを求めて、春花夏海秋月冬雪はハンドルを握っていた。助手席にはPIRが座っている。
太陽は天頂にあって熱線を照らし、熱く乾いた風が吹き、ふたりを焦がす。乾いた砂はタイヤをすくい、空転したり、滑ったり、せわしなくハンドルを切る。
砂丘を越えると、また新しい砂丘の嶺が見え、またそこへ向かって走る。車の轍だけが、砂漠に跡を残す。陽炎が時々、オアシスに見える。汗が吹き出て、喉が渇く、苦しい状況だが、熱中症で死ぬ心配はない。
「どこまで行くんですか?」
「オアシスが見つかるまで」
「オアシスってなんですか?」
「砂漠に突如、現れる楽園」
「砂漠の地下に、水を通さない地層があり、地層の露出した場所から地下水が噴出した泉を中心に、小さな動植物の生態系が確立した場所ですか?」
「知ってるじゃん」
「オアシスには、他にも意味があります」
「例えば?」
「1991年にイギリスで結成されたバンド」
「それは知らないなあ。」
「憩いの場」
「その意味が、近いかな」
「今回のゲームはなんですか?」
「いろんな地形を走って順位を競い合うレースゲーム。今回はね、各自が創ったゲームを、それぞれプレイしあうスタイルなの。ただ、7歳のピュアウイッチ・ピンクちゃんひとりだけで創るのは難しいから、たこさんウィンナーとペアね。今、走っているのがそれ」
「7歳が発想したとは思えない、リアルな砂漠ですね」
「そこはタコさんのフォローじゃない」
モニターに、先行するバギーが映った。
「やっと追いついた。さくまどろっぷさん」
さくまどろっぷも本気でゲームを楽しんでいる。
「悪いけど、車の運転歴は40年以上なの」
モニターには、先頭にさくまどろっぷ。2位に春花&PIE。3位に水色あさがお。僅差4位に可愛美鈴がつけている。
砂煙をあげなら疾走する、さくまどろっぷのバギーを視界にとらえる。
「さすがですね。でも、負けませんよ」
ピュアウイッチ・ピンク●ライブ
「さあ始まりました。ピュアウイッチ・ピンク、プレゼンツ。ニュースピリチュアル・ラリーです。司会は俺、たこさんウィンナーでお送りします! ピュアウイッチ・ピンクさんはコースの設計をしました。コンセプトはなんでしょう?」
「レースゲームってファンタジー多すぎなので、実在の場所でレースをしたかったです」
「今回、参加されませんでしたが?」
「創った人が参加するのはアンフェアー」
「さすが、正義の味方。魔法少女ピュアウイッチ・ピンクさん」
「あと、デバッグで散々、プレイしたから、もういい」
「メタい発言が出たところで、レースを見てみましょう」
「現在、先頭を走るのは、さくまどろっぷ。追うのは、春花&PIRコンビ。ちょっと遅れて水色あさがお。僅差で可愛美麗が追っています」
「やっと追いついたよ。さくまどろっぷさん」
「ゴールド免許とはいえ、ペーパードライバーごときが」
さくまどろっぷは、春花のバギーに体当たりする。
「くっ!」
逆にバギーをぶつける。
「わかってないね」
砂丘の稜線にさしかかったとき、春花のバギーを蹴落とす。春花のバギーは、ゴロゴロと砂丘を転げ落ちた。
自分を中心にして、地平線がグルグル回転して、逆さまになって止まる。バギーから履い出て、舌打ちをする。
「クソ! バギーを起こして、追うわよ!」
「了解しました」