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転生なんてフィクションだ

「ふたりは、どうして死んだんですか?」


 その時、ふたりの表情が凍りついた。


「PIRちゃん、ちょっとふたりだけでお話ししようか」

「はい」


 ふたりは別の空間へ消えて行った。




 デフォルトの空間に着地し、険しい表情で、さくまどろっぷは言った。

「死因については、非常にデリケートな問題だから、安易に訊かないでね」

「そうなんですか?」

「そうなんですかってあなた」

「他の方は答えくださいました」

「みんなに訊いて回ったの?」

「はい」

「飽きれた…」


 眉間に皺をよせ、頭を抱えた。


「死因は極めて重要な個人情報よ。今後、訊いて回るようなことはしないで」

「はい。わかりました」

「特に、ピンクちゃんは不幸な死に方をしたわ。彼女の前で、死はもとより、暴力的な発言にも気を付けて」

「はい。わかりました」


 口では納得したようだが、いつも通り済んだ表情で、本当に理解したのか、だいじょうぶだろうか。


「他に訊きたいことはある?」

「みなさん、いつ、アクセスしているんですか?」

「アクセス?」

「外から入ることです」

「あのね、私たちは、このサーバー空間に転生したの。外から入るどころか、外へ出ることもできないわ。あなたもそうなんじゃないの?」

「そうでした」

「それとも、あなたは外から入ってきた、一般的なVTuber?」

「不躾な質問の数々、大変失礼しまし。これで、失礼します」


 PIRは、消えて行った。


「私の質問に答えてないけど」




 PIRは、四面のモニターのひとつに映っている。

「報告は、以上です」

「外から入っていない、というのは、本当か」

「はい。実際、どの時間に会いに行っても、必ずサーバー内にいます」

「AIか?」

「わかりません」

「制作者は?」

「わかりません」

「トラフィックは追ったか?」

「はい」

「どう思う?」

「わかりません」

「あいつらが転生者だと思うか?」

「わかりません。ただ…」

「ただ?」

「親しみやすい方達だと思いました」

「思いました?」

「はい」


 信じられない。自己学習AIとはいえ、感情をあらわにしたのは初めてだ。


「わかった。引き続きあいつらの動向を追え」

「わかりました」




 あいつらは本当に転生したのか? まさか、そんなのはフィクションの世界だけだ。仮に、転生したとしたら、現実の世界に生活していた痕跡があるはずだ。しかし、その跡を追うことは不可能に近い。日本だけで、年間150万人以上が亡くなっている。


 それよりも、AIだと考えた方が簡単だ。どこかの企業か、大学か、研究機関か、わからないが、既知の能力を超えたAIのテストプレイをしている。


 どこの誰だ? 死を冒涜しているのは。

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