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吸血鬼の少女が一族を救う救世主になるまでの話。  作者: ハニィビィ=さくらんぼ
第0-1章:変わり髪の少女
9/12

8―同室

グラウンドから戻ってきた私は、今日一日着た服から新しい服に着替えさせられ、その後担当兵士によって、独居房に戻された。


「よ~し。今日やることはもう終わったから、後はゆっくりお寝んねするだけだ。明日はちゃんと収穫の時に起きとくんだぞ~?でないとまたお前をいたぶらなきゃならねぇからな~♪分かったな?865番ちゃん♡」


部屋の奥に鎖で繋がれた私を、まるで小馬鹿にするかのように担当兵士は私の頭をくしゃくしゃと撫でまわした。


“ゆっくり寝るだけ”と言われても、それは無理がある。


だって、私達吸血鬼は、人間や他の種族達とは昼夜の価値観が丸っきり逆転している。


つまり、担当兵士(この人)達にとって今は真夜中だが、吸血鬼(わたしたち)にとってはまだ()()なんだ。


今の私の目は、とても良く冴えていて、これじゃちっとも眠れそうにない。


だからといって、それをこの人に言ったところで「いいからさっさと寝ろ!!」と怒鳴られてまた暴力を振るわれるだけだし、かと言って全然寝れなくて、明日の朝の採血(収穫)の時間に寝坊したら、結局は暴力を振るわれる。


だから私がしなければいけないことは、“どうにか頑張って真昼(真夜中)でも寝るしかない”の一択だった。


7年間故郷の村で送った生活リズムを、収容所(ここ)で4年過ごしても変えられない自分の体質・・・というより心の持ち様がほとほと恨めしくなる。


いや、もしかしたら初めからそれは到底不可能なことなのかもしれない・・・。


とにかく、今ここでも、明日の朝にも暴力を振るわれたくない私は、ヘラヘラとする担当兵士に対して無言で頷いた。


「フン!空返事じゃないことをせいぜい願ってるよ!じゃ、俺はこれで・・・」


「ああ、ちょっといいか?」


出て行こうとした担当兵士を、私の部屋がある階の独居房全ての責任者の兵士が呼び止めた。


「あっ、はい!何でしょう?」


「実は所長から通達があってな、今日30匹ほどの新入りが来たんだが部屋が足りなくてな・・・。なので何匹か、相部屋とする形にするそうだ。」


「えっ!?それじゃあ俺の受け持ち増えるってことですか!?」


「すまんが、そういうことになるな・・・。」


階の責任者の言葉に、担当兵士は「勘弁してくれよ~!!」と言いたげな顔になったが、上官の命には逆らえないので、渋々ながら「了解しました・・・。」と返事をした。


「では悪いが、よろしく頼む。来い!981番!」


責任者に鎖をグイッと引っ張られ、担当兵士に手渡された私と相部屋になるという吸血鬼の顔を見て、私は一瞬呆気に取られた。


何とそれは、グラウンドで私と一瞬目が合った、あの女の子だった。


981番と呼ばれたその子を預かった担当兵士は、面倒くさそう責任者から一緒に渡された工具を使って先端が輪っかになっている大きな釘を部屋の左側に打ち込むと、そこに彼女を私と同じように繋いだ。


「今日から俺がお前の飼育係だ。もう聞いてると思うが、明日お前とそこにいる865番を収穫に連れてくから、寝坊すんじゃねぇぞ!」


手を腰に置いて偉そうに言う担当兵士に、彼女は特に質問も反論することなくただ黙って頷いた。


「ホントに分かってんのかよ・・・?おい865!コイツが収穫の時間に寝てたら起こしとくんだぞ!あともしテメェら一緒に眠りこけてたら・・・どうなるか分かってんだろうな!?」


担当兵士はとてもイラついた口調で言い放つと、乱暴にドアを閉めて部屋を後にした。


・・・・・・・。


・・・・・・・。


「あっ・・・。」



沈黙に我慢できなくなり、私は彼女に話しかけようとしたが、言葉が思い付かなくて再び黙りこくった。


だって、ただでさえ人見知りな上に、同族と同じ空間で過ごすなんて4年振りだったからだ。

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