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吸血鬼の少女が一族を救う救世主になるまでの話。  作者: ハニィビィ=さくらんぼ
第0-1章:変わり髪の少女
8/12

7―新入

「よ~し!!これで今日の運動は終わりだ!残り20分は畜舎に戻るまで各自自由行動とする!!」


グラウンドでのランニングを終え、私達はクタクタになりながら解散した。


同じ収容されている者同士、ここは仲良く交流を持ったりするものかもしれないが、心身ともに疲弊しきっている私達は、服が汚れることなんかお構いなしに、グラウンドに座り込んだり、寝転がったりして、誰一人喋ろうともしなかった。


私達のいるグラウンドは収容所の東側にあり、そこから更に東には森があるのだけど、高さが10mくらいある壁に隔たれて、逃げ出すことができない。


もっとも、そんな壁なんか無くたって、私達はここから出ることなんかできないんだけど・・・。


「おいそこ!!何をやってるんだ!?」


向こうの方から屋外管理責任者の兵士の怒鳴り声が聞こえたので見てみると、私とあまり歳が離れていない男の子の吸血鬼が、グラウンドに出る際に付けられて首輪を強引に取り外そうとしていた。


男の子は責任者が呼びつけたグラウンドを巡回する兵士達によってあっという間に取り押さえられ、罰として畜舎まで連れ戻された。


「しっかし無駄なことをするな~お前も。首輪(それ)を力任せに外そうもんなら、首がボン!ってなんのによ~。」


彼を連行した兵士の一人が口にした言葉を耳にした私は、改めて自分の首に取り付けられた首輪を手でさすった。


実はこの首輪は脱走防止用の物であり、仮に壁の穴を見つけて出たり、所有している魔能を使って壁を越えたら、首輪に掛けられた魔能が発動して、爆発する仕組みになっている。


また無理に外すことはできず、それでも力任せに外そうものなら、やはり爆発してしまう・・・。


そんなことになってしまったら、首と胴体が泣き別れになってしまい、当然ながら即死する。


私がここで過ごした4年間で、これまで何人の仲間が脱走しようとしたり、首輪を強引に外そうと試みた結果、命を落とした光景を見てきたことか・・・。


最初の内は、とても恐怖を感じたが、1年くらい過ごすと、やはり感覚が麻痺してしまったらしく、目にしても「可哀相に・・・。」としか思うだけになってしまった。


おそらく彼は、死ぬと分かっていながらも、精神の限界が来てしまい、あんな行動に出てしまったのだろう・・・。


私もいつかはここでの生活に耐えられなくなり、あんなマネをしでかすようになってしまうのかな・・・?


そう思いながらふと向こうの、畜舎どうしを繋ぐ渡り廊下を見てみると、正門側の方から30人くらいの吸血鬼が、腕を鎖に繋がれた状態で畜舎の方へと連れて行かれた。


あんなにたくさんの新しい吸血鬼がここに連れて来られるなんて滅多にないことだったから、私は物珍しさからその列を凝視した。


ほとんどの人が、俯きながらすすり泣きをしている。


おそらくここに連れて来られる前に、大切な誰かを殺されたりでもしたのかな?


あの日の私みたいに・・・。


その時、列の真ん中あたりにいた、私と同い年くらいに見える女の子の吸血鬼と一瞬だけど目があってしまい、ドキっとした私はすかさず列から目を逸らした。


やがて責任者の兵士の、自由時間終了の合図が言い渡され、私達はそれぞれの飼育担当兵士によって首輪を外され、その代わりに腕に鎖を繋がれて、畜舎へと連れ戻されていった。


・・・・・・・。


・・・・・・・。


「どうした865。何かいいモンでも見たか?」


小馬鹿にした感じで聞いてくる私の担当兵士に、私は何も言わず首を横に振った。


別に特別な何かを見たという覚えはない。


ただ私は・・・あの、一瞬目が合った女の子の顔を、頭にずっと思い浮かべていただけだった。

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