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吸血鬼の少女が一族を救う救世主になるまでの話。  作者: ハニィビィ=さくらんぼ
第0-1章:変わり髪の少女
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6―家畜

「フン!夜メシん時は起きてたようだな。」


お腹が空いて我慢できなくなって時に、牢屋のドアが開いて、朝、私を起こしにきた兵士が夕飯を持って入ってきた。


「ほらよ!お行儀よく食うんだぞ。可愛い子牛ちゃん♪へへっ。」


銀の包み紙に包まれたこぶし大くらいのパンが放り投げられ、私はそれをサッと取ると牢屋の側面の壁にもたれた。


パンの包み紙には、私を管理している国の紋章が刻まれていた。


あの日、私達の村を襲って、私からお父さんとお母さんを奪った、人間の国の国章が。


私は無造作にパンの包みを破って、中のパンをガツガツと食べ始めた。


・・・・・・・。


・・・・・・・。


あの日、お父さんとお母さんを失った私は、同じく捕まった村の人達と一緒に、このアルスワルド西方に位置する、アドニサカ魔政国という、人間の国の中で二番目に大きい国に連れて来られた。


連れて来られて一番初めに行なわれたのが、()()だ。


吸血鬼の血にもランクがあり、生まれつき持っている魔術能式、いわゆる固有魔能しか持っていない個体は“並”、5つの魔能を持つ個体は“上”、10以上の魔能を持っている個体は“特上”とそれぞれランク付けされ、それぞれの収容所・・・いや、()()()と言った方があってるかもしれない。


どうして人間が吸血鬼の血を欲しがっているのか、4年前の捕まる前はあまり理解できなかったけど、飼育場(ここ)に連れて来られてようやく知ることができた。


私達吸血鬼は、他の種族の血を吸って、その種族が持っている魔能を自分の物にできる力がある。


それ故に、私達の血は、他の種族と違って魔力が豊富に含まれており、汎用性も極めて高いことが分かって以降、人間は私達を徹底的に捕まえるようになり、そのせいで起こった戦争のせいで、この世界に一つしかなかった吸血鬼の王国も滅んでしまったという。


さっきも言ったように、収穫された私達の血は色んな物に加工される


私のような並のランクの吸血鬼の血は、庶民の日用品とかに使われ、上ランクのものは兵士の魔能取得用のポーション等に、そして、特上ランクの個体の血は、国の貴族達によって“寿命を延ばすことができる妙薬”として重宝されているらしい。


固有魔能である血操師(ブラッド・スター)という、自分や他者の血を物として具現化できる魔能しか持っていなかった私はこの、並ランクの飼育場に送られた。


ここでの生活は、かなり制限されている。


朝に採血室で血を抜かれ、それからは特にやることもなくこの牢で過ごし、夜になると自分の担当兵士によって一日に一度しかない食べ物であるこのパンが運ばれる。


これ一個で、その日に必要な栄養を全て摂取できるというのだから不思議だ。


夕食が済んだら、外のグラウンドで1時間のランニングと自由時間が与えられる。


ちなみに、詳しくは知らないけど、ランクが上がるごとに飼育状況は過酷になるといわれ、特上ランクの吸血鬼は、多くの魔能を所有していることから、魔能封じが施された拘束台に一日中立ったまま縛り付けられているとも聞く。


だけど私にとっては、どの飼育場も大した違いはないと思っていた。


だってそうでしょ?


朝に血を抜かれ、その後は夜まで牢屋の中。


食事は一日一回で、栄養が高いものに設定された食べ物に、ストレスや筋力低下をさせないための運動と自由時間。


私はつくづく痛感した。


“ああ、人間って本当に吸血鬼(わたしたち)を家畜としか見てないんだな。”って。


今まで当たり前のように思っていたことに、珍しく虚しく、そして悲しくなりながら私は一日一回の食事をあっという間に終わらせた。


「食い切ったか?そんじゃ次は、お待ちかねの外の時間だ。せいぜい楽しむんだな!865番。」


担当兵士が、今や番号となった私の名前を呼んで、朝みたいに私の手枷の鎖を奥の壁から外して、私を牢屋の外に連れ出した。

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