3―脱出
私達の住んでいる村が、人間達に見つかってしまったと聞かされ、私達家族は急いで必要最低限だけの物を急いでかき集めて、カバンにまとめた。
「みんな準備はできたか!?」
「ええ!」
「準備OKだよ!お父さん!!」
「よし!じゃあ・・・行くぞ!!」
覚悟を決めて、私達は名残惜しさを感じつつも、今まで住んでいた家と最後の別れを告げた。
私達家族が住んでいた家は、いざという時に村のみんなが脱出に使う洞窟の裏口に続く道沿いに建っていたため、家の前には避難しに来た村の人達の列が出来上がっていた。
「ああちょっと!今どういった状況なんだ!?」
列に入る前に、お父さんが一番近くにいた村の人に状況を聞いた。
「人間の兵士達は、村の門に作ったバリケードで足止めを食らってるみたいだ。だけどそれもじきに焼き払われちまう。だから急いで裏口から脱出しないと・・・!」
状況は極めて切迫していることが、子どもである私にもひしひしと伝わってきて、私は思わず、横にいるお母さんの手をギュッと握った。
「大丈夫よミラ。お母さんが、付いてるからね・・・!」
そんな私を安心させようと、お母さんも私の手を強く握り返した。
その時・・・。
「大変だぁ~!!」
列の最後尾から、村長の息子さんが血相を変えて走ってきた。
「おいどうした!?まっ、まさか・・・!!」
「はぁ・・・!はぁ・・・!アイツ等、とうとう門に火をつけて、中に入ってきたッッッ!!!」
「そっ、村長は?親父さんはどうした!?」
「やられ・・・ちまった・・・。」
“バリケードが突破され、村長が殺された”
その言葉を聞いた瞬間、その場にいた全員の顔が青ざめた。
「あっ、ああっ・・・。どっ、どけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
一人の村人の叫び声が切っ掛けとなり、村の人達は我先にと裏口に向かって走り出した。
「ちょっと!!押さないでよ!痛いじゃない!!」
「お前さっとどけよ!!アイツ等もうすぐそこまで迫ってきてんだよ!!」
「自分だけ助かろうとしてんじゃねぇよボケが!!」
恐怖に駆られた群衆ほど、制御できないものはない。
押しのけ合う者、殴り合う者で脱出口への道は、もはや収集がつかなくなってしまった。
だけどお父さんとお母さんが、私を守るために影になってくれたおかげで、私はそんな恐怖のるつぼの犠牲になることはなかった。
「おっ、お父さん・・・お母さん・・・。」
「お母さんの傍から、絶対にはぐれちゃダメよ!」
「いいかみんな!このままじゃ埒が明かない。みんなの間を縫って、急いで裏口まで行くんだ!!」
こうして私達は家族みんなで身を寄せ合いながら、一気に洞窟の裏口まで走り抜けた。
次第に村の方から煙が出てきて、人間達が村に火を放ったことを知って、今までいざこざを起こしていたみんなも、急いで出口に向かって走り出した。
やがて洞窟の向こう側から光が見えてきて、それが、出口まで後少しだということを伝えていた。
「おっ、お父さん!アレ・・・!」
「ああ!あとちょっとだ!!頑張れミラ!!」
“あと少しで助かる!”
その期待に胸を膨らませて、私は、私を抱きかかえるお父さんの胸の中で心から安堵した。
だがその期待は、儚く打ち砕かれることになった。
「ああっ・・・!!」
「ぐああ・・・!!」
出口の向こう側から、先に逃げた人達の悲痛な叫びが聞こえたが、私達は立ち止まることができず、そのまま日の光が当たる森の中に出て来てしまった。
そこで目にした光景に、私達は震えが止まらなかった。
「やはり家畜となる獣を追い立てるには森に火を放つのが一番だな。まぁ今回は獣じゃなくて、吸血鬼だがな。」
私達の前にいたのは、弓を構えた人間の兵士と、彼等に足や肩を射貫かれて倒れている先に逃げた村の人達だった。