2―才能
「でねでね!最後冒険者とその仲間達は、見事巨鬼種の大将を倒して、家族の待っている国に帰ってきたんだ!私ね、そのシーンを想像して、ついジーンとしちゃったんだぁ。」
私は朝ごはん・・・他の種族にとっての夕ごはんで、お母さんからもらった本の結末を、熱烈に話した。
私の話を、お父さんとお母さんは自分のことのように嬉しそうにうんうん頷いていた。
なんてことのない、ありふれた家庭での、一家団欒・・・。
「私のあげた本、よっぽど楽しかったのね。ミラ。」
「うん!最高のプレゼント、ありがとね!お母さん!!ッッッ!・・・・・・・。」
満面の笑顔から、突然暗い表情になった私を、お父さんとお母さんは、心配そうに見つめた。
「どうしたの?ミラ。」
「うん・・・。帰る途中にね、他の子達からまた言われたの・・・。“変わり髪が来た。気味が悪いから逃げろ。”って・・・。」
私の髪のことで、また他のみんなからひどいことを言われたことを知ったお父さんとお母さんの表情にも、一気に影が差した。
「ねえお母さん・・・。私の髪ってやっぱり・・・気味悪いの、かな?」
落ち込みながら呟く私の手をお母さんはギュッと握りしめてきた。
「そんなことないわ。ミラの髪は、とってもサラサラしてて、とっても輝いてる素敵な髪よ。」
「でも・・・!それでもみんなと違うんだよ!?私、イヤだよ・・・。みんなと違うからって、一人ぼっちになるのは・・・。」
励ましの言葉をかけたのに、明るくなってくれない私に、お母さんはどうしたものかと、困ったようで、それでいて悲しそうな顔をした。
その時、お父さんがゆっくり話しだした。
「いいかいミラ。確かにミラは、他のみんなと違って変わった髪色を持って生まれてきた。だけど、お父さんはこう思うんだ。他のみんなと違った物を持って生まれた子には、神様は一緒に、他の誰にも持っていない素晴らしい才能を授けてくれると。そしてそれは、誰かを助ける時に、大きな力を発揮することができる・・・って。」
「私の・・・才能・・・?」
「残念だけど、それはお父さんにも分からない。だけど信じてる。ミラはこの先、その綺麗な髪と一緒に、神様がプレゼントしてくれた才能で、困った人をたくさん救うことができるって。だからミラ、自分のその・・・他のみんなとは違うことを、誇りに思ってはくれないか?お父さんからの、頼みだ。」
お父さんの言ったことを、私はにわかには信じることができなかった。
だって私は、髪の色が他と違うだけで、それ以外は何の取り柄もないただの吸血鬼。
そんな私が、特別な力なんか持ってて、この先、私が本で読んだような吸血鬼の冒険者みたいに、助けが必要な誰かを救うことなんかできるのかなぁ・・・?
だけど、お父さんの言った言葉は、この先の未来を心配する私の心を、少しだけ安心させることができた。
もしそれが本当なら、私は自分にしかない才能で、困っているみんなを、いっぱい助けたい。
「お父さん・・・ありがと。おかげで私、ちょっとだけ元気出た。」
少しはにかんだ笑顔をすると、お父さんとお母さんは、ホッと安心した表情を見せた。
その時だった。
突然家のドアを激しく叩く音がして、お父さんが開けると、そこには一番近くに住んでるおじさんが慌てた顔をしていた。
「おい!急いで必要なモンだけ持って逃げる準備をしろ!!」
「なっ、何があったんだ?」
「この村が・・・人間たちに見つかってしまったッッッ!!!」