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吸血鬼の少女が一族を救う救世主になるまでの話。  作者: ハニィビィ=さくらんぼ
第0-1章:変わり髪の少女
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11―交流

その日を境に、私とヴィアレちゃんは交流を重ねた。


採血(収穫)の後に私達の身体に、注射の傷ができると、ヴィアレちゃんはそれを全回復(フル・ヒーリング)で立ちどころにきれいに治してくれた。


“与えられるばかりじゃダメだ。私もヴィアレちゃんに何かしてあげたい。”


私は強く、そう思った。


だけど私には、ヴィアレちゃんと違って便利な魔能も、誰かの役に立つような得意なことも、何も持ち合わせていなかった。


ヴィアレちゃんは、「無理してお返ししようとしなくても大丈夫だよ。」って、優しく言ってくれたけど、それじゃあ私の気持ちが収まらない。


せめて何かしてあげようと思った私が思いついたのが、夜のグラウンドでの運動時間後に許された自由時間で、ヴィアレちゃんに私が知っている昔話を読み聞かせることだった。


生まれてから誰も友達がいなかった私は、誕生日に両親からプレゼントをされる本を読むことしか楽しみがなかったし、寝る前にも、よく昔話を聞かされていたので、レパートリーには困らなかった。


私が話す物語を、ヴィアレちゃんはとても興味津々に聞いてくれた。


「ミラちゃんってお話たくさん知ってて、話すのとっても上手だね!!」って言ってくれたけど、私はあまり自身が持てなかった。


だって私は、ただ自分が知っている話を、ただ自分なりの口調で話してるだけなんだから・・・。


だけど私は、心の中で深く謙遜しながらも、実はちょっとだけ、嬉しかったりもした。


だってヴィアレちゃん、すごく目をキラキラさせながらそう言うんだもん・・・。


・・・・・・・。


・・・・・・・。


今にして思うと、あの時が私の子ども時代の中で、一番幸せな時だったと思う。


運動終わりの自由時間、グラウンドの隅の小さな草むらの中に生えた一本の樹の下で、物語を話す私と、それを楽しそうに聞くヴィアレちゃん・・・。


親を殺され、故郷から引き離され、石の壁に囲まれた監獄で家畜同然の扱いを受けてすっかり色褪せてしまった私の光景が、段々鮮やかになっていくのをとても実感していた。


傍から見たら目も当てられないような状況だったにも関わらず、あの頃の私達は二人してよく笑い合ったものだ。


私は・・・いや。


おそらくヴィアレちゃんも、「この日々がいつまでも続く。」と本気で信じていたと思う。


だけど・・・そうはならなかった。


この“悲惨だけど笑いの絶えない日々”の終わりは、まるで獲物に忍び寄る毒蛇のように、残酷な終わりへと確実に近づいていた。


そしてその瞬間は、長年にわたって私を苦しめ、真の孤独へと追いやってしまった・・・。





◇◇◇





「ようこそお越し下さいました。スカーデ方面管轄長。」


「貴様がこの()()()の責任者か。今日から三日間の滞在視察・・・くまなく見させてもらうぞ!」


「はっ!承知いたしております。」


「ところで・・・一つ聞きたいのだが・・・。」


「何でしょう?」


「ここに、切り刻むなり殴り飛ばすなりしても、そう易々と死なない奴はいるか?」


「そう、ですね・・・。あっ!一匹いました。“全回復(フル・ヒーリング)持ちの若いメス”が。そいつなら、おそらく腹を捌かれても、頭を割られようともそう簡単には死なないと思います!」


全回復(フル・ヒーリング)・・・。しかも若いメス・・・!くくっ。これは・・・中々に楽しめそうだなぁ。よし、明日辺りそいつを私の部屋まで連れてこい。どれほど耐えられるか試してやろうじゃないか。」


「分かりました!どうぞお待ち下さいませ。」


コツ、コツ、コツ、コツ、コツ、コツ・・・。


「“家畜壊しのスカーデ”・・・。あの上玉・・・死んだな。」

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― 新着の感想 ―
[一言] あーーれまぁ。 またとんでもないヤツが来たぁ... ...うん。 (´・ω・`)
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