あなたに与えるチートは○○○○です!
祝(?)PCがぶっ壊れた&買いなおした記念
新しいPCでログインしたのでせっかくだから書きました。一発書きです、誤字があったら申し訳ありません。
気が付くと、俺は真っ白な世界にいた。
こういう展開をいくつかの物語で知っていた俺は、まさかと思い呟く。
「まさか、俺は死んだのか?」
「その通りです。よくぞお分かりで。あ、口調はそのままで結構です」
現れたのは、とんでもなく美人な女性。女神様と呼ぶことにしよう。
「そうで——そうか……。でもあまり、その。死ぬ前の記憶というか、俺自身のことがほとんど何も思い出せないのはどうしてなんだ?」
俺が思い出せるのは、今まで読んだ本の知識ばかりで、しかもチートハーレムとかそういうラノベの記憶しか出てきてくれない。
おかしいな、もっとまんべんなく色々な本を読んでいたような感じがするんだけど。いや、記憶がないから確かなことは言えないけど。
「それは、余計な知識を残さないためです」
「……というと?」
「あなたには、これからある世界へと転生してもらいます」
「ほう?」
転生。
つまり、生まれ変わり。何の因果か、俺は異世界で赤子から再スタートする対象になったというわけなのだろう。
魔王を討伐するための勇者として。地球の神との契約。上位世界である地球から魔素を持ってくるため。進んだ世界の人間を連れてくることで発展を促す。
……などなど、色々と転生させる理由は思いつくけれど、この際どうでもいいだろう。
肝心なのは、転生先がどのような世界か、だ。
「ちなみに、転生先の世界というのはどんなところなんだ?」
「主に地球で言う中世ほどの発展しか遂げておらず、魔物と人が日々争う世界。まぁ、簡単に言うと剣と魔法の世界です」
「剣と魔法!」
「ええ。危険も多いですがよく言えば実力主義な世界です」
「ほうほうほう」
こうして細かい説明をして、問答無用で俺を転生させないということは、つまりアレを期待してもいいということなのだろうか。
「その、もしかして、チートか何かを貰えたり、しちゃうんですかね?」
そんな俺の質問に女神様はにっこりと笑ってから。
「ええ、そのために関係がありそうな記憶だけ残しましたから」
「なるほど! それで、もらえるチートはどうやって……?」
「チートはルーレットを回して決めてもらいます」
なるほど、ランダム系か。
こういう系では、一見はずれに見えたスキルで無双したり、あからさまなチートを引き当てたり、なんというかハズレが少ないようなイメージ。
「それでは、説明します」
「はい!」
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「というわけで、ルーレットによって決まったスキルに対して、維持か退化か廃棄かを選択してもらいます。ここまで、質問はありますか?」
「えっと、維持と廃棄は分かるのですが、退化とはどういうことなのでしょうか?」
維持というのは、まぁ選んだチートスキルをそのまま持っていける、ということなのだろう。
そして廃棄は要らないチーとスキルを捨てるということ。まぁ簡単に言えば戦闘系スキルが欲しかったのに土壌改良スキルが選ばれてしまったから要らない、とか。
ただ廃棄するだけならとりあえず貰っておいたほうが得じゃないか、と思うかもしれないけれど、そこはうまくできていて、代わりに生まれや性別とか国を選択できるらしい。
能力チートをあきらめる代わりに権力チートを目指す、みたいな感じ。
「退化とは、簡単に言えばチートスキルのグレードを下げるということです。例えば、剣聖スキルを引いたけれど、その一段下である剣王スキルにグレードダウンさせる、みたいな感じですね」
「……それは、どうして? どう考えても退化させる必要なんてないと思うけど」
せっかくもらえるチート能力をわざわざ弱くするなんて意味が分からない。強いスキルのほうがいいに決まっているじゃないか。
「そうでもありませんよ。例えば、先ほど例に出した剣聖スキルですが、剣聖スキルというものは複合スキルなのです」
「複合スキル……?」
「ええ。身体強化、魔力強化、知覚強化、技能強化:剣術、そして聖剣召喚」
「ほう……。それで?」
「厄介なのがこの聖剣召喚というもので、本人にしか持ち上げることのできない剣を生み出すスキルなのですが……簡単に言えばあなたが生まれ落ちたその瞬間に専用の聖剣が産み落とされ—落ちてきた聖剣に圧殺されます」
「ダメじゃん!」
「その点、剣王スキルなら聖剣召喚がないから安心安全、というわけですね。といっても、剣王スキルを持つ者自体世界最強レベルなので、十分チートなんですけどね」
「なるほど、よく理解した」
つまり、引きが良すぎてもダメ、というわけか。
強すぎるチート能力を運よく引くことができても、そのチートの特性によって持ち込むことができない。なるほど、よくできているシステムだ。
「それでは早速引いてもらいましょう! ルーレットスタート!」
「え、ちょっ!」
「それではストップと言ってください!」
「ス、ストップ!」
ルーレットが止まり、玉が入ったところに書いてあるチート能力は——
「全属性適正……。結構いいんじゃないか?」
「なるほど、そう来ましたか……」
俺としてはかなりいい引きをした気がしたんだけど、女神様はどうしてだか浮かない顔をしている。
「……もしかして、このスキルにも何か欠点が……?」
「いえ、魔力増強、魔力操作、各属性適正、魔法威力向上、魔力感知強化、魔力回復速度上昇という最高位スキルなのですが……」
「えっと、赤子の器に魔力量が釣り合わなくて死ぬとか魔力量に耐えられなくて病弱になってしまうとかそういう感じですか?」
「いえ、転生予定の種族がドワーフなため魔法が使えないんです」
「まさかの根本的問題……!」
まさかスキルガチャに勝利したのに種族ガチャに敗北していたとは……。
「そもそも、どうしてドワーフに転生することに決まってるの?」
「それはですね」
「はい」
「あなたの好きなヒロインは何というかロリばかりでしたよね?」
「いえ、覚えてないから何とも言えないんですが」
「つまりそういうことです」
「……」
「……」
「どういうことだよ!」
とにかく、女神様は俺のためにドワーフに転生させようとした結果運悪く魔法のチートという一番かみ合わないものを引いてしまった、というわけか。
「もしこのスキルを退化させた場合何か役に立つスキルになってくれたりしませんかね?」
「なりません、ね。申し訳ありません。とはいえ、今回のことは私が先に種族を決定してしまったせいでもあります。なので、特別にもう一回抽選しなおす、というのはどうでしょう?」
「願ったり叶ったりだ。それでお願いしたい」
「それでは引いてもらいましょう! ルーレットスタート!」
「だから唐突なんだって!」
「ストップと言ってくださいね!」
「ス、ストップ!」
ルーレットが止まり、玉が入ったところに書いてあるチート能力は——
「精霊魔法適正、? これなら普通の魔法と違うからいいんじゃないか?」
「なるほど、そう来ましたか……」
俺としてはかなりいい引きをした気がしたんだけど、女神様はどうしてだか浮かない顔をしている。
「……もしかして、このスキルにも何か欠点が……?」
「いえ、本来ハイエルフにしか使えない、精霊に力を借りることで発動する精霊魔法は魔力も要らず威力は自然そのもの、つまり大災害だって簡単に引き起こせるほどの強大な力を行使できる。文句なしのチートスキルです」
「なんだか。嫌な予感がしてきたぞ?」
「ただ……」
「まさか何か欠点が!?」
「ドワーフは火と鉄を愛する種族。自然を愛するエルフだったらよかったのですが、ドワーフと精霊は相性が最悪で、簡単に言えば死にスキルになります」
「またかよ! また種族かよ!」
「ただ……」
「今回のことは私が先に種族を決定してしまったせいでもあります。しかし、もうすでに引き直しをしてしまいました」
うん、同じような会話をついさっきしたような記憶があるからね。
「そこで! 今回だけ特別に、安全安心且つ最新のチートをプレゼントする、というのはどうでしょう?」
「……詳しく」
「最新であるため名称も決まっていないのですが、そうですね……スキル名は『ゲッダン』でどうでしょうか?」
ゲッダン、そういわれてピンとくるものは俺の知識の中に存在していない。
もしかしたら消された記憶の中にはあったのかもしれないけれど。
「どういう能力か、説明してもらってもいい?」
「はい! そうですね、この能力は、簡単に言えば一種の踊りです。激しさと滑らかさを兼ね備えた究極の踊りを踊ることができるようになるのですが、最もすごいところはやはり『ピタッ』でしょう」
「なるほど……」
つまり、ゲッダンとは剣舞の一種なのだろう。
まさに蝶のように舞い蜂のように刺すを体現するかのような激しさと滑らかさ、そして剣をピタッと静止させる技術まで含まれている。
つまりこのスキルは複合スキルならぬ複合能力のようなもの、ということなのだろう。
それなら、剣を作り出すドワーフという種族にもぴったりかもしれない。
「よし! それにしよう!」
「本当ですか! では、さっそく転生させていただきますね!」
「ああ、よろしく頼む」
「それでは——新しい人生が充実したものであるように願っております」
そうして俺は転生し、異世界で新しい生活を送ることとなった。
空中静止ピタッによって世界を征服されゲッダン公国が誕生するのはここから実に30年後のことだった。
<終わり>
ゲッダン、だけ書きたかっただけです。大変申し訳ございません。
お読みくださりありがとうございます。