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極悪辺境伯の華麗なるメイド  作者: かしわしろ
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アナスタシア・ローズ3

「きてしまいましたね。」

「そうですわね。」


さっきまでグルンレイド領にいたというのに、魔法学校の寮にいるということがいまだに信じられない。グルンレイド領にいた時にももちろん美しい家具やベッドなどがあったが、この部屋はそれのさらに上をいくグルンレイド領の来客を招待する部屋のような場所だった。


「キングサイズのベッド、その周辺にはソファー、テーブルと椅子もありますわ。」

「こっちはキッチンですね。」

調理場と寝室は同じ部屋にあるようだ。


「こちらはバスルームですのね。」

近くのドアを開けるとかなり広いバスルームが広がっていた。残念ながらシャワーのみでお風呂はないらしい。バスタブにお湯をはろうかと悩む。


もしかしたら私の持っているお金でお風呂を増設できるかもしれない。グルンレイド領のメイドは給料というものをもらっている。普通に考えて私のような奴隷に賃金を支払うほうがおかしいのだが、正直下級貴族の稼ぎ分くらいはもらっているはずだ。


あるメイドの

『なぜこのような賃金なのですか!』

という問いに対してご主人様は

『貴様らにはこの程度の端金で十分だろう?』

という回答だったそうだ。金銭面の心配をさせまいというご主人様の心遣い胸を打たれた。


そしてグルンレイドで生活をする上では食費や宿泊費、そのほかにかかる生活費などは私たちは払う必要がない。ということで、街に出て美味しいお菓子を買うこと以外にはほとんど使いどきがないのだ。


「もうお風呂には入れないんですね……」

ソフィアさんもそのようなことを呟いていた。これは増設確定ですわ。


そんな感じで部屋巡りをしていると、入り口の扉が叩かれた。

「どうぞ。」

「失礼いたします。」

そこには私たちと同じくらいの背格好をした女の子が立っていた。


「本日より、アスター様のご案内役をさせていただきます、アナと申します。」

「まあ、こちらこそよろしくお願いしますわ。」


確かにこの学校についてのことを全く知らないので手取り足取り教えてくれる存在はありがたい。しかし、この子は堂々とした口調の割には細部が震えていて、かなり緊張しているようだった。ただ普通の人には気付かれないくらいに隠す技量はあるようだ。


「早速ですが、こちらでの生活についてご説明させていただきます。」

ということで説明が始まった。私たちが椅子に座ってもアナさんはたったまま説明をしようとしていたので、座るように促す。


「い、いえ、そんな恐れ多い!」

といっていたが、命令だというとしぶしぶ従ってくれた。


まずは寮生活について。

寮は男子寮、女子寮、そして貴族寮の三つに分かれている。貴族寮は男女別ではないのかと思ったが、各扉の前には魔法による認証システムが導入されていて簡単に侵入することはできないのだ。

また貴族同士のいざこざは領地の問題に発展するため、そのようなことを行うものは少ないようだ。


食事についてだが、基本的に大食堂に行けば好きな時に好きなものが食べられるそうだ。自室で食事をしたい場合はアナさんにいうことで運んできてくれるらしい。


一般寮には門限というものがあるが、貴族寮には内容だった。ただしよる7時以降の外出は推奨されておらず、それでも外出したい時は護衛を必ずつけろということだった。おそらくこの寮で生活をしている方々は夜に限らず常に護衛がついていることだろう。


次は学園生活についてだ。

入学式は明日、私は一年生として入学することになる。クラスは寮とは違い貴族とそうでない方とが入り混じっている形となっているようだ。入学した初日には、新入生は魔法力試験を受けることになる。その出来によってクラス分けが行われるらしい。私はグルンレイド寮にいた時には魔法力という面では少しみんなよりも劣っていたので、とても心配である。

そのあとはカリキュラムにしたがって授業を受けていくことになる。


以上が大まかな説明のようだ。感想としては貴族寮で生活をしている方の自由度は他の方々と比べてかなり優遇されているようだった。自由度が圧倒的に高い。


「わかりましたわ。」

「それでは失礼いたします。」

「あら、もう帰ってしまいますの?」

学校のことや寮のことは聞くことができた。しかし最も肝心なアナさんについてのことが全く話されてなかったではないか。


「え、えぇ。」

予想外の私の問いに少し戸惑っているようだ。


「アナさんはどちらで生活を送っておりますの?」

「女子寮ですが……」

魔法学校に通っている学生の他にもアナさんのような付き人として仕事に来ている方もその女子寮で生活を送ることができるようだ。もちろん一人部屋ではなく、共同部屋だが。


「アナさんこちらで過ごしてみませんこと?」

「えっ……ど、どういうことでしょうか?」

「そのままのことですわ。こちらで私たちと一緒に過ごしませんかということですの。」

別におかしいことは何もないはずである。付き人のことをもっと知りたいと思うのは当然のことのはずだ。ただ規則がそれを許してくれるかどうかだが、先程の話を聞くと貴族である私が一言言えば問題ない気がする。


「それはあまりにも申し訳なさすぎます!私のような……」

「御託は結構ですわ。あなたはどうしてみたいかを聞いていますの。」

「っ……」

別に少し話してみた感じだが、悪い子ではなさそうだし私的にはぜひ一緒に生活を送ってみたい。


「わ、私は……」

すごく私の目を窺っている。貴族を前に自分の意見をいうということに抵抗があるのだろう。それもそのはずだ。普通は貴族相手に自分の意見をいう機会なんてない。


「私は……許されるのならアスター様と、一緒に……過ごしてみたいです。」

すごく恐る恐るだが、アナさんは口を開く。半分が恐怖、半分が興味といったところだろう。


「もちろんですわ。私たちとの生活が合わなかったら、女子寮に戻るといいですわ。」

そういってアナさんの同居が決まった。


するとふたたび扉が叩かれる。

「どうぞ。」

「失礼いたします。先の件ですが、付き人の同居の許可が降りました。」

私たちをこの部屋まで案内してくれた人がやってきてそういう。


「追加ですわ。こちらの使用人も一緒にこの部屋で過ごすことになりましたわ。」

「かしこまりました。そう伝えておきます。」

今度は上の許可とやらを取りに行く必要はないらしい。1人も2人も変わらないということだろう。

「それでは失礼いたします。」

そういって部屋を出ていった。


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