カルメラ2
「このパーティのリーダーが私!?」
カルメラが驚いたような声を上げる。
「カルメラがいいと思う。」
「私もそう思う。」
私がそういうと、ヴィオラも続いてそういう。
カルメラの目を見て真剣に伝える。
「私からも、カルメラにはリーダーになってほしいと思います。」
「メイド長......。」
「あなたがリーダーの時のこのパーティは、見習いの中では最も強いですから。」
私やヴィオラも仮のリーダーとして、戦闘訓練を行ったことがある。が、やはりカルメラのように指示が出せない、まとめられない、うまくいっているとは言えないものだった。
「わかりました。私がリーダーを務めさせていただきます。」
カルメラがリーダーになった。
—
「よろしくお願いします。」
今日の午前はローズの方との戦闘訓練である。1対1だと確実に勝てないので、3対1で行われる。
「よろしく……カルメラたちかぁ。」
アシュリーさんがそういう。すごくいやそうな顔をする。
「なんて顔するんですか。」
カルメラがいう。
「だって君たちのパーティ強いんだもん。」
「アシュリー、よろしくお願いしますね。」
「はーい。」
メイド長に釘を刺されては、アシュリーさんも訓練に付き合うしかないだろう。
「じゃあ、準備して。」
「私たちはいつでも大丈夫ですよ。」
私たちはどんな時でもメイド服を着用している。みんながみんな同じデザインというわけではないが、そこまで大きく違うものではない。
そして幾らかのものは腰に剣、または短剣を下げている。短剣の場合は小さいので、見た目を気にしてスカートの中に隠しているものもいる。
私は腰に剣を、ヴィオラとカルメラは何も持っていない。おそらく2人とも短剣を隠していることだろう。
「じゃあ、始めようか。」
「はい。」
そのカルメラの返事の瞬間に、アシュリーさんが消えた。私はカルメラを守るように移動し、ヴィオラはパーティ全員を包み込むような防御結界を張る。
「さすが、早いね。」
「ぐっ!」
防御魔法の上から剣を叩き込まれる。私は訓練場の壁まで吹き飛ばされた。
「スピードラン」
カルメラが私とヴィオラの間に移動する。
「ヴィオラ牽制を。」
「了解。」
その短いやり取りで、ヴィオラは神眼を発動する。その瞬間アシュリーさんの視線が地面に向かう。直接神眼を見てしまうと、その時点て体の制御を奪われてしまう可能性が高いからだ。
「やっぱり神眼は慣れないなぁ」
そう言いながら、ヴィオラとの距離をつめていく。
「華流・凪」
「華流・剪定……くっ!」
二つの剣が交わり、ヴィオラが吹き飛ばされる。
「最後はカルメラ……足が。」
カルメラが地面を歪めていた。その間に私はアシュリーさんに剣を叩き込む。
「華流奥義・極一刀」
ズドォンという音とともに、アシュリーさんをたたききる。魔法障壁があるとはいえ、私の一撃を受けて無傷というわけにはいかないだろう。
「痛ったい……。」
わき腹を抑えながら立ち上がる。
「華流・華かんざし!」
さらに追い打ちをかけるように私は距離を詰める。
「くっ、華流・華かんざし。」
私とアシュリーさんの剣の先端どうしが触れ合う。しかし、徐々に私の方が押し返されていく。……やはり魔力密度はあっちが上か!
「ハーヴェストそのまま!ヴィオラ!」
カルメラの声が聞こえる。その合図とともにヴィオラがアシュリーさんの後ろへ回る。
「エターナルルーム。」
周囲の空間が徐々に隔離されていく。神眼の力を応用した空間断絶魔法だ。
「まずいっ。」
アシュリーさんがこの場を離れようとする。
「させません!」
そのすきに私はさらに魔力を込めて上から押しつぶす形にする。
「くっ、ヒートボム・絶唱!」
ドーンという音とともに、自分もろとも空間を爆発させる。爆風で吹き飛ばされてしまう。
「ごめんカルメラ!」
と叫んだ時にはすでにアシュリーさんは隔離されつつある空間から脱出していた。
「ふう。危なかったよ。」
そう言ってぼろぼろのメイド服についている血をぬぐう。かなりダメージを追っているようだが、それは私も同じである。
「いいえ、危ないのはこれからですよ。」
カルメラの声が聞こえた。
「展開完了。」
それに続いてヴィオラの声が響く。
「なっ!」
遠くにいたはずのアシュリーさんが、一瞬でさっきいた空間に引き戻されていた。
「これはどういう……がっ!」
アシュリーさんがいる空間が爆発する。また爆発する。そしてもう一度。
「そこまで!」
メイド長が止めに入る。
「大丈夫ですか、アシュリー。」
「えぇ、大丈夫ですよ。」
神の領域は消えていた。かなりぼろぼろだが、治癒空間を展開していたので徐々に回復しているようだ。
「いやー、やっぱり君たち強いね。連携が完璧。」
「それはカルメラの指示のおかげですよ。」
「そうですね。カルメラです。」
そういって私たち二人は、カルメラの方を向く。
「い、いえ、私は……。」
そういって顔を赤くして照れていた。普段しっかりしているカルメラのそういうところはかなりかわいらしい。
「そうだな、カルメラの功績は大きい。だが、君たちも十分すごいぞ。」
そういってアシュリーさんは頭をなでてくれる。
「カルメラのあれは無唱詠唱だな。」
「そうです。」
魔法名を発さなくても魔法を使用できるという詠唱方法である。どうやるのかは私にはさっぱりわからないが。
「今度は本気のアシュリーさんと戦いたいですね。」
「ハーヴェストそれはさすがに……。」
カルメラに渋られてしまう。
「そうですね。それはもう少しあなたたちが強くなってからの方がいいでしょう。」
メイド長にもそういわれてしまう。
「私はいいけどなー」
今回の戦闘において観測魔法を一度も使われてはいない。手を抜いているとまではいかないが、真の実力を出しているとは言えなかった。
「じゃ、シャワー浴びたいし、私はこれで失礼しまーす。」
「お疲れ様でした。」
そういってアシュリーさんは屋敷の方へ戻っていく。
「あなたたちもゆっくり休んでください。お疲れ様です。カルメラもね。」
そうして私たちの戦闘訓練は終わった。




