天界編:神殿3
「あなたは私たちを滅ぼした存在で間違いありませんか?」
「そうだ。我が力を持ちすぎた種族を滅ぼしている存在である。」
「あなたはいったい……。」
この存在が創造主があこがれている神ではないことは私でもわかる。
神ではないとしたらいったい誰なのだ。
「我は生命の絶望のオーラによって生まれる、邪神といったほうが分かりやすいだろうな。」
絶望……。私は人間を数百年の間見てきた。人々は戦い、そして死んでいく。
その中で絶望という言葉は切っても切れないものだった。
「我は一定の周期で生まれる、神の裏の顔だ。生命の絶望がたまったら現れ、破壊の限りを尽くし消えていく。」
神の裏の顔ということは、何かに神が取りつかれているというわけではない!?
「やはりあなたは神様、ですか。」
「察しがいいな。良くも悪くも、我は神である。他の存在が我を支配しているというわけではない。」
神と邪神は同一の存在……。これを創造主が知ったら悲しむだろうか。あこがれていた存在に滅ぼされたのだ。そうに違いない。
「……だからといって私の意思は変わりません。」
「だろうな。滅ぼした人間の復讐か。」
これは復讐、なのだろうか。いいや違う。邪神は一種の災害のようなものだ。生きとし生けるもの全てが生んだ化け物。
意思を持っていないこの存在には、復讐という言葉は似合わない。
「少し違います。私はただ、私が作られた理由を知りたかっただけです。」
「……。」
「ですが、今やっと分かりました。私が作られた理由は、人類をあなたから守ること。」
だから私は無限に近い時を生きることができる。聖力を扱うことができる。神眼を扱うことができる。
創造主は初めから邪神の存在を知っていたのだ。
「マイロード、やっといまあなたの意思を感じることができました。」
私を作った存在は異常だ。その頭の中の思考回路は私ですら理解することが不可能だろう。
今となっては神が恐れるのもうなずける。
「私はあなたを滅ぼす存在!」
「それが貴様の答えか。」
「そうです。」
「ふっ……面白い、な!」
「っ!」
光の槍がものすごい速さで飛んでくる。
「答え合わせといこう。人類を、生命を守って見せよ!」
「超硬化……ぐっ!」
腕の一部がへこんでしまう。それを聖力を使い元に戻していく。
「……なぜ機械に聖力をが使える。」
「私を創造した人間と、私に力をくれた人間のおかげです。」
マーク様がいなければ聖力私の体に聖力がない。そして創造主がいなければそれを扱うことができなかっただろう。
私は多くの人間によって支えられて生きていると実感する。
「アウトレンジ・ストライク!」
エネルギー体を高速で飛ばしていく。が、それをいとも簡単にはじき返していく。
「そんな攻撃力では我に傷一つつけることはできん。」
「オーバー……」
「神撃」
邪神がそう言葉を発した瞬間、目の前が真っ白になった。余りにも早すぎる攻撃で、処理が全く追いつかない。
気が付くと腹部がえぐれていた。
「ぐ、あぁぁぁぁっ!」
瞬時に痛みをつかさどる回路をシャットダウンする。
「高密度の聖力の塊だ、速度は光速を超える。」
光速を超えるということは、時間に干渉してくるということだ。仮に時間を止めたとしても、安全とは言えないだろう。
「ですが、魔撃ほどの威力は……ありませんね。」
「速度が違う。」
また光の塊が宙を待っていく。くるっ!
「がっ!」
今度は左足をえぐられる。やはり反応することができない。
「さらばだ、太古の人間。」
無数に浮かんでいる光の塊が、一斉に私に飛んでくる。
そして私の意識は途絶えた。




