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極悪辺境伯の華麗なるメイド  作者: かしわしろ
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ハル・カシワシロ番外編

「今日はこの宿に泊まるらしいわ。」

試合観戦に集中しすぎてもうとっくに日は落ちてしまっていた。魔法道具による通信を行ってエミナさんと合流する。


「ユウトさんは……」

「想像通りまだお祭りを見てるわ。」


これはとうぶん帰ってこないね。最初にこの宿を見たときは超高額な料金を払わなければいけないような印象を受けた。それほどまでに立派だったのだ。しかしリアちゃんに来たところ、これくらい普通ですよ?ということだった。貴族が泊まるような宿はもっとすごいのだとか。


「ハルちゃん、お風呂、いこっか。」

エミナさんは今すぐにでもお風呂に入りたくて仕方ないようだ。


「……待って、チェックインもまだでしょ?」

いろいろすっ飛ばしすぎである。


「いらっしゃいませ。ご予約は受けております。」

さすがユウトさんだ、すでに予約をしてくれていたらしい。いつものようにユウトさんが一人部屋、私とエミナさんが二人部屋ということになる。


「お金を……。」

「支払われております。」

……やはりさすがである。


「ではお部屋へご案内いたします。」

さっきは宿、という表現をしたのだが、正確にはホテルというほうが正しいようだ。正直この世界でこんなホテルのような場所に泊まることができるとは思ってもいなかった。


「こちらへどうぞ。」

これってまさか!

「エレベーター!」

「ご存知でしたか。」

案内人が少し驚いた顔をする。ご存知も何も、よく使うものである。この世界で見ることになるとは思わなかったけど。いや、このグルンレイド領に限っては異世界の知識は珍しいものではないのかもしれない。


「電気はどこからきているのかしら?」

確かにこの部屋の照明もどこから電気が来ているのかわからない。


「電気……というものを私は存じ上げませんが、これらすべてのエネルギー源は魔力です。」

魔力凄い。もはや電力でできることは魔力でも代替え可能ということだろう。


「エミナ様、ハル様のお部屋はこちらになります。それでは手を。」

手?よくわからないが、部屋の前に到着したときにそういわれた。その通りに手を出すと、何やら魔法で何かを書き込まれた。


「これでこの扉への入出が可能となりました。それではごゆっくり。」

そういって案内人は戻っていった。言われたとおりに扉の前に手をかざしてみるとカチャっと音がしてロックが外れた。


「すごい……。」

どんな仕組みかわからないが、この扉はオートロックで魔法の付与された手を近づけると解除されるらしい。


 ということでさっそく部屋の中を物色する。広さは高級ビジネスホテルくらいある。めっちゃ広い。ベッドはおそらく数十万、下手したら数百万するんじゃないかというくらいに立派である。


「ハルちゃんここって貴族の部屋?」

「ちがう……はず。」

違うよね?でもそう思ってしまうくらいには立派すぎていた。


 次に肝心のお風呂を見に行く。普通の宿だと水浴びする場所みたいな感覚である。魔法によって温めてから浴びるのだがやはり気分はすぐれない。がしかし、


「ハルちゃん私ここに住む。」


エミナさんがそういってしまうくらいには整えられた浴室だった。この世界では見ることのない浴槽、シャワー、グルンレイド製の石鹸、そしてシャンプーにリンス。まさしく私が望んでいたお風呂そのものだった。


「私、入るわ。」

「いや、私が入る。」

視線が交わる瞬間火花が散った。早くこの幸せの空間につかりたい、そんな思いだけが交差する。


「ここは年功序列がいいと思うわ。」

「かわいい年下に譲るという考えもいいと思うね。」

バトル、開始。


--


壮絶なる口論の末に、なぜか二人一緒に入ることになったわけだが、この浴槽は広いので二人で入っても問題はないだろう。


「なんだかんだ初めてだね。」

「そうね。」


結構な時間一緒に過ごしてきたのだが、二人で一緒にお風呂に入るということはなかったと思う。そもそも二人で入れるようなスペースの浴槽なんて存在しなかったしね。しかし服越しではよくわからなかったが、なかなかいい体形だと思う。


「あまり見ないでほしいのだけど……。」

「いやースタイルいいなーと思って。」


私もスタイルという点においては負けてはいない。モデルのお仕事だってしてるし。でもやはり私と決定的に違う点はここである。


「このだらしない胸はなんだー!」

そういってエミナさんから備え付けのバスタオルをはぎ取る。

「きゃっー」

有紗さんほどとはいかないが、それに迫るような大きさを誇っている。それでいてなんでそんなにウエストが細いの?異世界にくると姿が変わるようなイメージだったが、私の場合は顔も体も全く変わっていない。ということはエミナさんも現実でもこのような姿形をしているのだろう。


「あ、あの、バスタオルを……。」

「まあまあ、私もおいていくから。早く入ろ?」


マナー的にもバスタオルを湯につけるのはよくないからね。ちなみに口論をしている間に、お湯をためていたので、浴槽一杯に湯が張られている。今まで過酷な旅が多かったけど、この瞬間はなんか修学旅行見たいで楽しい。私もグルンレイド信者になりそうである。


「なんかすごいわ。」


シャンプーを手に取っているエミナさんがそういう。いい香りに加え、保湿効果、美肌効果など様々なことが書かれていた。私も本当かどうか疑いたくなる時はあるが、メイド長やリアちゃんを見ていると効果はあるなと確信する。


「洗ってあげる。」

そういってエミナさんが私の髪を洗う。私は妹はたくさんいるのだが、姉が一人もいないのでちょっと新鮮である。


「ありがと。」

次は私が洗ってあげよう。


 そんなこんなでお風呂を満喫した。湯船につかった時のエミナさんのとろけきった表情は今でも忘れられない。ユウトさんに明日も一泊するように頼みこもう。二人でそう決めた。


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