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極悪辺境伯の華麗なるメイド  作者: かしわしろ
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リア・ローズ6

「リアちゃんすごすぎ!私たちいる?」


山を越えた先のふもとで休んでいるときにハルさんがそういう。もう日が沈んでいるので、ここで夜をやり過ごすのだろう。

夜ご飯は今回もエミナさんからもらったパンを食べる。やっぱり甘いパンはおいしい。


「ほら、スープもできたぞ。」

そういってユウトさんがスープをくれる。


「あの、何から何まですみません……」

「何言ってんの、リアちゃんの活躍を見れば誰も文句はないって!」


ありがとうございます。といってスープを受け取る。あったかくてこれもおいしい。グルンレイド領にはグルンレイド領のおいしさがあるが、このようなワイルドなおいしさもまたいいなと感じる。


次の日、私が想像しているよりも早くに港に到着した。確かに地図を見ると山と隣接していることがわかる。


「……すごい。」


私は初めて見る海というものに感動し、思わず声が漏れてしまった。これが潮のかおり……。


「ここが港かー、懐かしいな。」

「ユウトさんは海には来たことがあるのですか?」

「まあ、昔な。」


やはり冒険者。海にも以前言ったことがあるらしい。


「懐かしー、水着きておよぎたいなぁ。」

「エミナさんってさスイカ割とかしたことある?」


二人も海にこれたことがすごくうれしいようだ。私の知らないような単語もたくさん出てくる。グルンレイド領で勉強したつもりだが、まだまだ私の知らないことがたくさんあるらしい。ハーヴェスト卿は事前に船を用意していたようで、すぐに馬車から乗り継いだ。


「立派な船だな。」

「そうですね。」


ユウトさんがそういう。私は船というものに乗ったことがないので、これがどれほどすごいものなのかはわからない。


しかし船の構造については習ったことがある。これは魔力供給型の船であるため。風を受けて進むよりも格段に速い。ただし、その船を動かせるほどの魔力があればだけど。人が二人乗れるくらいの小舟であれば、普通の魔法師一人で進ませることができる。しかしこのレベルの船を動かすとなると数人の魔法師が必要となる。


「じゃあ、二人一組で魔力供給をしていくぞ。」

そうユウトさんが言う。


「少し待ってもらっていいですか?」

そう私がさえぎる。そうして、私の魔力密度を上げて魔力を流す。ズンという音とともに船が進み始める。


「……動いちゃったね。」

「そうだな。」


やっぱり、というような視線を私に向ける。私が思っていたより少ない魔力量で船を進めることができるとわかったので、船は私が魔力を供給して動かすことにした。


極東に向かうにおいて、一番の問題となっているのがこの海を渡ることとされている。私の魔力供給量では一日もかからないらしいのだが、普通だと三日はかかるそうだ。

しかし早くいこうとそうでなかろうと、大陸と極東の真ん中ほどにある黒海を渡ることには変わりはない。そこには上位の魔物のみが存在する魔の海だ。


「海の中の敵にはどう対処するのですか?」


海上での戦闘を行ったことがないので、ユウトさんに聞いてみた。


「普通は逃げるしかないけど、魔法を使えるのなら船の上から攻撃できるな。ただ黒海は別だ。戦って勝てる相手じゃない。……リアちゃんは分からないけどね。」


私の魔力量を知っているからか、そういう。実際に行ってみないことにはわからないようだった。


「みんな、魔の海に入るよ。」


ハルさんがそういう。青かった海は徐々に灰色になっていき、さらには黒く染まっていった。黒海の理由がようやくわかった。この異常な魔力密度によるものだ。この濃さで魔力酔いをせずに生きていられる魔物は、相当強いということが分かる。


「……迂回していけないのでしょうか?」


「極東をぐるっと囲むようにこの海が広がっているからなぁ……。」


難しいようだった。そう答えるユウトさんの表情は少し辛い感じがした。……瘴気!私はあわてて魔力拡散魔法を唱える。


「バニッシュルーム」


舩全体の魔力密度を大幅に下げる。私はこの体だからあまり気にならなかったけど、普通の人はそうじゃない。このレベルの悪い魔力を浴び続けると取り返しのつかないことになってしまう。


「ありがとうリアちゃん。楽になったよ。」


ユウトさんがそういう。


「ハルさん、エミナさん、操縦を変わってもらってよろしいでしょうか?」


ここは危険すぎる。私が前線に出る必要がある。


「……分かったわ。」

「気を付けてね。」


一瞬二人は心配そうな顔をしたが、一緒に戦うと足手まといになると判断したのだろう。二人は船の魔力供給に向かった。


「ユウトさんはハーヴェスト卿の護衛へ。」


「俺もいっしょに……といいたいところだが、リアちゃんの顔を見るとそうも言ってられないみたいだな。」


そこまで怖い顔をしていただろうか?……きっとこの魔力密度の濃さに、知らず知らずのうちに気が張っているのだ。


「……すみません。」

「いや、気にすんな。」


そういってユウトさんは護衛へ向かう。


私は船の上からこの黒い海を見つめる。その瞬間、海中にいる魚型の魔物と目が合った。その魔物の口が動いたかと思ったら、空中に水が浮かび、飛んできた。


「っ……。」


とっさのことで反応できずに、体は黒海の海水で濡れてしまった。高密度の悪い魔力が私を包んでいくのが分かる。


普通の人間ならきっとここで死んでいただろう。


運よく生き延びたとしても、魔物付きとして苦しんで生きることになるはずだ。私がいつまでたっても倒れずにいると、その魔物は海の底に消えてしまった。


 ここには魔物がたくさんいると聞いてきたから、そこら中に魔物がいるのかと思っていたけど、これまであった魔物は最初の一匹だけだ。このまま何もないに越したことはない、そう思っていた時に、水中から巨大な水しぶきが上がった。


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