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人間界編:創造神2
椅子の後ろに立っていた二人が剣を構える。
「心配するな。何もしない。」
我はたった今、この間違っている世界を造り変えるということはしないと決めたのだ。
「もう一度言う。我は見届けることはできない。」
「……そうか。残念だ。」
そういって、奴は……いや、グルンレイドは背中を向ける。なにも、聞かないのか。まあ、我の心を読んだのだろうな。確かにグルンレイドが創り出す世界を見ていたい。だが、この世界には、この正しい世界には終止符を打たなければならない。この正しい世界の最後が、我でありたいと、そう思った。
「グルンレイドよ。最後に、我に、名前をつけてはくれないか。」
「そうか……古の記録では、原初の人間はイブとアダムとされている。貴様はその終わりだ。最後の文字を取ってイムというのはどうだ。」
「イムか……そうか、それがいい。」
我は笑った。初めて笑った。
「見届けてやろう。」
見届けてばかりの我が、見届けられる日が来るとはな。
「さらばだ。愛しき世界の全てよ。」
勇者が涙を流し、メイドが頭を下げている。
そうして僕は消えた。