人間界編:グルンレイドのメイドたち3
エミリアに続いて次々に倒れていき、メアリーから範囲外まで飛ばされていった。いまここに立っているのはメアリー、スカーレット、カルメラ、イリス、私、そしてご主人様だけだ。カルメラとスカーレットはかなり辛そうな表情をしていた。
「まだ倒れんか。……まあいい。順次消していくとする。」
するとカルメラに向かって手を向ける。
「エアヴェール・絶唱!」
メアリーが唱えるが、
「あぁぁっ!」
カルメラの右半身が削れていく。エアヴェールで防ぐことができない!?
「セイントヒール!」
イリスが回復聖法を唱えるが、治る様子はなく止まったままだった。
「破壊速度が速すぎて、回復が追いつきません!」
しかし止めることはできている。このまま回復を続けてもらうしかない。
「持ち堪えてください。私が……」
「メイド長!」
創造神の攻撃を止めようと動こうとするが、カルメラの叫びに止められる。
「この魔力密度では、私程度の実力では時間を止めることすらできません。足手まといです!……私の魔力だけをとって、遠くへ飛ばしてください。」
真剣な表情だった。これがカルメラが考えた最善の行為だと言うのならば、私はそれに従う。
「メアリー!」
「かしこまりました!」
するとメアリーは時空間魔法でカルメラを飛ばす。その際にカルメラの魔力をもらったようだ。
「……ミクトラ!?」
メアリーが急にそのようなことをいう。カルメラの魔力をもらった瞬間……ということはカルメラの中にミクトラがいたということだろうか。
ということは今メアリーの中にミクトラがいるということだ。霊族は魔力が直に影響してしまうので、この魔力密度ではメアリーから出てしまうと一瞬にして精神が崩壊してしまうだろう。
「ミクトラはそのままメアリーの中にいてください。」
「かしこまりました。」
メアリーがそういう。まあ、ミクトラがメアリーの声帯を使ったのだろうけれど。
「イリス、カルメラの元へ行きなさい。」
「それではみなさんを回復することが……っ!」
「行きなさい!」
「で、ですが……メ、メイド長!」
私は時空間魔法を使用する。そしてイリスをカルメラのもとへと飛ばす。カルメラの腕も心配だが、この場にイリスがいるとイリス自身も危険にさらされてしまう。
「優しいですね。イザベラ様。」
「……。」
スカーレットがそういってくる。別に優しさというわけではない。グルンレイドのメイド長として、誰一人として死なせないためにそうしたのだ。
「破壊術・起爆」
この超高密度の空間が震えだす。
「スペースロック・絶唱!」
メアリーが空間を固定する。爆発を止める。
「華流奥義・轟一線」
「人間にしては……すべてが人間らしくないな。」
スカーレットの剣を受け止めると、創造神がそのようなことを言う。
「そう、別に人間でも人間ではなくても私はかまわないけれど。」
「貴様は人間にしておくにはもったいないな。」
一体何の話をしているのだ。この距離では聞き取ることはできなかった。
「邪神が消えた、破壊神も使い物にはならんだろう。私とともに来い。力を与えよう。」
「……少し前の私ならば、うなずいていたかもしれないわね。」
スカーレットの魔力密度が上がる。この空間よりも、さらに濃く。
「今は、創造神ごときに従う気はありません。」
「ふっ、は、ははははは!面白い。そこにいる人間だろう?貴様が仕えているのは。」
視線がご主人様の方へと向けられる。私はご主人様と創造神の間に入るように移動する。
「全てのメイドを始末した後に、ゆっくりと話を聞くとしよう。さらばだ。神になれなかった人間。」
「……えっ?」
消え……
「スカーレット様っ!」
メアリーが叫ぶ。しかしその声が届くことはなかった。……スカーレット?周囲を見渡しても、スカーレットはいなかった。
「スカーレット様を、」
「メアリー待ちなさい!」
「スカーレット様をかえせ!」
メアリーが飛び出していく。スカーレットを消すほどの相手に無策で飛び込むのは……っ!
「破壊」
「きゃぁぁぁっ!」
右腕が削れていく。
「がぁぁぁっ!ミクトラ!力を、貸して!」
それでもメアリーは止まらない。私も駆け付けたいが、ご主人様の元を離れるわけには……。
「神級第三位魔法、フレイム・オブ・リベリオン・絶唱!」
「貴様も神の領域に踏み込むか。」
創造神はそれを受け止める。が、届かない。しかし、ダメージは必ず与えている!
「創造術・再生」
透明な炎を抑え込んでいく。
「破壊」
そして、攻撃は止まらない。
「くっ!」
メアリーの左腕が消えていく。メアリー!このままではスカーレットのように……安全な場所へ飛ばさなければ!
「超級第一位魔法、アナザー・ヨグ・ソトース!」
が、メアリーとミクトラのあまりの魔力密度にそこの空間を飛ばすことができない。
「くっ、仕方ありません!エアヴェール・絶唱」
ご主人様の周りに空気の層を展開する。焼け石に水だとは思うが、ないよりはましだろう。そして私はメアリーのもとへ駆けつける。
「エクストラヒール・絶唱」
徐々に破壊された腕が再生していく。がやはり破壊速度が早すぎるためか、かなり遅い。
「さらばだ、グルンレイドのメイドよ。」
創造神の腕が振り上げられる。態勢を整えないと……。
「華流……」
「破壊術・神の腕」
まずい、この腕には触っていけない気が……。しかしそばにメアリーがいる。受け止めなければ!
ガギィン!
そんな音とともに腕を受け止めるが……剣が、消え始める……。
「くっ、」
剣が消え、腕を手で受け止める。
「イザベラ様!私はいいです!手をお放しください!」
メアリーの声が聞こえる。そして私は腕を握る手に力を込める。これ以上、かわいいメイドたちを傷つけさせたりはしない。魔力障壁で守っているが、徐々に体が薄くなっているのが分かる。
「やはり、消すのには惜しいな。このメイドたちは。しかし、消さなければ。」
創造神の力がさらに強くなっていく。
「そうしなければ、もう後戻りが、できなくなってしまう。」
もう……限界だ。