コトアル・マリー・ローズ3
「訓練を止めてしまい申し訳ありません。」
「いえ、問題ありません。」
そう話しかけてくるのはカルメラさんだった。
「こんにちは、カルメラさん。」
見習いたち三人も挨拶をする。
「ご主人様からの収集です。謁見の間へ来ていただけますか?」
魔法によるメッセージを使えばいいと思うかもしれないが、このような戦闘訓練中だった場合急なメッセージは大きなけがにつながる場合がある。なのでこのように口頭で伝えることが多い。しかし緊急事態だった場合はその限りではない。
「すぐに向かいます。」
三人も武器をしまい、こちらの方へ駆け寄ってくる。
「集合時間は現在の時間から一時間後です。汗を流してからでも構いません。」
「承知しました。」
私はそう返事をする。
「それと……。」
カルメラさんがそうつぶやくと私のいたるところにあった傷が次々にふさがっていく。
「あっ、」
「あまり無茶しすぎないでくださいね。」
「ありがとう、ございます。」
私がそういう頃には、傷は完全にふさがっていた。機械の体だったときは、魔法による回復、聖法による回復は一切効かなかったのだが、今は効くようになっていた。
「あなたたちもよ。」
すると見習いたち三人の傷も回復していく。これが無唱詠唱の力……すごい。
「はーい、」
「ありがとうございます。」
「了解です!」
私はかなり疲れているが、見習いたちはまだまだ元気いっぱいだった。
「お風呂に……いこっか?」
「はい!」
ということで見習いたち三人とお風呂へ行くことになった。
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私が機械だったころには一度もお風呂というものに入ったことはなかった。おそらく入ったとしてもその気持ちよさを感じることはなかったと思う。しかしこの体になってからは、毎日お風呂というものに入っている。いつもはヴィオラさんや、ビクトリアちゃんと一緒に入るのだが、今回はさっき一緒に訓練をしていた見習いたち三人とである。
「かっこいい……さわってもいいですか?」
キラキラした目でそういってくるのは、レイリンちゃんである。彼女はかなり活発で、何事にも興味を示しているように感じる。
「い、いいよ。」
しかし私も誰かに体を触られるというのに慣れておらず、少し緊張する。こんか固い体では特に魅力などもないだろうし。
「……温かい?」
「聖力の影響かな。」
体中が聖力で満たされているため、このような金属でも表面は多少の熱を帯びているようだった。
「綺麗ですね。」
私を創った存在はこの光の流れを血液に見立てていたのだろうか。一定の間隔で腕の線に沿って光が移動している。機械にしては可愛らしい見た目で設計してくれたのはうれしいが、ヴィオラさんなどの柔らかい体を見ていると、うらやましいなとも思ってしまう。ご主人様だって柔らかい体の方が好きだろうし……って、何を考えているの!
「ん?今マークさんのことを考えてませんでした?」
オリビアちゃんがそういう。この子は感が異常に鋭い。おそらくグルンレイドのメイドの中でもアシュリーさんに次いで二番目に鋭いといっても過言ではないだろう。
「い、いや、考えてないよー。」
「マークさんはからだの柔らかさで判断したりしないですよ。」
「だ、だから!」
私がそういうと、わー、といいながら二人がかけ出していく。お風呂場では走らないようにね……。
「す、すみません。あの二人が。」
クレアちゃんが申し訳なさそうに近づいてくる。あの二人は活発な性格だが、逆にクレアちゃんはおとなしい性格である。
「だ、大丈夫だよ。」
クレアちゃんはまだ髪を洗っていないようなので、私が洗ってあげることにする。子どもたちとお風呂を一緒に入るとほとんど私が髪を洗うことになる。ビクトリアちゃんはあまり洗ってもらおうとしないけど……。
「あ、ありがとうございます。」
少し緊張しているのか、ほほを赤らめながら椅子に座る。金色のきれいな髪だ。私は髪というよりは髪をかたどった金属なのでさらさらな髪がうらやましい。
クレアちゃんの髪を洗い終わり、私もしっかりと汚れを落とすと、湯につかる。普通の金属であればさびる可能性があるが、私を形成している金属はさびることはないらしい。湯の暖かさを感じることができるのは、魂を持っている証だろう。




