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極悪辺境伯の華麗なるメイド  作者: かしわしろ
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ルナ4

「よくやった、カルメラ。」

「ありがとうございます。」

ご主人様が中庭に姿を見せ、私にそのようなことを言う。姿こそなかったが、私と吸血鬼の戦闘を見ていたことだろう。その吸血鬼といえば、私の魔法によって断絶された空間に固定されていた。時間も止めているので、見るからに重傷だが、死んでいるなんてことはないだろう。


「イザベラ、直しておけ。」

「かしこまりました。」

するとメイド長が見習いたちに指示をして、次々と破壊された部分の修復していく。あの空間内の時間停止は、メアリーさんに託してきているので現在の私の魔力消費はゼロである。


「カルメラ、ついてこい。」

「は、はい。」

そういわれるままに、私はご主人様の後ろをついていく。今回の戦闘について聞きたいだけなのだろうが、このようにしてご主人様と一対一で話をするというのがとても緊張する。そんなことを考えているうちに、応接室までたどり着いた。私は扉を開ける。


「座れ。」

「はい。」

言われたとおりに私は椅子に座る。もともと応接室には椅子などないのだが、長時間話す場合などは椅子を用意する場合がある。周辺貴族などは椅子を用意されても、座らない場合が多い。


「まずは傷を癒そう。エクストラヒール・絶唱」

一応私も応急処置的に、ヒールをかけてきたのだが、それでは治せなかった傷もふさがっていた。


「ありがとう、ございます。」

最初にご主人様と出会ったときは、見ただけで命を刈り取るような人に見えたのだが、今となってはとても慈悲深く優しい方であるということを理解している。


「吸血鬼と戦ってみて、思ったことを言え。」

玉座にも似た椅子に座りながらそのようなことを言う。正直口には出さないが、王都にいる国王よりも、王にふさわしいのではないかと私は常日頃から思っている。


「正直、これほど強大な存在とは思っていませんでした。」

一度見たときは魔力密度もそれほど濃いわけではなかったので、簡単に捕獲できるものかと思っていた。


「私以外の見習いでは……ステラがやっと勝てるくらいでしょうか。」

一対一ではそれ以外の見習いでは勝つことは難しいと感じる。


「しかし、パーティを組めば比較的容易だったでしょう。」

「ふむ。」

ご主人様はそういって、天井を見上げる。


「では、なぜおまえはパーティを組まなかったのだ?」

「それは……覚醒という存在を私は知らなかったからです。」

確かにパーティを組めば比較的容易に倒すことはできたと、今となっては断言できる。しかし実際に戦闘をしていた時点では、私が先導して覚醒というものを解明する方がリスクが少ないと判断したのだ。


「すばらしい。」

正直怒られると思っていたのだが、私の予想に反してご主人様はそのようなことを言う。


「お前のリスク管理は間違っていない、今後も続けろ。」

「か、かしこまりました。」

そういって私は立ち上がり頭を下げる。


「一つ聞きたいことがございます。」

私はご主人様の方を見る。


「覚醒のことだな。」

私の考えることなどすべて理解しているかのようだった。


「名前は聞いたことがある、しかし詳しいことは知らん。ゆえに知ることになる。」

「あの吸血鬼に聞くのですね。ということは……。」

ご主人様は立ち上がる。


「カルメラよ、すべてのメイドに伝えよ。吸血鬼を我がメイドとする、とな。」

「かしこまりました。」

この屋敷を攻撃してきた存在までも許し、そして誇り高きグルンレイドのメイドにするとは。なんと慈悲深い方なのだろうか。私はもう一度頭を下げ、この部屋を後にした。


 破壊されていた中庭は、何もなかったかのように元通りになっていた。ただし相変わらず四肢を切断されて凍結させられている吸血鬼は宙に浮いていた。


「……カルメラ、やりすぎじゃない?」

「そんなこと……ないわ。」

ヴィオラがそのようなことを言ってくる。やりすぎということはないと思う。本気を出さなければ、私が重傷を負っていたかもしれないのだ。


「大丈夫か、カルメラ。」

ハーヴェストが駆け寄ってくる。


「えぇ、ご主人様に回復魔法をかけてもらったから。」

あの吸血鬼との戦いで、魔力の本質を感じることができるようになっていた。ご主人様の魔力は、なんというか、とても崇高なものだった。思わず地面に膝をつきたくなるような、そんな魔力。そう感じるのは私だけかもしれないけれど。


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