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極悪辺境伯の華麗なるメイド  作者: かしわしろ
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龍族編:龍の里1

ヴァイオレットという龍族は私の想像の遥か上をいく強さだった。もしかしたらそこに倒れているのは私だったかもしれない。それほどギリギリの戦いだったと思う。しかし、この戦いのおかげで私は強くなれた。


「始末が終わりました。」

「よくやった。」

ただ一言だけだったが、それだけで私は十分だった。そう感じるということは、いつの間にか私はこの方をご主人様として認めていたのかもしれない。


「イザベラ、死なせるな。」

「かしこまりました。」

地面に倒れて血を流しているヴァイオレットにイザベラさんは回復魔法をかけている。私と同じくらいの歳だというのに,龍の里を守る存在だなんて荷が重いのではないかと思う。


「イザベラ……いやスカーレット。」

ご主人様は私の方を向く。


「龍族の姫のところまで私たちを飛ばせ。」

イザベラさんは回復魔法を使用しているからだろうか、私にそのようなことを言う。しかし私は時空間魔法を使用することができない。いや……できなかった。


「今のお前なら、呼吸をするようにそれを発動することができるはずだが?」

言葉に詰まった私にそのようなことを言う。


「かしこまりました。」

時空間魔法はイザベラさんのもとでたくさん見てきた。魔力の流れは完璧に覚えている。だから私はそれができるはずだ。


「超級第三位魔法、ヨグ・ソトース!」

時空の歪みが私たちを飲み込んだ。



「ヴァイオレット!」

「ギ、ギン様?」

「気が付いたか!」

さすがイザベラさんだ、ヴァイオレットの傷は完璧に修復されていた。ちなみに私は自分で全て修復した。回復魔法は魔力密度がそのまま回復力へ変換されるようで、絶唱が使えるのと使えないのではかなりの差があるように感じた。


「き、貴様ら!」

そう言って急にヴァイオレットが立ち上がる。が、すぐによろめいてしまう。


「よい、もうよいのだ。」

ギンがそういう。本当にそうだ、今回私が戦ったのは、ご主人様の思いつきに他ならない。正直私とヴァイオレットが戦う理由なんてこれっぽっちもないのだ。


「おい貴様、何か望みはないかとさっき言っていたな。」

「そうだ。なんでも言ってくれ。」

ご主人様はギンに問いかける。一体どのような要望をするのだろうか。


「その龍族の娘をよこせ。」

ヴァイオレットの方を見ながらそういう。


「な、ヴァイオレットはこの里の守護者だ。」

「こんな少女に守られている里など滅びて当然だろう?」

周囲の魔力密度が上昇する。これはお願いではなく、命令なのだ。それをわからないなんてことはないだろう。


「くっ……」

ご主人様の言葉が正しいと感じたのか、言葉を詰まらせてしまう。


「ギン様!私はこの里を守り続けます!」

ヴァイオレットがそう叫ぶ。


「貴様の存在が、この里の自衛力低下につながっているということがわからないのか?」

「ど、どういうことだ!」

「訓練をしなくても、結局貴様がなんとかしてくれると、心の中では皆がそう思っているということだ。」

「そんなことは……」

ない、とは言わなかった。きっとヴァイオレットにも思う部分があったのだろう。確かに彼女は強い。だがそれ以外の龍族はどうだった?少なくとも私には驚異となり得る存在は誰一人としていないように思えた。


「わかりました。」

その言葉を発したのはギンでもヴァイオレットでもなかった。


「ひ、姫様!」

「グルンレイド様、私を助けていただいたこと、深く感謝申し上げます。」

そう言って頭を下げる。さすが姫という感じで、とても様になっていた。


「姫様、なぜです!」

ヴァイオレットが悲しそうな顔で姫を見ている。


「私も、私たちも心のどこかであなたに甘えていた部分がありました。これを機会に私たちは、一つの集団として強くなるべきなのです。」

「ですが、私は……」

「ヴァイオレットあなたの気持ちはとても嬉しい。しかし、見ていてください。あなたの力を借りずに立ち上がるこの里の力を。」

先程の優しそうな雰囲気とは打って変わって、その表情からは強い意志を感じる。


「わ、私はこの里の守護者で……」

「守護者?笑わせるな。」

納得できていないヴァイオレットにご主人様はそのような言葉を投げかける。


「さも自分がこの里を守りきっているような言い分だな。」

「……なに?」

「私のメイドに負ける程度の強さで、こんな里など守れんと言っているのだ。」

ヴァイオレットは私を見る。確かに私に負けるくらいでは、例えばイザベラさんやご主人様がこの里を滅ぼすつもりで攻めてきたら、手も足も出ないだろう。


「私の元に来い。もとより貴様に選択肢などないのだ。」

そういうとご主人様は私の方を向く。


「ヴァイオレットを連れて、王都までこい。私は先に行っている。」

「か、かしこまりました。」

当初の目的は王都に行くということだった。ここで時間をかなり食ってしまったので、ご主人様だけでも先に行く必要がある。


「スカーレット、頼みました。」

「はい。」

イザベラさんもついていくことになるとは思っていたが、実際に私一人でご主人様の命令をこなすと言うことが初めてなので不安ではある。


「また来る。さらばだ。」

そういうと、イザベラさんの作り出した時空間魔法で人間界へ戻っていく。この場には私を含め四人が残された。


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