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極悪辺境伯の華麗なるメイド  作者: かしわしろ
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龍族編:始まり2

「止まれ、そこの人間!」

馬車の外からそのような声が聞こえた。賊だろうか。私は外に出て様子を見る。


「こんにちは。私はグルンレイドのメイド、スカーレットと申します。」

「今は話している時間がない!エリクサーをだせ!」

そう叫んでいるのは、傷だらけの魔物だった。……魔物?


「角に尻尾、竜族ですよ。」

同じく様子を見に来たイザベラさんがそういう。


「メイドだけってことはあるまい。お前らの主人を呼んでこい!」

「……殺しますか?」

「やめなさい。どんなものも殺してはいけませんよ。」

魔物は悪い存在だから別に問題はないのではないだろうか。いや、違う。さっきイザベラさんは龍族といっていた。魔物とは違うのかもしれない。確かにこんなに流暢に言葉を話せる魔物もいないだろう。


「私を呼ぶ声が聞こえたのだが。」

私とイザベラさんは後ろへ下がる。ご主人様が馬車から出てくる。


「その見た目、人間の貴族だな!死にたくなければエリクサーをよこせ!」

必死にそう叫んでいる。確かに普通の人間に比べると、この龍族の力はかなり強いだろう。しかし私たちと比べるとないようなものだった。


「殺します。」

「イザベラさん抑えてください……」

あまりにも無礼な言葉に、イザベラさんの表情が恐ろしいものになる。それを私が抑えるという先ほどとは逆の構図になってしまった。


「シンクロナイズ」

するとご主人様は何かの魔法を龍族にかける。


「姫様が死んでしまいそうです。助けるために人族が作るエリクサーが必要です。」

さっきまで必死の形相だったのに、急に静かになり淡々と語り始めていた。精神支配系の魔法なのだろう。攻撃魔法と違い、魔力の流れが生まれない。一体どのような仕組みなのだろうか。


「ふむ。」

ご主人様は何かを考えているようだった。


「用ができた。竜の里へ向かう。」

「かしこまりました。」

イザベラさんは間髪いれずにそう返事をする。しかし私はあまりにも急なことで、何が何だかわからなくなっていた。


「案内せよ。」

「はい。」

そう返事をすると、龍族は何かしらの魔法を唱えていた。魔力が周囲に広がっていくのが感じられる。空間転移魔法に似た魔力の流れをしていた。


「円の中に入ってください。」

ご主人様とイザベラ様が円の中に入る。私もそれにならって入った瞬間に、周囲の景色が変わった。

「こちらです。」

なんの説明もなしに龍族が歩き出す。ここはどこだ?さっきまで見えていた木々が見当たらない。周囲には広野が広がっていた。


ゴォォォォ


そんな音とともに、地面には巨大な影が映し出され、通り過ぎていく。


「な、なに!?」

私は驚いて上を見上げる。そこには龍が舞っていた。


「龍の里か。初めてきた。」

ご主人様がそういう。ここは龍の里というらしい。……空気が薄い。もしかしたらここは地上より遥か上空にある場所なのではないだろうか。そう考えていると、龍族が展開している円が浮かびだし私たちを運んでいく。やはり魔法操作に関しては、人間に比べてかなり優れているようだ。



しばらく飛んでいると、巨大な建造物が見えて来た。その周りには小さな家?のようなものがいくつかある。


「こちらが姫がいる場所です。どうか命をお助けください。」

巨大な建造物の前で止まる。そういえば龍族の姫の命を助けるためにここに来たんだった。しかし本当にご主人様はエリクサーというものを持っているのだろうか。


「止まれ、ナビル。此奴らは何者だ!」

「はい。この方は……えっと、あれ?」

「精神支配か!何者だ貴様ら!」

同じく龍族であろう人が、こちらに向かって叫んでいる。


「私の名はジラルド・マークレイブ・フォン・グルンレイドだ。」

「に、人間か!」

驚いた表情を見せ武器を構える。私もすぐに攻撃ができるように準備をする。


「侵入者だ捕らえろ!」

「いいのか?お前たちの姫が死ぬぞ?」

「なぜそれを……ナビルか……」

徐々に私たちのことが知れ渡ったのか、龍族が集まってくる。


「これはなんの騒ぎだ。」

する遠くから魔力密度の高い龍族が現れてそういう。


「ザン様、人間が現れました。」

「人間……」

そう言いながらこちらを睨む。


「何用だ。」

「姫がどんなものか見に来たのだ。」

……なぜご主人様は龍族の姫のことに意識を向けるのだろうか。極論別に無視してしまっても良かったのではないか?おそらくこれも崇高な考えがあってのことだろう。


「見ず知らずの人間を姫さまに合わせるわけにはいかない。」

「そうか、ならば私は帰ってもいいのだぞ?」

「くっ……本当に治せるのか?」

「それはわからんがな。」

人間の病気ならまだしも、龍族の病気はあまり想像がつかない。同じようなものだったら簡単に治せそうだが,おそらくそんなものではないだろう。


「……こっちだ。」

「ザン様⁉︎」

「狼狽えるな。このものが何か使用ものなら,私が始末する。」

周囲の龍族が驚く中,ザンという人はそんなことをいう。


「失礼な……」

その発言もイザベラさんには我慢ならないようなものだったらしい。短剣に手を駆けようとする。……普段は完璧なのだが、ご主人様のことになると途端にこうなってしまうのは玉に瑕だと私は思う。まあ、それもイザベラさんのいいところか。


「落ち着いてください。」

「……そうですね。」

短剣にかけた手と魔力を元に戻す。


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