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極悪辺境伯の華麗なるメイド  作者: かしわしろ
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柏城 春5

「何度も申し上げますが、ハルさんは寝るだけでかまいません。」

「私、寝つきが悪いほうなのでうまく寝られるかわかりません……」


この世界と異世界のつながりを観測する目的で、異世界人のハル・カシワシロ様をこの屋敷にお招きしている。リアとメルテの部屋で寝るそうだが特に問題はない。


「リアとメルテも気にせずに寝てかまわないからね。」

「はい。」

「分かりました。」

そういうと二人も自分のベッドの中に入っていく。


「それでは、お休みなさいませ。」

そういって私は部屋を出る。


「アシュリー、うまくいきそうですか?」

イザベラ様がそう声をかけてくる。


「見ないことには分かりませんね。」

私は観測者である。私の魔力を媒介とし、すべての事象に干渉することができる。そして干渉した事象のすべての情報を私は観測できる。特殊眼というわけではなく、生まれたときから私はその能力を持っていた。自分でも詳しい能力の使い方は分かっていないが。


「今回は、私、あなた、ヴィオラ、そしてミクトラで観測を行います。」

ということでイザベラ様の部屋へと向かった。ミクトラが来るとは意外だった。が、今回は魂の動き追うことを目的としているということだったので、ミクトラが来るのは必然のことなのかもしれない。


「天界の門の守護は……。」

「マークにやらせています。」

「マークさんの付き人は……。」

「コトアルです。」

マーク様もいろいろと大変である。そしてコトアルが付き人とは……だからヴィオラが不機嫌だったのか。でもヴィオラ心配しないで。確かにコトアルは従順でまじめで、そして規律を守る完璧なメイドだけど、あなたも負けてないよ。……これフォローになってる?


「集まりましたね。」

メイド長の部屋に四人が集まる。


「ヴィオラ、今頃マークさんとコトアルはうまくやってるかなー?」

「……っ!」

キッ!とこちらをにらむ。その瞬間私はさっと目をそらす。怖い。


「アシュリー、からかうのはやめなさい。」

「すみません。」

でもヴィオラって反応がかわいいからからかいがいがあるんだよね。


「でも二人が天界の門にやってきたときは手をつないでたよ。」

「ミクトラさん、それは本当ですか!」

反応がかわいい。マークさんは飛べないんだから、天界の門まで行くには手をつながないとダメじゃん。そこまで頭が回っていないようだ。帰ってきてからマークさんが質問攻めにあう未来が想像できてしまう。


「それでは始めますよ。ミクトラは姿を消してハル様のもとへ。」

「かしこまりました。」

それ以外の三人はこの部屋で観測する。ヴィオラの目が青くなったかと思うと、私の頭の中にリアたちの部屋の情景が浮かんできた。


『えー、リアちゃんってもともと冒険者だったの⁉』

『荷物持ちでしたけどね。』

三人で楽しそうに話をしているようだ。今のところ特に変わった様子はない。やはり完全に眠った状態じゃないと変化は起きないのかもしれない。だがハルさんは初めて寝るような場所ではあまり寝つきが良くないといっていた。これは時間がかかるな……。


『ハルさん寝られそうですか?』

『うーん、私あまり寝つきがいい方じゃないからね。』

『ゆっくりでいいですからね。私も初めての場所じゃ寝つきがいいほうではないですし、気持ちは分かります。深呼吸をすれば眠りやすいと聞きましたよ?……あれ?ハルさん?』


……寝ていた。いつでもどこでもすぐに寝られる私よりも早いんじゃない?それくらいのスピードで眠りについていた。


『ハルさん……。』

リアも驚きのあまり言葉を失っているようだ。


「ヴィオラ、何か変化は?」

「特にありません。」

神眼は異常を感じてはいないようだ。私も特に感じることは……⁉


「イザベラ様!時空の切れ目が生まれています!」

「ミクトラ!気を付けて!」

「はい!」

時空の切れ目は確かに神眼では見ることはできない。


「ハル様の魂が出てきています!」

私には見えないがヴィオラがそういう。


「確かに魂と肉体のつながりが薄くなってきています。」

ミクトラもそういうということは、ハルさんの魂が抜けそうになっているということだろう。


「……っ!魂が消えました!」

「時空の切れ目も消失しました!」

ということは時空の切れ目に魂が入っていき、閉じられたということになる。


「ミクトラ大丈夫ですか?」

イザベラ様がメッセージを飛ばす。


「……ミクトラ?」

ミクトラからの返事が返ってこない。


「ミクトラさんの姿が見えません……。」

「そ、そんな!」

時空の切れ目に巻き込まれた可能性が高い。その中に入ったとしても死ぬことはないが、戻ってこれないのでは意味がない。


「ど、どうしますか。イザベラ様!」

私には時空の切れ目を観測することができても、作ることはできない。


「……私の落ち度です。早急にご主人様に報告を。」

「かしこまりました。」

三人でご主人様の部屋へと向かう。


「ほう、ミクトラが時空の切れ目に飲み込まれた、だと?」

「申し訳ありません!私の失態です。」

鋭い眼が光った。ご主人様が真剣に考えを巡らせると周囲の魔力密度が上昇する。


「時空の切れ目か……どうすることもできんが、完全に消滅したというわけではないだろう。明日の朝まで様子を見る。それでも戻ってこなかったら、私が出よう。」

「かしこまりました。」

……明日の朝まで様子見か。本当にミクトラは戻ってくるのだろうか。心配で仕方がない。


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