ラジオ・アイソトープ ゲスト:flaming
ひとつ、昔話をしようか
悪魔がそう囁いた
振り向くな そこには何もないから
今背中で煌めいたのは 君が砕いた夢の欠片
今夜空で煌めくのは 誰かが砕いた夢の欠片
打ちのめされた世界を追う程に
傷だらけの僕の手にどんな意味があるのかを知る
―――お送りしましたのは、本日のゲスト地元出身四人組ロックバンド「Fleming」で【F】でした!
此処ではない何処かと何処かではない此処を繋ぐラジオ・アイソトープ。本日もスタートです!では、早速ゲストに登場してもらいましょうか?担当と名前の由来をお願いします。
佐藤晃吉(佐藤):名前の由来?面白い事聞きますね。じゃあ、俺から。こんばんはFlemingドラムの佐藤晃吉です。名前の由来はライブの楽しさを教えてくれた親友からです。次は、真央?
渋谷真央(渋谷):ギターの渋谷真央です。名前の由来はrock ‘in on japan編集長の渋谷さんから。後、画数が良かったです。
玉井恭慶(玉井):ベースの玉井恭慶です。名前の由来はアゲハスプリングスの玉井さんから。後、画数が器用貧乏と出たからだそうです。最後、航輔。
柳航輔(柳):ボーカルの柳航輔です。名前の由来は好きなバンドのボーカルの名前のミックスだそうです。後、画数が良かったから。
―――結構画数に凝ってるんですね
佐藤:そうなんですよ。俺らみんな本名なんですけれど、あんまり悪かったらゲンを担いで変えようと思って。そうしたら綺麗に「特殊画」と「器用貧乏画」にわかれました。
―――特殊画なのが
渋谷:僕と
柳 :オレです。
佐藤:器用貧乏画が俺と
玉井:自分です。
―――はあぁ
玉井:今、なるほどって思ったでしょ?思ったんでしょ?
―――いえ、バンドだけにゲンを担いだんだなーっと思っただけです。では、早速アルバムについてお聞きしましょう。デビューミニアルバム【F】ですが、収録曲は全部で九曲?
柳 :はい。曲数だけだとフルアルバムって言ってもいいんですけど、通しで聞くと三十分ちょっとなので、時間的にはミニアルバムかなーと。
―――タイトルが全部【F】から始まる?
柳 :はい。
【F】
female
forget-me- not
Flamingo
Fredrick
fiction star
Frank loid rightの天文観測室
Four
festivalがはじまるよ
です。
―――面白いですね。こういう編成にした理由は?
柳 :今、音楽って電子的に聞くことが多いでしょ?だからアルバムとして聞いて貰うにはどうしたらいいのかなって思って。頭文字が同じなら曲順に並べた時も、塊で聞いて貰えるなっと思ってこういう編成にしました。
―――勿論全部お気に入りだと思いますが、特に思い入れのある曲をそれぞれ教えてください
渋谷:僕はFrank loid rightの天文観測室です。 僕ら結成が中学二年生なんですけど、その時に候補に挙がったのがFrank loid rightなんです。凄くカッコよくてよかったんですけど、ちょっとカッコよすぎました笑そんな精いっぱい背伸びしたカッコよさが詰まってます
佐藤:Fredrickですね。これもバンド名に考えてたんですけど、ググったら先輩に居たので。小さい頃から好きな絵本のタイトルから貰いました。夢見るねずみちゃん、ってフレーズとか、真央のギターのぼわーんとした音とか、嵐の夜に見る夢のような楽曲です。玉井:詩人かっ。
佐藤:詩人ですよ。
玉井:自分はやっぱりFourですかね。凄く作るのに苦労したのを傍で見てますし、この時の気持ちをどうか、忘れないで行きたいと思います。
柳 :オレは【F】です。一番付き合いが長いから。曲として駄目だったらSEでもいいから使おうと思ってたんですけど、無事に入れられてすごく嬉しいです。
―――作ったのはいつ頃なんですか?
柳 :中学生の時ですね。一つ、昔話をしようか。から始まるのは決まってたんですけど、その後が続かなくて。深夜アニメを見ながら考えてました。
玉井:深夜アニメ見ながら?
柳 :過去を顧みるのは簡単で、楽しいんですよ。でも、そうしたら迷子になってしまうし。前見てないから。じゃあ、前を見た時に見えているものって、一体何なんだろうって。
渋谷:それで面白いんですよ。ある日通学路で割れてるカーブミラーを見た途端、わっと走り出したんですよ。
佐藤:音楽室に飛び込んできて
「砕けてるのは夢の欠片だったんだよ!」ってあれはびっくりしました。
柳 :うわー、まだ覚えてるんだ。もうやだ、忘れてください。
渋谷:僕らはずっと音楽が好きで、音楽に育ててもらいました。そんな好きだった曲へのオマージュも入ってますし、この曲かな?あの曲かな?ってイメージしてもらえたら嬉しいです。
―――では、綺麗におさまったところで質問を変えますね。今回皆さんデビューに寄せてタウン誌にそれぞれの時代のエピソードを掲載されてますよね。そのお話を聞かせてください。
柳 :オレはhunger dugで凱旋ライブをしてもらった時の事ですね。全然文章が書けなくて大変でした。
―――詩的な文章ですね。
柳 :森博嗣さんの「ヴォイド・シェイパ」シリーズをイメージして書きました。
玉井:デビュー直前のうん。まあ、あれですね。あまり書きたくない。好きな本は木地雅映子さんの「マイナークラブハウス」です。
佐藤:高校生の時の話を書きました。hunger dugでライブをさせてもらえるようになった頃の事ですね。俺もあまり小説を読む方じゃなくて。漫画は大好きなんですけれど。だから漫画のモノローグみたいな感じにしたいと思って書きました。
―――漫画お好きなんですね
佐藤:これを書いている時は『三月のライオン』と『ハイキュー』を読んでました。どっちも定期的に読み返したくなる本です。
渋谷:中高の学生時代を担当しました。思ったより長くなっちゃいました。文章は小路幸也さんのが好きで、よく読んでいます。
―――掲載された順番と、書き上げた順番は違うとお聞きしましたが?
渋谷:僕が最初で
佐藤:俺が二番目
玉井:三番目が自分でいいのかな?航輔は
柳 :オレが最後だと思うけど。
―――じゃあ、ほぼ時系列に沿ってるんですね。どうして順番を入れ替えたんですか?
柳 :初回がライブレポから始まるのは決まってたので、いきなり中学生に戻るのもどうかなって。歌詞が一つ、昔話をしようか。から始まるので、どんどん遡っていく形の方が面白いと思って決めました。
―――書きたかったけど、書けなかった事とかありますか?
柳 :幼稚園の話はしたかったなあ。
玉井:ジャケ写とかアー写の衣装。自分が選んで、妹と一緒に作ったんですけど、それは妹が書いちゃ駄目というので駄目でした。妹よー!何故だー!(絶叫)
一同:それが嫌だったんだと思うよ
―――フリーペーパーはバックナンバー含めて市内各所にて配布中です。配布場所についてはHPをご覧ください。またhunger dogのHPでも全文ご覧にいただけます。
では、ここで質問が来ていますので一つ。
皆さんは幼馴染だそうですが、出会った頃から変らずお好きなものを教えてください
佐藤:幼稚園からですかね。
玉井:んー、なんだろ
渋谷:あれじゃないですか。ひつじのぺこらちゃん。
玉井:中学生の時とかめっちゃいい声で歌うんですよ。部活で走ってる最中に。
柳 :好きだなんて、言ってないですよ。
―――え?
柳 :むしろ、大好きなんです!
一同:爆笑
柳 :いつか主題歌を歌いたいです。本当にです。よろしくお願いします。
―――では最後に。今後の目標を教えてください。
佐藤:夢は勿論グラストンベリーフェスティバルなんですけど、それ以上に一つ一つを丁寧に。自分達四人にも、周りの人達にも、丁寧に向き合っていきたいと思います。今回文章を書かせてもらった時も思ったんですけど常に100%の自分たちが出せるように、頑張っていきたいです。
玉井:もっともっと楽しんで
渋谷:うまくなるって自由になる事だと思うんです。だからもっとうまくなりたい
柳 :これからも応援よろしくお願いします。
―――ありがとうございます。では、お聞きいただきましょうか。玉井さんが選んだ衣装にもご注目のflemingで『Four』
SCENE2
ラジオ収録より数日後
二人の女性が向き合っている
「マネージャーの鞠村です。先日はお世話になり有難うございました」
「いいえ、とんでもない。こちらこそ面白いお話を聞かせて貰いました。聴取率も結構良かったんですよ。ラジコでのシェアも盛んですし。また何かの折にはお願いしたいので、もう少しお話を伺ってもいいですか?」
「もちろんです。彼らが高校生の頃からの付き合いなので、何でも聞いてください」
「結構長いお付き合いなんですね」
「そうですね。もう四年くらいになります。もともと私はhunger dugのスタッフなんです。今は彼らのマネージャーもしていますが、もう少しで手放すことになると思います。そうすると彼らとのお付き合いも一先ず、ですね。あ、名刺まだお渡ししてませんでしたね。鞠村です」
「ありがとうございます。ハンガードッグってワンちゃんじゃないんですね」
「ええ、hungerが飛行機の格納庫。dugが造船所です。二つくっつけてhunger dug。何処へでも好きに行けよーって思いでつけた名前です」
「出会ったばかりの彼らは、どんな感じだったんですか?」
「……とにかく動かない子達でした。普通命題が一つポーンと出たら、みんな一斉に。少なくとも誰か一人ぐらいは動くはずなのに。彼らは動かない。真央と航輔はずっとこっちに背中向けてるし、きょーちゃんに至っては」
「玉井君ですね」
「いつまでも皆に本名を覚えてもらえないんですね。恭慶がヤスタカだったかヤスヒロだったかわかんなくなっちゃってます」
「本当は?」
「ヤスタカです。きょーちゃんというあだ名は中学生の時に、漢字源を引いて決ったらしいです」
「はあ。中学生男子って、つくづく不思議ですね。それで、動かない彼らに対してどうしたんですか」
「だから、部屋をあげたんですね。いつでも楽器を弾ける部屋を。それでそこにいる様子を少しずつ見せて貰って、ああ。これが彼らのスタイルなんだと思ったら安心して。それからは彼らのペースを見守る事にしました」
「そうなんですか。ところで鞠村さんは今までにバンドのデビューを支えた事はあるんですか?ご自身も経験が?」
「もともとバンドは好きでした。追いかけて遠征行ったり。でも、弾く方では音感も努力もなかった。Fコードが弾けるようになった辺りで、誰とも、誰にも、聞かせない音楽に何の意味があるのかな。ってやめちゃいました。バンドのデビューはその前にfairgroundってバンドのサポートをしていて、ミニアルバム「fairground emergency」って言うのを作る所まで行ったんですけど、そのメンバーの一人が」
「まさか脱退?」
「いえ、お尋ね者になって、国外追放になっちゃったんですね」
(絶句)
「でも、もともとベースの女の子……世織ちゃんっていうんですけれど、彼女を中心廻っていたバンドなので、今はボーカルに据えて活動を再開しています。逃亡しちゃった男の子緋紅君も音楽を続けているみたいなのでいつかどこかで再会できたらいいなあ、と思います」
「なるほど。他に何か情報はありますか?」
「そうですね。アッキーは二十八歳の時に声優の女の子とドラムとピアノだけのデュオを組みます。航輔はバンド活動のほかに、他のアーティストへの楽曲提供を始めます。結構評判いいですね。真央は二十六歳で結婚します。相手は保育士さんで、生き倒れになっているのを救い救われたご縁だそうです。きょ―ちゃんは変わらずきょーちゃんのまま。でもデザインやアートワーク全般に興味を持って、勉強を始めます。ライブの演出も」
「―――え?」
「おや、喋り過ぎました。未来の事を言うと笑うのは悪魔でしたっけ?」
「……鬼、だと思いますけれど。そう言えば、鞠村さんは下の名前は何て読むんですか。もと……素にひにちようびの日で」
「ああ、すばる。と読みます。スバル星のすばる。まりむらすばる。友人たちは縮めてマリス、と」
「……マリス、ですか」
「ええ」
「未来の事がわかるなら一つ。彼らはグラストンベリーへ行けるんですか?」
「それは、全部語ってしまうと面白くないですからね。まああ、彼らの事ですから、諦めてなんかやらないと思います。代わりと言っては何ですが、過去の事ならいくらでも………
一つ、昔の話をしましょうか」
マリス:悪意「フランス語」
:海の「ラテン語」
ステラ・マリス:聖母マリア「ラテン語」




