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時間泥棒

作者: 名無しの権兵衛

○○○○年、○○国。今年も恒例の季節がやってきた。大学を卒業した無垢な若者達がシャカイという荒波に立ち向かっていく。彼・彼女らは卒業する前年からシュウカツという宗教じみた儀式に参加する。右も左も、見渡せばお揃いのスーツを着飾っている。まるで、大昔の社会主義国家の支給品のようだ。そして、急ごしらえの黒髪。普段は大学生として茶髪やド派手な色で自己主張しているが、シュウカツという儀式にはシャカイジンとして黒髪という見えない暗黙のルールが存在している。但し、○性に限っては何故かそこまで厳密ではない。大学では、一日の授業時間は多くても5~6時間ほどだろう。いざシャカイに放り出されると、根拠無き8時間労働が待っている。冷静に考えてみよう。大学生たちが一月ないし二月日付が変わっただけで8時間も労働できるのだろうか? そもそも、8時間労働は法律で決まっている時間では無い。その上、始業時間は不可侵の神様のように崇められている。ところが、終業時間はまるで生き物のようにその日によって動き続けている。始業時間を1分でも過ぎた場合、遅刻とみなされ給料から罰金のようにお金が逃げていく。かたや、終業時間を1分過ぎても帰り支度をする社員は不思議なほど少ない。それどころか、その時間から会議が始まることも稀ではない。○○国では、一般的に〈会社の仕事〉が最優先事項としてシャカイに馴染んでいる。その様な環境で残業三昧の働き方をしていると〈考える〉ことが難しくなる。残業が当たり前、8時間労働が当たり前、仕事優先が当たり前。それらについて少しでも疑問を持つと、○○国のシャカイでは怪訝な顔をされるだろう。なぜ8時間も働くのだろう? 誰も教えてくれない。「昔から決まっているから。」「生活するため為に。」「やりがいを求めて。」「家族を養う為に。」人によって理由は様々だ。しかし、シャカイに放り出されるとあっという間に月日は流れていく。多くの先人が言うように年を重ねるほど、時間の流れは加速する。おおよそ20代までは黄金の時代とも言えるほど輝きに満ちている。先人たちは知っている、二度と帰ってこない時の儚さを。会社は労働者が貴重な時間を差し出す代わりに、僅かばかりの対価を差し出す。歴史学者によれば、大昔の狩りを生きた時代の人々は週15時間ほどの労働だったそうだ。(その日の分だけ狩りをし、貯蓄をしない為)また、1900年代前半にイギリスの経済学者は未来を予測し、将来の人々は週15時間労働になるだろうと予測した。しかしながら、その予測は良くも悪くも外れた。会社で働くということは、あなたが大金持ちではない限り数十年に渡って働き続ける必要がある。まるで、コロコロ回り続けるハムスターのように。誰か、この儚い時間を止めて頂けないだろうか?

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