ブレインストーミング
「私からの依頼だ、
今日入部したこの成弥だが、彼は最近欠席や遅刻が多く、授業も真面目に受けていない、更に話を聞くと呆れる程意識が低かった。なのでこの部活で色々な事を経験させて更生させてやってほしい」
「ふむ、では成弥君いくつか質問してもいいかい?」
君付けに変わってるし…
「いいけど、あと別に成弥でいいよ」
「分かった、じゃあ成弥、君の趣味は?」
「帰って惰眠を貪ること」
「学校から帰ったあと何してる?」
「ご飯を食べて風呂に入って寝る」
「最近のニュースの中で興味深かったものは?」
「ニュースどころかテレビをここ10年間見てない」
「去年の思い出深かった行事は?」
「特になし」
「これは重症ですね」
「はぁ、そうかい」
「この部活に入ったきっかけがあれば」
「前田先生に無理やり」
しかし、こいつ質問の時に手を回したり広げたりするのがやけに鬱陶しいな……
「前田教諭、わかりました、その依頼コミットしましょう、みんなもそれでいいな?」
「アグリー」
「アグリーです」
アグリー?ああ、agree のことか、確か賛成っていう意味だったような…
それにしても部員すら横文字使ってるってことは
この部活相当意識が高いんだな…
いつぞやの頃か、ネットで見たことがある
意識高い系の人はなんとかかんとか…
と、物思いに耽っていると部長がパンパンと手を叩いた。
「じゃあまず、依頼の解決のためにブレストから始めようか、どんどん意見を出し合ってくれ」
ブレストってなんだ?聞いてみよう
「あの、ブレストってなんですか?」
聞くと
「ブレインストーミング、略してブレスト
様々な意見を出し合って発想の幅を広げるの」
と新海が言い
「ブレストではどんな意見も否定してはダメなんですよ」と雨野も追随して答えた。
「成弥君、あなたはテレビは見ないと言ったけれど、スマホなどでネットはするのかしら?」
「必要があればしますけど、ほとんどしません」
「なるほど、では、私の意見です、
彼はテレビやネットを使わない、いわゆる情弱です、なのでまずは、それを矯正しては?」
矯正って…しかも情弱ってなんだろう
disられてるのかな…
「確かに、アグリーだ。雨野はなにかあるか?」
「私もアグリーです。そうですね、私も新海先輩と同じで自分で情報を模索する段階まで持ち上げていきたいです」
「「アグリー」」
「僕は、ゲーミフィケーションなどで楽しく情報の共有などをして行きたいね、楽しくなかったらやる気も意識も落ちていくからね」
「「アグリー」」
その後も3人で色々長ったらしく横文字を
はいはいアグリーアグリー
長ったらしい言葉や横文字を聞いてると眠くなってくる。すると、こちらを見て部長が
「成弥はなにか意見あるか?」
と聞いてきた、あるわけないだろ…
「特には」
「こういう、ミーティングには積極的に参加しないとダメだよ、意識低いままになるよ」
うぜぇ…そもそも無理矢理入らされたって
言っただろうが……
仕方ないから意見ひねり出すか…
「とりあえず形から入るのはどうだ?
さっきから言ってる横文字を何回も使えば意識高くなると思うんだが、それと、こんな会議いつまでもしてたら日が暮れるぞ今日は終わろう」
「さっきも言っただろう?ブレストはどんな意見やアイデアも否定してはダメなんだ、だから君のは適していない。他の意見をくれるかな?」
いや、お前俺の意見否定してんじゃん
しかもさらりとスルーされたし…
すると、扉が空いて前田先生がやってきた
「手こずっているようだね」
「はい、上手くまとまらなくて」
「ふむ、成弥君はどう思う?」
「意見を出し合うだけで纏めようとしないんですからそりゃ上手くいかないですよ。僕がなんか言ってもスルーされるし……」
「それは君の意見が適していないからだ」
「ブレストは意見を否定しないんだろ?じゃあこっちの意見『会議を終わらせて明日に持ち越そう』っていう意見も否定するなよ、それとも適していないと否定は違うっていうのか?」
「まあまあ、2人とも落ち着きたまえ、私の方は彼に意識の向上を求めているから方法はどんなものでもいいんだが…君達が普段やっていることを
彼に強制させればいいんじゃないのかね?
最初は嫌がってても慣れれば解決するさ」
「なんて適当なんだ、でもそれで会議が終わるならそれで」
「こちらも一応了承しました。成弥の意識更生に尽力を尽くすことだけは変わらないので」
そして、今日の部活は終了し、
俺は帰路についた…
天宮…意識低いことが悪であるかのように判断しやがって…。意識高い系がいつも正義とは限らないのに…そして俺はぽつりと呟いた
「意識が低くて何が悪い」
全てを見渡してみると自分でも何書いてるのか分かりませんでしたm(_ _)m
疲れは敵、癒しが( ゜д゜)ホスィ…