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かつて英雄と呼ばれた男は  作者: 水無月 霊華
村での生活
2/23

前世の記憶

「嘘だ。あの方々は、まさか…。」


 俺は無意識にそう呟くと同時に、急激な頭の痛みに襲われてそのまま意識を失った。


☆☆☆


 まずは俺の事について話そう。

 俺の名はインシオ・フレンシー。

 スーザン公国の片田舎にあるリンゼ村で生まれた子供でセイン母さん、エミリオ父さん、三歳年下の弟のレオンと妹のエミリとの五人家族だ。


 俺は農家の長男として生まれて、将来は父さん達のあとを次ぐために農業の勉強を頑張っていた普通の子供だった。


 つい先程、初代皇帝祭のパレードで前世の知り合い達を見て(前世)の記憶を思い出すまでは。


 そう、俺は頭の痛みで意識を失い、次に目覚めた時には前世の記憶を思い出していたのだ。

 俺の前世はあの有名なお伽噺(とぎばなし)に出てくる英雄、ダンテ・ローザリオンその人だ。

 前世を思い出したからこそ分かることだがあのお伽噺は三千年前にあった実話だったらしい。


 別に俺は転生したこと自体には驚いていない。

 魔法という不思議な力がある世界では何でもありだと思うからだ。


 だが、転生について一つだけ俺にとっては不幸なことがある。この世界には俺の前世の知り合い達、いや、(元)仲間達?も転生しているらしいのだ。

 俺は前世、戦争が終結すると同時に姿を消した。理由は簡単。好きな女性と結婚するためだ。

 うん?何故結婚するために姿を消す必要があったのかだって?

 そんなの決まってるだろ!(元)仲間達の異様な執着から逃げるためだよ!

 何故かは分からないが前世の俺はモテた。そう!とにかくモテた!男からは!

 言っておくが俺は女性が好きだ。そっちヘの興味はこれっぽっちもない。なのに男にモテたんだ!し・か・も・男との関係をもつ者は忌避されていたにも関わらずだ!

 俺の気持ちがわかるか!?好きな女性が出来てもことごとく邪魔され、結婚はおろか付き合うことすら出来なかった。俺の気持ちが!

 だが、そんな中でも俺は俺を愛してくれる女性を見つけることが出来た。だから戦争の終結と同時に二人で姿をくらましたんだ。

 その後の生活は楽しかった。決して裕福ではないけれど田舎での幸せの暮らしを送ることができた。子供も二人産まれた。

 二度目の出産で嫁には先立たれてしまったが子供達がいたから辛い時期も乗り越えられた。


 そして数十年が経ち、俺も年老いてもうすぐ死ぬ、という時だ。

 家に突然(元)仲間達がなだれ込んで来たのだ。

 今思い出しても恐怖だ。俺への執着はまだ消えていなかったらしい。


 そしてその時、アイツらが死にゆく俺になんて言ったと思う?


「ダンテ、やっと見つけたよ。君は私達から逃げたんだね。今世では捕まえられなかったが、もし、来世があるのなら今度は逃さないから。覚悟していなさい。」


 こう言ったんだ。年老いて、もうすぐ死ぬ、というやつにだ。どう思う?怖いだろ?俺は怖かった!


 だから俺はアイツらに見つかるわけにはいかない!

 今世も逃げ切ってやるんだ!







 この時、俺は七歳だった。

 そう、俺、インシオ・フレンシーは若干七歳にして今世での目標を『前世の(元)仲間達から逃げ切る!』という、悲しいものに決めたのだった。はぁー。





















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