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かつて英雄と呼ばれた男は  作者: 水無月 霊華
第一魔法学院 
17/23

出発の前準備

 翌日、全ての準備を整えた俺達は、家のロビーで迎えが来るのを待っていた。

 今は椅子に座ってエミリと二人で話をしている。そして少し離れた場所では、レオンがリオとルゼから何か聞いていた。


「お兄ちゃん!学園ってどんなとこだろ?」

「うーん。俺も行ったことないからわからないな。迎えの人に聞いてみる?」


 エミリの元気な声に微笑みながら、俺は首を傾げでそう提案する。だがエミリは少し考える様子を見せて首を横に振った。


「ううん。それはやめとく!着いてからのお楽しみにする!」

「そう?エミリがいいならそれでいいよ。」

「うん、それがいい!楽しみは後にとっておかなくちゃね!…………………下手に話しかけたりしたらお兄ちゃんが目をつけられそうだし」

「え?何て言っ」

「レオン!そろそろ戻ってきなよー!!」


 最後の方の声が小さくて聞こえなかったので聞き返そうとすると、それより早くエミリがレオンに声をかけた。故意に言葉を遮られたような気もしたが、エミリに限ってそれはないかと考え直して質問の続きをするのはやめる。

 呼ばれたレオンはわかったと返事をすると、話を切り上げてリオ達とこちらへ戻ってきた。

 3人で何を話してたのか気になった俺が何かを聞くより前に、スッと立ち上がったエミリがレオンの服を掴んで引っ張っていく。


「レオン、ちょっとこっち来て!」

「え?何だよいきなり。って、引っ張るなっ!行くから!服が伸びる!」


 ワイワイ言い合いながら離れていく二人に俺は少し疎外感を感じながら、レオンと話すのは諦めてリオとルゼに視線を向ける。

 二人は何か話し合っているようで声は聞こえるが、内容はよくわからない。でもすぐ終わりそうな雰囲気ではないので、俺は立ち上がってエミリオ父さんとセイン母さんの所へいくことにした。

 すぐ側まで近づくと、二人の手元が見えて何かを作っている事を知る。

 

「父さん、母さん。それは何?」

「これか?これは御守だよ。お前達三人と村長のとこの子供達の分だ。」


 気になって尋ねると、エミリオ父さんからあまり馴染みのない答えが帰ってくる。

 用途は知っているが、なぜ今作る必要があるのかと不思議に思う。


「御守?」

「うん、そうだよ。学園では何があるか分からないし、第一魔法学院は貴族が多いから心配でね。」

「ふーん。そうなんだ?」


 セイン母さんの言葉に納得はしたが、少し過保護ではないかと釈然としない思いを抱く。

 まあ有り難い事に変わりはないから大人しく受け取るが。

 というか、危うく聞き流しそうになったが、何か驚く事を言われたような…。

 いや、まさかな。聞き間違えだよな。もう一回確認しよう。


「ねぇ、今リオとルゼが第一魔法学院に行くって言った?」

「ああ、言ったが。それがどうかしたか?」


 聞き間違えじゃなかった!


「い、いや。何でもないよ。じゃあ俺はリオ達の所に戻るね。」

「ん?ああ。」


 エミリオ父さんは様子のおかしい俺に不思議そうにしながらも頷く。

 それを確認すると、俺はリオ達の元に早足に近づいて二人の腕を掴むと、両親から離れた場所まで引きずる勢いで連れて行く。

 

「お、おい。どうしたんだよ。」

「何でもないよ、リオ。少し大人しくついてきてね。」

「え?どうしたのよ、イン。怖いわよ。」

「本当に何でもないよ、ルゼ。でも俺達は少し話し合うべきらしい。」

「「――え、まさか。」」

 

 怪訝そうに俺の顔を覗き込んでいた二人は、その言葉で全てを悟ったらしい。掴んだ腕を離した後も黙っている二人に、優しく微笑みかける。

 

「さあ、話してごらん。きちんと言い訳を聞いてあげるよ。」

「「――っ!」」


 二人は俺の言葉に顔を青褪めさせた。何となく罪悪感が湧いてくるが、今は問い詰めなければないらないとそれを無視して二人がどんな反応をするのかを待つ。


 だがそれから暫くしても二人は黙り込んだまま、何かを話す様子はなかった。

 顔を青褪めさせたままので、少し脅かしすぎたかと俺は仕方なくこちらから話すことにした。


「二人共、俺は怒ってないんだよ?ただ何で入学の事を黙っていたのか知りたいんだ。教えてくれないかな?それとも俺には言えないことなの?」


 俺はわざと困った様な表情を作り問いかける。

 二人はそれが演技だとは気づかない。

 何故ならそれは必然で、俺は記憶を取り戻してからずっと、日常で演技をし続けてきた。ダンテと同じ人格・仕草では、元仲間達には絶対気づかれる。それを分かっているからこそ、ダンテとしての本質は変わらぬままにインシオとしての人格・仕草を創り出したのだ。

 まあそういう意味では、演技ではなく二重人格であると言い換えることもできるかもしれないが。


 そして勿論そんな事を知るはずもないリオとルゼの二人は、俺の表情にすっかり騙された。

 まず最初に、慌てた様子でリオが言葉を切り出す。その慌てように少し苦笑しながらも、俺は話を聞く姿勢をとった。

 

「ち、違う!ただ、その、インが、その…」


 俺は静かにリオの言葉を聞いていたが、たどたどしい話の途中で出てきた自分の名前に驚いてキョトンと首を傾げる。

 え?何でそこで俺の名前が?

 そう思った俺の疑問に答えるように、すぐに声が上がった。


「あ〜もう!まどろっこしい!そうなの!インが学院を嫌ってるみたいだから、言ったら反対されると思って今まで黙ってたの!ごめんなさい!」


 何かが吹っ切れたらしいルゼが、リオの言葉を引き継ぐように話しだしたのだ。

 突然の事で俺はその勢いに若干引きつつも、成程とその理由には納得を返す。

 そしてそれと同時に疑問に思った。

 俺の学院嫌いはそんなにわかり易かっただろうか?と。隠すつもりもなかったが、嫌悪感を表に出したことはないはずだ。

 

 だがそんな俺の内心を知ってか知らずか、もう話は終わりだという風にルゼはそっぽを向く。リオもいつもの元気は何処へやら、うつむいて黙ったままだ。


 二人のその様子にそれ以上聞き出すのを諦めた俺はこの場の重い空気を変える為、故意にいつも通り振る舞う。 


「二人共、気を使わせてごめんね。二人で決めた事なら俺は何も言うつもりはないから安心して。さあ、そろそろ向こうへ戻ろう?母さん達が渡したい物があるらしいんだ。」


 俺の様子からこれ以上聞かれる事はないと悟った二人は安心した様に表情を緩める。一度お互いに顔を見合わせると、俺にわかったと頷いて母さん達の方へ歩き出す。

 それを後ろから眺めていた俺は、ずっと向けられていたレオンとエミリの心配そうな視線に大丈夫だと返してゆっくりと二人の後に続いて歩き出した。

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