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かつて英雄と呼ばれた男は  作者: 水無月 霊華
帝国への旅
13/23

二度目の招待

 この大陸の教会は、創造神ガノスという神を信仰している。

 元々教会は、皇帝を守る聖騎士という騎士達を育てる施設だった。それがいつしか多くの人々へ門徒を開き、今では聖騎士を育てるだけでははなく、病気や状態異常の治療・回復、身分証明書の発行など、色々な事を行っている。


____________________



 あの後、俺と父さんはセイン母さんに教会へ行くことを伝え、レオンとエミリを起こして宿を出た。

 

 そして現在は、教会の礼拝の間という所へ来ていた。


「今回は呪いの解除と身分証明書の発行だけで良かったでしょうか?」

「はい。それだけでいいです。」


 セイン母さんが教会の人と話している。

 俺はそれへ聞き耳を立てながら、礼拝の間を見回す。礼拝の間には、大きな像と祭壇しかなかった。像は恐らく創造神だろう。なんとなくあいつに似ていない気もしないでもないが、きっと気のせいだ。


「では最初に身分証明書を造りましょうか。」

「はい。」


 どうやら母さんとの話は終わったらしい。司祭様がこちらに近寄ってくる。


「皆さん。今から身分証明書を造ります。祭壇の前に膝をついて祈りを捧げて下さい。創造神様が認めてくだされば、銅・銀どちらかのプレートが現れるはずですから。」


 俺はそう説明を受けて頷く。レオンとエミリもしっかりと頷いているから理解できているようだ。


「ではお願いします。」


 俺達は司祭様に促されて祭壇の前に膝をつき祈りを捧げる。

 

(創造神様。どうか私に身分証明書を与えてください。)


 そう心の中で呟いた瞬間。俺は強烈な光を浴びて、意識を失ったのだった。


✽✽✽


「………ん……。」


 俺は一面真っ白な空間で目を覚ました。

 この状況はあの時と似ている。というか、ほぼ一緒だ。魔力の使いすぎて気絶したか、光を浴びて気絶したかの違いだけだ。


(おい、お前なんだろ自称神。出てこいよ。)


 俺は何もない空間へと呼びかける。

 前回がアレだっただけに、早速取り繕う気もなかった。


『二度目となるとやっぱ驚かないか。まぁお前だし仕方ないな。って、自称神とか言うな!俺は本物の神様だ!』

(自称神。何で俺をここに呼んだんだ?早く元の世界に戻せ。)


 自称神の呟きを丸無視して、俺はそう言う。相手するのが面倒だったから。

 

『無視するなよ…。はぁ。お前はそういうやつだよな。』

(……で?俺をここに呼んだ理由は?)


 俺は面倒くさいと思いながら問いかける。一刻も早く帰りたい。


『まぁ、そう急かすな。今から話す。…まず、お前をここに呼んだのは俺の加護を与えるためだ。契約を結んだのに加護を一つも与えないんじゃ意味ないからな。』

(……………は?)


 俺は自称神の予想外の言葉に間抜けな言葉を返すことで精一杯だった。


(……何だと?契約を結んだ?いつ?)


 俺は信じられない、と呆然と呟く。


『いつ?うーん。確かお前と最初にあった時、お前がこの空間を出る直前だな。』


 別に質問したつもりはなかったが、自称神が勝手に答えてくれた。

 そして俺は知らされた真実に、怒りが湧き上がってくる。


(ふ、)

『ふ?』

(ふざけんじゃねぇ!!)


俺は今出る最大限の大声で叫んだ。


(なんのつもりだ!?俺はこの前断ったよな?)

『あ、ああ、そうだな。だが、これから先のことを考えたら、お前は俺と契約した方がいいと思ったんだ!』  

(これから先のこと?一体どういう事だ?)

『それはだな。お前が十五歳になったら、魔法学院へ入学しなければいけない事は話したよな?』


 俺は自称神の問いかけに一度頷く。


『お前がその学院にそのままの姿で入れば、恐らく一発で気づかれる。その時、俺の加護を持っていれば、学園でのお前の姿を変える魔法を使う事が出来るようになる。どうだ?悪い話ではないだろう?』


 自称神はどうだ!と言わんばかりの顔でそう言った。反射的に殴りたい衝動に駆られたが、今回は無理やり抑え込んで自称神の話について考えてみる。

 確かに悪い話ではない。それどころか、俺にとってはありがたい話だ。ただ、もし本当にこいつが神なら、契約の事を他の人間に知られた場合のリスクが大きすぎる。さて、どうしたものか。


『あと、お前が加護を受けた場合、お前の血縁にも僅かながら加護がいくぞ。』

(っ、本当か!?)

『あ、ああ。』

 

 俺は自称神の口から零された言葉に、思いっきり食いついた。自称神が引いているが、そこは気にしない。

 そんな事より、俺があいつらに見つかった場合の保険が欲しいと思ってたんだ。神(多分)の加護。これはいいかもしれない。


(いいだろう。お前の加護。受けてやる。契約の件も許してやる。)

『本当かっ?』

(但し、条件がある。俺の血縁者にも、ある程度の加護がいくようにしろ。)

『ああ、分かった!』


 俺はニヤリとほくそ笑む。

 この際、契約は諦めて家族の安全を確保する。これで保険はかけた。あいつらに見つかった場合の逃亡の準備もやはり勧めておくべきだと思っていたんだ。これで準備の一つは整った。


(じゃあ、早く加護とかいうものを与えろ。そして早く俺を戻せ。)

『ああ、分かった。ならまず俺の手を握れ。』

(………は?)

『あ、別に深い意味はないからなっ!加護を渡すのに、体の一部に触れなくてはいけないんだよっ!』

(ああ、そういう。)


 俺は慌てて説明された内容に納得して、大人しく手を差し出した。


『よし。始めるぞ。準備はいいな?』

(ああ。)


 俺はなんの準備をするんだよ。と思いながらも頷く。目を瞑れと言われたのでその言葉にも大人しく従った。

 

『《我、創造神ガノス。この者に我が永遠の加護と愛を与える。この先のこの者の栄光と幸福を願おう。》』

 

 神の言語とか言うやつなんだろうか?俺にはこの自称神の言った言葉が聞き取れなかった。ただ、言葉を言い終わった直後に、俺を柔らかい光が包み込んだ感覚があった。とても気持ちよくて落ち着く光で、俺の疲れた心を癒やしてくれた。


『よし。これで終わりだ。』


 心地よい光の余韻に浸っていた俺の耳に、自称神の言葉が聞こえた。

 俺は少し名残惜しく感じながらも、瞑っていた目を開ける。


(終わったのか………。……なら早く返してくれ。)

『ああ、分かってる。何かあれば俺をすぐ呼べ。助けてやる。……じゃあな。』

(ああ。その時があれば頼むかもな。)


 俺は自称神の言葉に苦笑して返事をする。そしてすぐ、俺の体は光に包まれ不思議な空間から外へ出たのであった。

 

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