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かつて英雄と呼ばれた男は  作者: 水無月 霊華
帝国への旅
12/23

父さんとの会話

 次に俺が目を覚ましたのは、昼を少し過ぎた頃だった。良くは覚えていないが、セイン母さんと話したのは朝のようだったから結構長く寝ていたらしい。

 まぁ、まだレオンもエミリも寝てるがな。この二人も疲れていたんだろう。まだ七歳なのにあんなに走り回ったのだから、それも仕方のないことか。

 俺は二人に少しの申し訳なさを感じながらも、今考えても仕方ない事と思考を切り替える。

 そういえば、エミリオ父さんに話す事があったな。父さんを探すか……。

 俺はそう思い立ち、レオンとエミリを起こさないようにそっとベットを降りて部屋を出ると、階段を降りた。


「あ、エミリオ父さん!」


 エミリオ父さんは案外簡単に見つかった。どうやら酒を飲んでいたらしく、今は机に突っ伏して寝ている。宿の女将さんが、エミリオ父さんと呼んだ俺を身内と判断したようで、困った表情で見てきた。

 俺は小さくため息をつくと、父さんに近づいて揺さぶる。


「エミリオ父さん、起きて。ここで寝ていてはご迷惑になるよ。」

「……ん〜?………」

「…起きて!父さん!」

「……ぐぅ……」


 一度目よりも強く揺さぶって耳元で叫ぶ。だが起きない。

 俺は仕方なく、強硬手段にでる事にした。


『ウォーター』


 俺がそう唱えた途端、エミリオ父さんの上に水が発生し、そのまま落下した。

 え?優等生として親に水をかけるのはどうかだって?・・・いいんだよ!エミリオ父さんだし!

 それにウォーターは生活魔法とよばれるものの一種で、何もない所に水を出すだけの魔法だ。

 まぁ、水を出すだけの魔法でも上から落とせば少しは威力がでるがな。

 

 バシャ!


「…んう!?」


 ほら、起きた。


「おはよう。エミリオ父さん。ここで寝るのは邪魔になるから、場所を移動しようよ。」


 俺はニコニコ笑いながらそう言う。

 


「……インシオ〜。お前〜。」


 エミリオ父さんは何故か怒った様子だ。寝起きでそんなに怒ると血圧上がるよ?まぁこの世界に血圧の概念なんてものがあるかは分からないけど。


「うん?何?」

「もう少しましな起こし方はなかったのか!?」


 だってエミリオ父さん、どんなに揺らしても起きなかったじゃん。


「えー。起きない父さんが悪いよー。」

「・・・・。」


 俺は至極当然の事を言ったのに、父さんは何処か不満そうな表情だ。 

 だがまぁ、今はそんな事を気にするよりも、先に話をしなくちゃな。


「父さん。今から時間取れる?話したい事があるんだけど。」


 俺がそう言うと、父さんはさっきまでのだらけた様子が嘘のように、表情を真面目なものに変えた。


「ああ、時間なら大丈夫だ。俺もお前に話しおかなくてはいけないこともあるしな。」

「そっか。じゃあ……父さんの部屋に行こうか。」

「そうだな。移動しよう。」


 父さんは席を立って階段を登っていく。俺もその後に続いた。


 


 部屋に着くと、俺と父さんは早速話し始めた。


「先にお前の話を聞こう。俺の話はその後でいい。」


 その言葉に俺は頷く。


「…セイン母さんからもう話は聞いていると思うけど、今日俺達は、空間魔法が使える男に助けられたんだ。」

「ああ、そうらしいな。」

「……うん。それで、さ。その男は恐らく貴族だと思うんだ。」

「……どうしてそう思った?」

「魔力を、持っていたから…。それに従者らしき人も一緒にいたんだ。」


 それに、それだけではない。俺が反射で空間魔法が使える様になる直前に感じたあの悪寒は、本物だった。俺が悪寒を感じたという事は、俺より強いということ。そして今捕まれば、これから先、一生逃げられないだろうということだ。

 俺の勘は良くも悪くも外れない。そう。絶対に。

 

「魔力に従者、か。もう確信してるんだろう?その男が貴族だと。」

「……うん。」

「そうか…。なら隠しても仕方ないな。どうせ話すつもりだったし。お前があったその男は、恐らく公爵だ。」

「・・・・。」


 は?まさかの公爵サマ??……マジかよ。


「お前が驚くのも無理はない。だが、この大陸に空間魔法を使えるのは四人だけ。しかも全員地位の高い方だ。」

「……そう、なんだ………。」


 え〜!!最悪!そんな奇跡いらねぇよ!


「インシオ。お前はどうしたい?」


 どうしたいって。何を?


「え?」

「お前には、3つの選択肢がある。」

「3つの選択肢?」


 何だそれは。


「一つ目に、このまま最初の予定通りの日程で帝国を観光すること。二つ目に、助けて頂いた公爵閣下に直接お礼に行くこと。最後に、用事を今日中に済ませて、帝国を出ること。」


 二はもちろん却下だ。一でもいいが、あの男には二度と会いたくない。

 だとしたら、


「最後のがいい。」


 俺は父さんを見つめて、そうはっきりと口にする。


「そうか。」


 父さんは、お前ならそう言うだろうと思ったよ。と言って笑う。

 

「じゃあ今から行くぞ!もう昼だから急がないとな。」


 父さんは急いで席を立つと着替え始めた。そういえばさっき水を被ってからずっとそのままだった。流石に教会へずぶ濡れの格好では行けないだろうな。

 

「よし!行くぞ!」


 俺が考えている間に準備は終わったらしい。俺はその慌ただしさに苦笑を浮かべる。


「お前はその格好のままでいいのか?」

「うん。大丈夫。」


 俺は頷いて席を立つ。

 さぁ行こうか。呪いを解くために、そして一刻も早く帰るために。教会へ。

 



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