両親の話し合い エミリオ視点
今回は他者視点のため短めです。
「それはケーリッヒ・ルーデンハウスだな。」
「…………やはりあの方ですか。」
「ああ。」
俺は頷きを返しながらも、面倒な事になったとため息を吐く。セインも俺と同じ気持ちなのだろう。目の前からため息が聞こえてきた。
俺は今聞かされた話を思い返す。
インシオは怪しい二人組の男の一人が空間魔法を使ったと言ったらしい。この国、いや、この大陸で空間魔法を使えるのは四人しかいない。
まず、一人目にこの大陸を治めている皇帝陛下。二人目は皇帝の第三子であり、皇太子でもある皇子殿下。三人目は皇帝陛下に使える宮廷筆頭魔術師長。そして最後に、帝国の筆頭貴族であるルーデンハウス公爵家の現当主だ。
この中で最初に上げたお三方は、ほぼ毎日王宮に縛り付けられて仕事をしているような方々だから、まず有り得ない。そうなると、可能性は忙しいが初めのお三方よりも自由があるルーデンハウス公爵に自ずと絞り込まれる。
「エミリオ、どうしましょう。インシオは絶対目を付けられましたよ。」
「ああ、そうだろうな。あの方がインシオのような人材を見逃すはずがない。」
そう、今代のルーデンハウス公爵はやり手として有名で、まだ若い優秀な人材を探していると聞いたことがある。
そんな方が、インシオのような見目が良く、頭の回転も早く、その上魔法まで使える子を見逃がすわけがない。
「はぁ、困ったな。」
本当に困った。これでインシオに野心があれば別だが、俺が見た限り、貴族というものを逆に避けているように見える。
「インシオに一度説明しよう。その上で、インシオの意思を確認した方がこの先の事も考えやすい。」
ここで悩んでいる時間も惜しい。インシオがもし嫌だというのなら、今日中に用事を終わらせてこの国を出たほうがいいだろう。
「ええ、そうですね。答えを子供に委ねるのはあまり気乗りしませんが、今回は仕方ないですね。」
「ああ、今回は仕方ない。時間がないからな。じゃあ、俺はちょっとインシオに話してくるな。」
「あ、待ってください。」
俺が二階に向かおうと席を立った所で、セインに引き止められた。
「今は恐らく寝ていると思いますよ。レオン達を行かせましたから。」
「そうか。分かった。では起きたら伝えるとしよう。」
俺はセインの言葉に頷くと、席に座りなおす。
確かに今はインシオも疲れているだろうからゆっくりと休ませた方がいいな。
「よし!じゃあインシオが起きるまで酒でも飲むか!」
俺は不安を払拭するように、大きな声で宣言して酒を注文する。
「程々にしてくださいよ。私は先に部屋に戻っていますから。」
セインは呆れたような顔でそう言うと、席を立って二階へ続く階段を登っていった。
俺はその後ろ姿を見送ると、丁度運ばれてきた酒のジョッキを片手で掴み、一気に飲み干したのだった。




