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ハロワに着いた

 半魚人はパトカーの中で言葉を探していた。

すると、警官の一人が話しかけてきた。

「よくできているな。コスプレか」

「いいえ地肌です」半魚人は仕方なくテレパシーで応じた。

「おおっ。今頭の中で声がしたんだが」

「そういう小細工はいいから口でしゃべろ」と別の警官が命令する。

「くぱっ」

「それしか言えんのか」

「ぐわぱっぱ」

「どうやら本当にしゃべられない様であります」

「ということはこいつは本物の半魚人か。やっかいなことになった」

中央の通りをしばらく走り、パトカーは警察署に着いた。半魚人の腕には手錠がかけられ、所内に連行されることになった。


 署内は珍獣の乱入によりざわついた。別の部署から半魚人を見ようと人が集まってくるのも仕方がない。

半魚人は悲しそうにつぶやいた。

「ハローワークで仕事を探したかっただけなのに」

「なんだそんなことか」警察官は拍子抜けした。そしてうって変わって高圧的な態度が消えた。

「ハローワークなら本署の隣の隣にあるから、そこで話をして来い」

といったが手錠は外してもらえない。

「なんで手錠はだめなんですか」

「映画やテレビの半魚人みたいに急に暴れられたら困るからな」

「ハローワークへはわしがついていく」

と中年の落ち着き払った男性が同行することになった。


「ハロワに手錠で行くなんて情けないです」

半魚人は半べそを書きながらテレパシーで訴える。

「しかし治安上、貴方の姿を見て恐怖におののく市民も予想されるから我慢してくれ」

「こんなになるなら、湖から出なきゃよかった。ぐすん」と悲しい言葉が中年刑事の脳内に響いた。

「うおっ。やっぱりテレパシーを受けるのは気持ち悪いな」

しばらくすると、重苦しい色の建物が見えてきた。ハローワークだ。重苦しく感じるのは作者の主観である。許してほしい。


「さあ着いたぞ」

「やっとこれでビジネス街で働ける」

「職員の言うことをちゃんと聞くんだぞ」

半魚人はハロワの職員にテレパシーで話しかける。職員は驚嘆の叫び声を上げつつも、説明を始めた。

「年齢はおいくつですか」

「年齢は……。わかりません!」

「それじゃあ年齢制限なしで応募と。希望職種は」

「ビジネス街で働けるやつ」

「事務職希望ですか。裸ではちょっと……」

ここで半魚人は自分が全裸だということに気づいた。

「安心してください。スーツは探しますよ」

「でも、住処に戻ったらずぶ濡れですよね」

半魚人の計画の甘さが露呈した。

「ということは、全裸でもできる仕事を探すしかないと」

「そのようですね」

半魚人の描いていた青写真はもろく崩れ、後には絶望だけが残ってしまった。


「ま、人生いろいろあるから」

中年の刑事になぐさめられた半魚人は、住処の湖へと帰って行った。


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