神さま探しの歌
私は足を止めた。狛犬の前にヒマワリが並んでいる。左端のヒマワリだけしおれていた。まるで私みたい。周りのみんなは生き生きして幸せそうなのに、私はもう終わりそう。
こみあげてくるものを飲み込んだとき、どこからか子供の歌声が聞こえてきた。
「どーこだ どーこだ
神さまどーこにいるのかな?
神さま ぼくらの そばにいる
本当は みんな 気づいてる
どーこだ どーこだ 神さまどーこだ?
ここだっ!」
ランドセルを背負った女の子が歩いてくる。学校の帰り道なのだろう。
目が合った。彼女は凍りついた。申し訳なくなって、視線を枯れゆく花へ戻す。すると、彼女はランドセルを激しく左右に振りながら、一目散に去っていった。
「……神さま、か」
彼女の歌を思い出し、ひとつため息をこぼす。そんなのいるわけない。もし神さまがいるのなら、この花だって他と同じくらい元気いっぱいに咲いているはずだ。現実は残酷なんだ。神さまなんていない。
それから数日経った。ランドセルの彼女が、突然私の前に姿を見せた。
「神さま」
「え?」
「こっち」
彼女に手を引かれて、再び狛犬の元へやってきた。驚いた。この間枯れそうだったヒマワリが、今日は周りに負けないくらい力強く咲いている。
「神さま」
「……神さまが水をあげた、ってこと?」
「お姉さんが見つけてくれた。私が水をあげた。おじいちゃんが土に栄養混ぜた。だからこの花元気になった。ここに神さまいる」
私に衝撃が走る。彼女の言おうとしてることがわかった気がした。
私はお礼を伝えた。そしたら彼女はニッコリ笑って肯いた。
「神さまのおかげ」
神さま、ありがとう。
おしまい