表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/68

【第六十四話】 縫い針が折れたのは、ロゼのせいではなかった。





 そんな気まずい空気を打ち破ったのは、リアルタイプ蟻人間ことアレクの呑気な声だった。





「よぉ~~何して……って、ほんとに何してんだぁ?」





 振り向くと何故か玄関からではなく、窓辺から進入を試みているアレクと目が合った。『さすが蟻』と言う心の声が聞こえる様だが、私はとりあえずノコノコやって来た助け舟に飛び乗る事にした。





「アレク! ロゼが縫い針殺したーーーー!!!!」

「……は?」





 アレクは私と肩を落すロゼを交互に見て、困惑した様な声を上げた。





 (* ̄▽ ̄*)~゜(* ̄▽ ̄*)~゜(* ̄▽ ̄*)~゜




「――と、言う訳だ」

「あ~~そっか、そっか、なるほどねぇ~」





 事の経緯を一通り説明すると、アレクは分ったのか分っていないのか、適当な返事を返して来た。私がムッと眉を寄せるとアレクは慌てて両手を上げ、無抵抗である事を示す。従魔(?)としての自覚が芽生えてきた様子に、私は満足げに頷く。





「じゃ、丁度良かったかな? 今、デスビーの駆除をしてきた所なんだ」





 デスビーとな?

 死の蜂とは、何とも物騒な名前だ。何処がどう丁度良いのか全く分からない私は、首を傾けて未だに肩を落すロゼを見る。





「あぁ、デスビーの針は縫い針に加工されるんだ」

「何と!?」





 天然素材だったのか!?

 私は折れた縫い針の断面を確認してみる。しかし、どう見ても中まで金属性にしか見えない。





「それは金属性だろう? この辺じゃあ全部金属って言うのは高いし加工が難しいから、魔物の素材を加工した針の方が俺らには一般的だな。まぁ人の町では加工技術が上がったっからか、全部が金属で出来た物の方が主流だな」





 どうやらデスビーは森の奥にしか生息しておらず、森の付近の町や村では、デスビーの針の方が安価で手に入りやすい。しかし、森から遠く離れた町ではデスビーの針の方が高いと言う事の様だ。こういう物流と消費の関係は何処の世界でも同じらしい。こう言う日本との共通点が見つかると少し安心する。私がうんうん頷いて納得していると、アレクが肩に担いでいたズタ袋を加工台に下ろして中身を出し始めた。





「これがデスビーの針だ」

「おぉ!」





 アレクが手にしているのは先ほど(ロゼに)殺されてしまった金属性の縫い針よりも細くて少しトゲトゲした白い針だった。すると、アレクが私の持っていた裁縫箱を覗き込む。





「これがフィオの道具? って……何だこれ、すっげぇ古い! これじゃあ、針も折れるよなぁ~……良くこんなんで針仕事なんて出来たなぁ」





 やはりこの小屋に放置されていた裁縫道具は相当古めかしい物の様で、アレクがガラケーを見る様な目で私の持っていた裁縫用具を眺めていた。悪かったな! 私は未だにガラケーだよっ!(事実) ついでに言うとミシンより手縫い派だっ! 私はアレクに関係の無い怒りも込めて叫ぶ。





「コレしかないんだから、しょうがないでしょうが!!」

「いやそんな訳無いだろうよ」

「何!?」





 どういう事だ? 私の知らない所に他の裁縫道具があったと申すのか? いや、無い。絶対ない。森番小屋で私が入っていない部屋はロゼの部屋くらいだ。するとアレクは不思議そうにロゼに目を向ける。……どうでも良いが昆虫族の表情が読める様になった自分に驚きだわ。だからと言って積極的に昆虫族と仲良くは、したくないけど。特にあの黒い妖精の化身とは一生相容れないであろう。アレはもう細胞レベルの説明のつかない恐怖だ。と、少し的外れな事を考えているとアレクが口を開いた。





「ロゼお前、裁縫道具くらい持ってるだろ?」

「んだとっ!?」

「あぁ」





 私は勢い良くロゼを振り向く。やはりロゼの部屋に裁縫道具があったらしい。確かに私はロゼに『裁縫道具ってある?』又は『裁縫道具を貸して』と言った事は無い。そして先ほどは『折れた針に溝を掘って』と依頼はしたが、裁縫道具は要求していない。よってロゼが私が発見した裁縫道具よりも優れた質の物を持っていたとしても、ロゼを責める事は出来ないだろう。しかし、だ、私が今まで裁縫をしていた事はロゼも見て知っているはずだろう!? ならば『俺のを貸そうか?』と聞いてくれても良くないか!?


 ただ、ロゼの道具は仕事に使う物だろう事は理解している。素人に簡単に貸せない事情があるのかもしれない。……理解はしているが、モヤモヤする。この複雑な胸の内を言い表すなら『ちょっとイラッとした』と言う感じだろうか? 私は内心舌打ちしながらアレクの持つデスビーの針に目を向ける。





「アレク! その針何本か売って!!!」





 いくらぐらいする物なんだろう? 相場が全く分からないが、縫い針用と、フェルティングニードル用と、その予備を何本か確保しておかなくては!





「そりゃ構わないけど、加工しなくて良いのか?」

「する!」





 そう言うと私は『ちょっと待ってて!』と二人に言い置くと、自室に走りコットンラビットの毛が大量に詰まった大きな袋を1つ(同じ物がまだ3つもある……)を持って二人の元へ戻った。訝し気な二人の視線を受けながら、作業台に袋を置き、中身を取り出す。





「……何の毛?」

「コットンラビット」





 私はアレクの問いに素っ気なく答えながら、先ほどのデスビーの針で毛を刺してみる。すると針にふわふわの綿の様な毛が絡み付いては千切れ、絡み付いては千切れ、纏まる事も無く時間だけが無駄に消費されていった。その様子にイラついた私は手で毛を擦り合わせて纏めてから、デスビーの針で毛を刺してみた。何度も刺しているいるうちに抜く事も出来ないほどの塊になってしまった。





「……なぁ、フィオ、何がしたいんだ?;」

「イメージと違う」





 どうやらこのままではトゲトゲが邪魔らしい。私はムッとして毛の塊から針を救出した。するとロゼが私の手からキラービーの針を奪う。





「溝を掘るんだろう? まずはこの突起を削って滑らかにしないと……」

「そ、そうか!」





 つい嬉しくなって試してみたが、フェルティングニードル用の針は突起ではなく溝だ。突起があったら引っかかって毛を固める所の騒ぎではない。……と、たった今、試してみて気が付いた。私は気まずさに目を泳がせたのだが、二人がサラッと『いつもの事』という様子で受け流されて、作業を開始した。私は二人に手伝ってもらいながら、デスビーの針を幾つか加工していった。







゜・:*:・。♪☆ヾ(・_・)★A Happy New Year★( ̄ー ̄)ノ☆♪。・:*:・゜


明けましておめでとうございます。

なかなか更新できない事が増えてまいりましたが

見捨てる事無く応援していただいている方々に魔界よりも深く、深く御礼申し上げます。

どうぞ、本年もよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ