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【第六十三話】 筋肉も付けすぎは良くない気がした。






 突然だが、この世界の裁縫道具について説明しよう。

 まずハサミ。これは全長が二十cmほどもある大きな物で、全体が金属性だ。持ち手の部分に別の素材を用いて使いやすくする、などという気遣いは皆無である。でかい、重い、硬い、切れないの四重苦である。当然糸きりバサミなんて物は無い。そして、糸。これは繊維をそのまま指で捩っただけなんじゃないか? と思わせる極太である。現代日本で市販されている『極太』の三倍ほどはある。そして、針。極太の糸を通すのだから当然の様にでかく、太い。細めの釘くらいある金属の棒に刺繍用の針の様に穴が縦長に開いている。メジャーやチャコペンなどという便利な物も当然の様に無く、生地を真っ直ぐ切るだけで一苦労だ。そして、これまた当然の様に耐久性も無い。





「ガァッデェェェムッ!!!」





 つまり、何が言いたいのかと言うと、縫い針が折れたと言う事だ。





 (* ̄▽ ̄*)~゜(* ̄▽ ̄*)~゜(* ̄▽ ̄*)~゜





 話は数分前に遡る。

 私は何時もの様に井戸で水を汲み、ハーブや柑橘を漬け込んでフローラルウォーターを作り、朝食の準備を終えて、うさぎ親子をもふり倒そうとした時、ふと以前作ったうさぎの被り物の存在を唐突に思い出した。その時、私の頭には妙案が浮かんだ。すっかり使わなくなっていたうさぎの被り物を解体し、子うさぎ達に新たな被り物を作ろう! と突然降って来たひらめきと謎の熱意に後押しされるがまま、私は自室に駆け込みうさぎの被り物と裁縫道具一式を持って、うさぎ親子達の見えるソファで作業をしていた。





「――と、言う訳だ」

「…………」





 私はロゼに良く冷えたフローラルウォーターを渡しながら、事の経緯(ロゼいわく妙な叫び声)を説明していた。ちなみに本日の筋肉は既に拝み済みだ。





「古い物だろうから、脆いんだろう」

「むぅ……」





 フローラルウォーターを飲み干したロゼは開口一番そう言って、部屋へ戻っていった。私は少しだけ気落ちしながらも、大きく膨張した母うさぎに抱きつく。せっかく可愛い可愛い可愛い可愛いうさこ達に、可愛い被り物を作ろうとしたのに……。私はもやもやする物を昇華させるべくコットンラビット(特大)の背の上でゴロゴロした。





「嗚呼……こうしていると小さな悩みなどどうでも――ヘックシッ!」

「にゆ?」





 コットンラビット(特大)の豊か過ぎる純白の毛が、私の鼻に入ってクシャッミが出た。と、言うか、非常に今更ではあるが、抱きつく度に顔や服に大量の抜け毛が付着する。コットンラビットが出産して、ボディーが膨張してからと言うもの、その量は日増しに増え続け、時に空中をふわふわ、ふわふわ、ケ○ラン○サランの如く舞っている。……いくら好きとは言え、顔中に毛が付着するのはハッキリ言って鬱陶しいし、気分の良いものではない。この世界にはコロコロと言う便利アイテムは無いので、毎回手を水で濡らして取るのだが、かなり手間が掛かる。少しでも毛を舞い上がらせない様にと、レオポン用のブラシでコットンラビット(特大)の毛をブラシしているが、ふわふわの雪の様な綿毛が溜まる一方で、中々改善しない。





「Σはっ!? 閃いたぁぁっ!!!」





 何かに使えるかとずっと貯め続けたコットンラビット(特大)の毛。その毛を使ってフェルト人形を作ろうっ!





「…………何を閃いたんだ?」





 着替えを終えて戻ってきたロゼが、恐る恐ると言った様子で尋ねて来た。私はそんなロゼの様子をまるっと無視して、コットンラビット(特大)の背から飛び降り、折れた縫い針をロゼに見せる。





「ロゼ氏! この針の表面に小さな溝を作れない?」

「溝? 出来ない事は無いだろうが……何に使うんだ?」





 私はその道具を使って動物の毛を挿し固め、人形や雑貨などを作ると説明する。ロゼは私の説明を聞いてもいまいち分っていない感じだったが、一応頷いた。





「とりあえず、朝食を食べてからにしよう」

「分った!」





 ※ ※ ※





 ――朝食後。





「それで、溝って言うのはどの程度の?」

「指で触ってトゲトゲしない程度の細かさで!」

「……難しいな」





 そう言うとロゼは折れた針にノミを当て、大きなハンマーを振り上げる。





 ――キン、キン、パキンッ! キン、キン……。





「……………………」

「……………………」





 死んだ。

 咄嗟にそんな言葉が頭に浮かんだ。作業台の上にあった筈の折れた縫い針はロゼの馬鹿力によって更に短くなり、小気味良い音と共に床に破片が転がった。今度こそ間違い無く完全にお亡くなりになった元縫い針を前に、私とロゼは共に言葉を失った。





「……すまない」

「……いや、まぁ、うん」





 ちょっと気まずい雰囲気になって思う、何故こういう時に限ってダルマとアレクが居ないんだ!? 妙~~~に気まずいんだけど何で? ねぇ何で? ……仕方がない、ここは私が親切にもフォローしてやるか。





「いや、仕方がないよ。元々折れてたんだし、それよりこっちの針もお願い出来る?」





 そう言って裁縫用具からもう一本、無事な方の縫い針を取り出す。実はこの裁縫用具からは三本の針が発見されているので、まだ一機(一本)残っている。ロゼはそんな様子の私を見て少し戸惑う様に苦笑すると針を受け取って作業台に置いた。





「後一本残ってるから折っても良いよぉ~」

「……茶化すな」





 ロゼはそう文句を言いつつも、とても真剣な様子でハンマーを控えめに振り上げる。





 ――コン、コン、キンッ、パキン……。





「……………………」

「……………………」





 デジャブ……。

 嫌な音を立てたハンマーの下からは、折れて真っ二つになった元縫い針が鎮座していた。今回は威力を抑えたからか作業台からフライアウェイしなかった。これはもうキレて良いのかな? 何にキレたら良い? 耐久性の無さ過ぎる縫い針か? 毎朝拝んでいるロゼの筋肉か? それとも二本目をお願いした私自身へか? 両者言葉を失った気まずい空間で子うさぎ達がのんびりと欠伸をした。






お久しぶりですこんばんは(*^ー゜)v

最近何かと趣味に没頭していた変人です。


いや、お待たせ?してしまって申し訳ないです;

「待ってなかったよー」って言う方!自意識過剰ですみません!!!m(_ _;)m

これからも少しずつ書いていこうかと思うので・・・き、気長にお待ちいただければ、と思います;

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