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【第五十七話】 無自覚の人垂らし。




 私は巨大赤芋虫の唾液に塗れた、コットンラビットを井戸の前まで連れてきた。ちなみに芋虫ズは結界の外側からついて来て私の事を見ている。この巨大赤芋虫の唾液、やたらとネバネバベタベタしていて、ちょっと洗った程度では取れそうに無い。この辺りはこれから夏が来るらしいが、井戸水は冷たいので鍋で湯を沸かして大きな桶に注ぎいれた。





「Σちょぉっと待った!!!」

「……何だね? 安心したまえ熱湯にウサギを沈める趣味は無いよ」

「いや、そうじゃなくて!」





 リアルタイプ蟻人間が言うには巨大赤芋虫は大変凶暴で凶悪な魔物なのだが、それ故にその唾液から作られる接着剤は大変高価で貴重であるので「洗い流すなんて勿体無い事をするな」という事である。私は静かに井戸水で熱湯を薄めながらロゼを見る。ロゼは念派を飛ばさなくても私の言いたい事を理解したらしい、静かに頷いていた。どうやら嘘は無いらしい。





「――だから毛を絞、って、おぉぉおいっ!?」





 私はリアルタイプ蟻人間をまるっと無視してコットンラビットを適温の湯の中へ入れて、石鹸を付けてワシャワシャ洗う。





「あぁ~~勿体ねぇ~~……」

「にゅ~~~~……」

「黙るのだ! こんな状態のウサギをそのままにしては置けないじゃあないか!」





 風邪引くわっ!

 いや、引かないにしても、こんなベタベタしてて気持ちの良いもんじゃない。私は自らの胸元に付着した巨大赤芋虫の唾液に目線を落として溜息を吐き出す。R18指定のゲームじゃあるまいし……。気持ち良さそうに洗われていたコットンラビットを湯から出して、タオルで拭き上げるとふぉわふぉわになった。よっしっ! 完璧! 後は……。





「……これだけでも良いからくれない?」

「「「!!!!」」」





 リアルタイプ蟻人間は私の胸元に付着した巨大赤芋虫の唾液(と言うか胸)を絞るように(と言うか揉んでる)採取して小瓶に入れた。私もロゼも筋肉ダルマも驚き過ぎて石化の呪いでも掛かったかのように動けなかった。





「フィオって思ってたより胸でっかいな!」

「Σなっなっ……なん……!?」





 殺す。

 殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すす殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すす殺す殺す殺す。ユルスマジ、アリニンゲン、ノロワレロ、ノロワレルガイイ。人は怒りが頂点まで達すると逆に冷静になるらしい。私の無言の(呪殺できそうなほどの)殺意に恐れを抱いたのか、リアルタイプ蟻人間が数歩後ずさる。私が手を振り上げるよりも早く、ロゼがリアルタイプ蟻人間の頭部を殴りつけ、ダルマが腹部を蹴り、蹲った所で縄を用いて素早く拘束する。





「すまないフィオ。 今回ばかりは俺も止めない。 気が済むまで制裁を加えろ」

「Σちょっ!? 待って! そこは助ける所じゃないの!?」

「お前(犯罪者)を助ける義理は無い」

「俺の嫁になんて事をっっ!!! 騎士団に突き出してくれるっ!!!!!!」





 私は怒り心頭の筋肉ダルマに静かに待てを命じ、(その従順さにロゼが引いていた)リアルタイプ蟻人間を半眼で睨みつける。私の心の中は既に邪悪な感情のみに支配されていた。ロゼも止めないし好きにさせてもらうぞっ! ふはっはははははww 楽っし~いなぁ~♪ どぉ~料理してくれようか?(邪笑) あぁ良いことを思いついた♪





「ねぇ蟻さん、そんなに巨大赤芋虫の唾液が欲しいなら直接本人(?)に頼まないとダメだよね?(邪笑)」

「え?」





 私はニヤリと自愛(?)の笑みを浮かべて蟻(降格した)を横に蹴倒して結界の外に居る巨大赤芋虫ズの所まで蹴り上げながらコロコロ転がす。





「ハ、ハハ……冗談きついぜ。 Σってちょっ!? じょ、冗談だ、よね? や、やめてくれぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

「やっだなぁ~~『お願い』をするだけじゃない? あぁでも聞き訳が悪いとうっかり「食べちゃえ!」って言っちゃうかも知れないなぁ~~」





 ゴロリ。

 結界の外へ転がり出た蟻を巨大赤芋虫が見下ろす。





「ほ~ら芋虫さんに『唾液を分けてください』ってお願いしてみたら? 私の胸を揉んでまで欲しがったんでしょ?」

「そ、それは……その、悪、かった。 も、もうしません、だから許してっ!!」





 蟻は縛られた手足を必死に動かして抵抗しながら何やら喚いている。私は振り返り、筋肉ダルマに先ほど湯を沸かして来た鍋を持って来てもらう。





「芋虫さん、この鍋に唾液を少し分けてくれない?」

「ムウ! ムウウ!!!」





 巨大赤芋虫は体をくねらせて鍋の中へ透明な唾液をたっぷりと注ぎ入れた。私にはコレがどの程度の価値なのかは分からないが、取りあえず芋虫をすり潰さなくて良かったと心の底から安堵した。流石に懐いちゃった芋虫を殺る(すり潰す)のは気が引ける。私は唾液の入った鍋を筋肉ダルマに手渡し、蟻の様子を伺う。どうやら私の意識が当事者から逸れていた間に巨大赤芋虫が蟻に興味を持ったようだ。縛られて転がっている哀れな蟻を触角の先でツンツンしている。





「嗚呼ああっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!! 食われっ食われるっ! 助けてくれぇぇぇぇ!!! ヴァルドォォォォロゼェェェェェェ!!!!!!」





 ロゼとダルマは一応付いて来ているが我関せずと言う様子で、蟻に目線を合わせようともしない。どうやら殺さなければ本気で私の好きにして良いらしい。巨大赤芋虫は私の顔を伺い、「食べて良い?」と聞いているように顔を傾けた。先ほどより大分怒りも収まってきたとは言えまだ許す事は出来ない。しかし、さすがに食わせるのはダメだろう。蟻は昆虫族なのでその死ねば何かと厄介だろうし、そもそも私がそんなグロテスクな解体ショーを見たくない。まぁ私の中で彼の処遇は既に決まっているが。





「ほら? お願いして御覧なさいよ? 大丈夫。 さっきのコットンラビットみたいに体が噛み砕かれる前に救出してあげるから! あ、でも、触覚ぐらいは良いよね? 命に別状は無さそうだしwww」

「ヒィィィィ!?」





 さあ! さあさあさあさあ!!!

 と私が蟻の背を蹴り、巨大赤芋虫の口元へ押しやる。足蹴にした蟻がガクブル震えているのが靴越しからも伝わってくる。巨大赤芋虫が口を大きく開いて蟻に顔を近づけた。




「そもそもさぁ~「悪かった」って本当に謝っているのかな? 私の気のせいなのかも知れないけど、少~~し上から目線じゃないかな? あ、それとも私相手に本気で謝る必要は無いと? そう言いたい訳だ?」

「ヒィィィィッ! 申し訳ありません!! な、何でもします! だから助けてくださいお願いします!!!!」

「ふはははははは! その言葉を待っていたぞっ! 良かろう! 今日から貴様も私の従魔として励むが良い!」





 私は巨大赤芋虫に待てを命じる。すると巨大赤芋虫は口を閉じて私を見上げ顔を傾ける。「どうしたの?」と言っているような仕草に堪らず触覚の付け根を揉み込む。


「よしよし、後でローストウサギを持って来てあげるから、コレは我慢してね?」

「ムウウウ~~」

「ムゥゥゥゥ!」





 ふむ、言葉は相変わらず分からないが、何となく伝わっているようだ。そして着々と私の従魔が増えてきている! そんな私の現在のステータス(予想)はこうなりましたっ!! 





【ステータス】

名前:フィオ

種族:草木族

分類:フィオーレアンジュ

状態:憤怒(小)

スキル:多機能翻訳(ただし魔物は除く)、念話、テイム、助けを呼ぶ(成功率50%)、料理、洗濯、掃除、裁縫、園芸、歌

従魔:ヴァルド(筋肉ダルマ)、アレクサンダー(リアルタイプ蟻人間)





 思った以上の低スペックさに視界が霞んだ。

 そもそも私にステータス観覧と言う便利なチートスキルは無い。そして私のチート能力らしき翻訳機能は魔物には通用しない事が分かった。ん? 待てよ? そう言えばプギーたちの言葉は何で分かったんだ……? 元獣族だからか? でも奴等の言語はプギー語って言う頭の悪そうな独特の言語を使ってなかったか? 何とも不確かかつ曖昧な能力である。しかし、この能力が無ければ不自由したであろう事は容易に想像出来るのでとりあえず文句は無い。私は涙を流して謝罪を繰り返す新しい従魔の蟻さんに、ある重要任務を任せようと決意しながら、縄が解かれるのを黙って見下ろしていた。






はじめまして、こんばんは変人のヴァインです。


もうすぐ今年も終わりますねぇ~・・・

私の予定ではもう1章を終えて、他の作品を投稿しているはずだったのですが・・・

なかなかうまくいかないようです。来年こそは新しい物語を投稿していきたいと思います。

では、よいお年を!!

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